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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園4年生編
173/222

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「セレス、セレスー!ねえ見て見て!」


 ん?とある休日、皇宮に遊びに行くと…満面の笑みの少那がわたしを呼ぶ。

 剣術大会以来、少々ギクシャクした時期もあったが…すっかり元通り。そんな彼は薪名と手を繋ぎ、ブンブン振って……はっ!!?


「あれっ!?薪名に触っても大丈夫なの!?」


「うん!!君のお陰だよ、ありがとうー!!」


 どういたしましてー!!!子供のように両手を振り回す少那を、薪名が優しい目で見つめる。わたしも頑張った甲斐がありました!!いやー、偽乳詰めて少那にぎゅうぎゅう押し付けた時は、なんとも哀しい顔されたなあ…ホロリ。



 わたしは女装時は、完全に女の子として振る舞っていた。近いうちに公爵令嬢として世間に出る練習にもなったし!

 彼も当初は恥ずかしそうにしていたが、段々と慣れていった。今では軽いハグとか、腕を組んでも赤面しないようになったのだ。



「ありがとう、セレス。まだ完全には治っていないけど…実はね、シャルロットさんやルネさんとも握手出来るようになったんだ」


「おお、すごい!」


 今日も手を繋ぎ、ソファーで横に並んで座る。すると向かいに座るパスカルが、超笑顔で言った。


「それでは、もうセレスタンが練習相手になる必要はありませんね?」


 と。彼は練習とはいえ、わたしと他の男性が腕を組んでいる姿を見たくない、と言っていたので。少那も「うん、今まで本当にありがとう!」と笑顔だ。



「ただ…最後に。私とダンスを踊ってくれない?」


「ダンス?まあ…いいけど。それならさ、皆呼んでプチパーティーしよう!」


 どうせ卒業パーティーでも踊ると思うんだけどなあ。まあ折角なので、公爵邸でダンスパーティーを決行する!!

 全員めいっぱいおめかしして、身分とか関係なく楽しむのだ。咫岐と薪名も参加ね、と言えば戸惑いながらも了承してくれた。

 

 こっちもバジル、フェイテ、テオファ、モニク…グラスは…どうかしら?

 にしても、男性の数が多すぎる。タオフィ先生とかも勝手に参加しそうだし…


「テオファも女装させるか…?」


「………本人の許可を得なさい」


 名案だと思ったが、ルシアンにやんわり怒られた。だってさー。


「僕、ロッティ、ルネちゃん、木華、薪名。モニクと…ネイもいいかな?2人は踊れないけど…。あとフルーラちゃん…くらいしか女子がいない!クラリッサ様はどうかなあ?ウチの女性騎士も参加してもらおうか…でもそうすると、男性陣からブーイングが…」



 その時ふと、ビビ様が頭に浮かぶ。申し訳無いけど、絶対呼びたくねえ…。

 ルゥ姉様…はダメ。メロ姉様とレティ姉様…とパスカルに提案したらダメと言われた、残念。とりあえず後日、皆に招待状を送ろうっと。



 この日はカードゲームなんかをして遊ぶ。ルシアンとパスカルが最下位争いをしている時…少那にこそっと聞いてみた。


「ねー…もしも僕が本当に女の子だったら…どうする?」


「え……?」


 唐突すぎたかな?とも思ったけど…彼は次第に頬を染めた。わたしの手首を取り、手のひらに…キスをした。そして流し目を送ってくる…。



「……君が女性だったら…パスカル殿に宣戦布告をして。求婚していたと思う…勝ち目は無いけどね」


「あ……そ…」


 どこまで本気か分からないけど…つられて照れてしまうのであった。






「ねえフェイテ」


「なんですか?」


 帰り道、パスカルを学園に送り届けた後…フェイテと内緒話をする。


「少那が言っていたパーティーでさ…。

 パスカルと少那と…ついでにジスランに。僕…いや、わたしが女だって言っちゃおうかと思うんだけど…」


 もう、少那も大丈夫そうだし。するとフェイテは目を丸くした後…「いいと思いますよ」と笑った。よし…ちょっと怖いけど。パーティーには胸元の開いたドレスで、コルセットぎゅうぎゅうにして。女性アピールするぞ!


 お父様とバティストに相談してみたら…「シャーリィがそう判断したのなら、大丈夫なんだろう」と信頼してくれた。だが…


「パスカルには気をつけろ。嫌だと思ったら急所を蹴り上げろ!!」


 そう言われてしまった。イエス、全力でね!




 ※※※




「では皆さん、今日は実技の授業です。あの動く的を狙ってくださいね」


「お任せください、まず私が!!!」


「あ、道具は禁止ですよ〜。シャルロットさんはそのバズーカを速やかに置いてくださいね」


 ロッティは「チッ…」と舌打ちをしながらバズーカをその場に置く。

 タオフィ先生が指差す先には、凧のような的が地面より10m程上にふよふよ浮いている。今日はなんでも良いので、魔術でそれを撃ち落とせばいい。



「今まで座学で学んできた事を思い出してくださいね。燃やしてもいいし水の塊をぶつけてもよし。風で切り裂いても構いません」


 ふむふむ。道具は禁止なら…わたしも本は使えないな。

 的の動きは結構速いので、きっちり狙いを定めないとかすりもしなそう。どうすっか…と考えていたら…



 ゴオオッ!!


「おー、エリゼ君は流石ですねえ。合格でーす」


「ふん、当然だ!オレはこのくらいの術、すでに9歳の時にはマス「では皆さんも張り切っていきましょう!!」聞けよ!!!」


 早くもエリゼが的を燃やしてクリア!ぐぬぬ…負けん!!

 

 

「うーん…いい術無いなー」


「これとかどうかしら?」


「難易度高そうですよ…」


 ロッティとバジルと、3人で魔導書片手に唸る。なんとか合格しないと…精霊や本が無ければなんにも出来ない奴だと思われたくない!

 しかしどうするか。とりあえず…クラスメイト達の観察だ! 



 だが皆苦戦していて、授業開始から30分経つがエリゼ以外合格者ナシ。するとここで…パスカルが所定の位置に立った。

 彼は腰を落として、右手を握って的に突き出し。魔術を発動させると…腕の上に光が集まって…クロスボウの形になった。そこから光の矢がバシュウッ!!と発射され、見事命中!!



「ふう…」


「「「きゃあ〜〜〜っ!!」」」


 女子から黄色い悲鳴が上がる。負けるか!!!


「パスカル、格好いいーーー!!」


「そ、そうか?ありがとう、セレスタン」


 へい、わたしのハートも射抜かれちったぜ!2人の世界を作り上げていたら、周囲から生温かい視線を向けられる。もう気にしないもんね!



「素敵ね、パスカル様。ふふ、私も思わず見惚れてしまったわ」


「ありがとうございます」


 来たなビビ様!彼女は優雅に座っているだけで魔導書も広げていない。今回は難易度高いから不合格でも落第とかしないけど…授業態度悪すぎやで。

 彼女は妖艶に微笑みながら、パスカルの腕を取ろうとする!すかさず彼の腕を引っ張り、わたしは間に立った。


「ビビ様は調子はいかがですか?僕は全然で、よろしければ一緒にやりません?」


「うーん…私はあまり魔術は得意では無いの。だから見学に徹するわ」


「(それは貴女が決めていい事じゃないんだけど…)そうですか、残念です。では僕達はこれで、パスカルも交えて作戦会議をしますので」


 彼女の答えを聞く間もなく、ささっとパスカルの背中を押してロッティ達の元に向かう。脱出成功!しかし下僕達も一緒になって授業サボっちゃって…成績大丈夫なのかなあ?


「(嫉妬するシャーリィ…可愛いぃ…)」


 なんかパスカルに頭を撫で回されるが…やめんか!!

 彼に狙撃のコツを聞いてみるも、感覚で動きを読んでいるから説明しづらいとの事。エリゼも参考にならんし…ああ、時間が無い!




「ねえねえ、パスカルって狙撃上手いんだねー。こんなの要る?」


「おお…しっくり」



 ヨミとパスカルの会話に気が散る…!魔導書からチラッと顔を上げれば、パスカルが弓を手にしている…って本体だけ?


「うんそう。はい説明書、ちゃんと読んでね」


 ヨミはイイ顔で親指を立てた。どれ、見せてみ?




『リーデッカルスの弓


 狩猟の神リーデッカルスの弓。魔力を矢として発射する。クロスボウに変形可能。

 クロスボウ形態では、大弓に威力は劣るが装填時間と速度では勝る』


「「へー…」」


 ん?わたしの背後から声が……先生!?いつの間に覗き込んでんの!!

 パスカルとヨミ、タオフィ先生は弓をいじくっている。先生仕事しろ!!


 最後まで粘ったが授業終了…数人がクリアしただけで…わたしは不合格ぅ…!ジスランなんて最終的に剣ぶん投げてた。外してた。


 

「うおっ、矢が実体化した!」


「王、王!もう少し的を速く動かしてみますか」


「お願いします!」



 なんか2人で弓の性能を試しまくっているので…放っておいて先に教室に戻ったわ。

 ところでヨミ、ルネちゃんとジスランには何か無いの?廊下を歩きながら訊ねてみる。


「あるよ。でもルネのは戦闘向きじゃないんだ、女の子だから」


「どうして私にはバズーカ渡したのかしら…?」


「だから他のに比べて目立たないけど…放課後渡すね。ジスランは剣だよ、他に思い付かなかったし」


「私もか弱い令嬢なのに…」


「ぶっはははは!お前、カヨワイって辞書で調べてみ…セーーーフっ!!!」


 おお!エリゼは見事、盾でバズーカを防いでみせた!代わりに廊下は悲惨な事になったが…そういうとこだぞ、ロッティ。






 放課後、生徒会も終わり…教室で友人達と待ち合わせ。そこにはタオフィ先生とラディ兄様もいて……


「遅かったわね、2人共。闇の精霊様から何かいただけると聞いたのだけれど」


 うーん最早驚かんぞ。なんでビビ様がここに!?なんてな。


「いや、ヴィルヘルミーナにあげるものは何も無いけど。はい、ルネ」


「まあ…ありがとうございます。こちらは…ハープ?」


 真顔のビビ様を無視して、ヨミが手渡したのは小型のハープ。アイリッシュハープってやつ?戦闘向きじゃないけど、ただのハープでもないのか?



『クルアリアスのハープ


 芸術の女神クルアリアスのハープ。奏でる音により、周囲を操る』



 ………なんかよく分かんない。でもヨミもそれ以上、説明しようが無いんですって。


「うーーー……ん。例えば…アップテンポな曲を奏でると、聴いた人間の気分が上がる。逆に興奮している人間に穏やかな曲を聴かせると落ち着く。

 アンデッド系の魔物相手にレクイエムを奏でると浄化出来る。とか?」


「それ…結構凄くない?」


 わたしの発言に全員が頷いた。アンデッドって…超厄介な魔物じゃん。頭部を潰しても暫く動き回る奴らだぞ!!ルネちゃんすっごーい!!


「ちなみに老人とか、死が近い人間にレクイエムを聴かせると穏やかに逝くよ。元々…大怪我や不治の病で苦しむ人間を、苦痛無く送る為のものでもあったから」


 そ…か…。おじいちゃんや学長には聴かせないようにしよう…。




 譜面とか無くても、ルネちゃんが曲調を思い浮かべながら指を動かせば勝手に奏でてくれるんだって!

 試しにワルツを奏でると…なんか、踊りたくなっちゃう?あくまでもそういう気分になるだけで、強制力は感じない。なので…机をどかしてパスカルと手を取り合って。ハープの音色に合わせて踊り出す。

 わたし達だけじゃない。ロッティとジスラン…木華と少那。ノエルとメイも踊っているし、ビビ様も親衛隊と踊っているぞ。相手のいない皆は楽しそうに眺めている。タオフィ先生がエアをダンスに誘い、ノー!と断られ…兄様が笑っている。



「…ふふ、なんか変な感じ」


「ああ…でも楽しいな」


 自然と笑みが溢れ、くるくる踊る。

 だがわたしは頭の中で……ロッ◯ーのテーマを流したら、殴り合いが始まったりして…?と物騒な事を考えていた。特にロッティはノリノリで指を鳴らしそう…わたしはゴング係ね。

 そのハープ、わたしに渡さなくてよかったね!




 演奏が終わると拍手が挙がる。ルネちゃんは照れくさそうに微笑んだ。するとビビ様が…


「素敵ね、そのハープ。私にくださらない?」


 と前に出る。おいおいおい、今ちょっといい雰囲気だったのにぶち壊しちゃうの!?それでもルネちゃんは冷静に対処する。


「……申し訳ございません。こちらは私が闇の精霊様より賜った物ですの、お譲りする事は出来ませんわ」


「まあ…困ったわ、私もそれが欲しいのに」


 はい出た「困ったわ」!!だが親衛隊も困っている。何故なら、相手は同じ生徒ではなくヨミだから。最上級精霊に楯突く度胸は無いらしい。

 しかしビビ様はお構いなし、今度はヨミの腕をするりと取った!?上目遣いになり猫撫で声でおねだりを始めるも…


「ねえ精霊様。わたくしにもくださらない?有効活用してみせますわ」


「……きもっ」


「え……きゃあっ!」


「「「お、王女様ーーー!!!」」」


 あ…ビビ様が影でぐるぐる巻にされ、教室の外に放り投げられたあ!?親衛隊はそれを追い掛け、メイがピシャアンッ!とドアを閉める。

 外から「何をなさいますの!私を誰だとお思いで!?」という声とドアを叩く音が響いていたが…いずれ無くなった。


 教室内が微妙な空気になってしまったが…切り替えよう!!




「はいジスラン」


「ありがとうございます!」


 ヨミが取り出したのは、柄頭に宝石の埋め込まれた…美しい剣。その鞘はとても頑丈らしく、エリゼの盾程ではないがあらゆる攻撃を防ぐとか。




『ヴィストーラの聖剣


 英雄ヴィストーラの聖剣。一振りで山を両断する』



「強すぎんだろうがっっっ!!!」


 思わず説明書を叩き付けてしまった。君はジスランをどうしたいの!?


「あ、説明足りなかったね。もちろん加減して振れば普通の剣だよ。ただまあ…持ち主の精神が反映されると言うか。うーん…護るものが多い程、その剣は輝き力を発揮する」


「護る、もの…」


 ジスランは剣を見下ろし…顔を険しくさせてぎゅっと握り締める。顔を上げたと思ったら、わたしとロッティをじっと見て…な、何?


 すぐに視線を逸らし、ヨミに対して深く頭を下げもう一度お礼を言った。



「…ありがとうございました!少々この剣を振ってきます」


「うん。ちゃんとセレスとシャルロットを守ってね」


「はいっ!!」



 ジスランは確かな足取りで教室を出て行った。その背中を見て…



「……オレも付き合って来るわ。この盾、もっと使いこなしたいし」


「俺も行こう。弓と剣の使い分けが上手く出来るようになれば…」


 エリゼとパスカルも出て行った。…男の子よのお…。

 でも本当、ここ数ヶ月魔物の出現が増えているのだ。だから防衛手段が増えるのはいい事だとタオフィ先生は言う。





 解散ムードになったので、それぞれ帰路に着く。わたしはロッティ達には先に帰るよう言い…タオフィ先生に教室に残ってもらい質問した。



「ねえ先生、そもそも…魔物ってどうして生まれるの?」


「うー…ん。難しいですねえ。まだ研究でも全て明らかになっていませんから」


 そうなんだ?先生は難しそうな表情をして、簡単に説明してくれる。



「そもそも…精霊と魔物は本質は同じという見解もあります。どちらも自然から発生するもので…陰と陽、対極のものだと。

 人間の味方が精霊で敵が魔物…と言う研究者もいます。魔物は人間や家畜を本能で襲いますから。腹が減っているから、ではありません。とある国で魔物を捕らえ調べてみたら…何も喰わずとも1年以上生存したのです。

 これにより精霊と同じく、飲食排泄等必要としない事が判明しました。


 ただ、精霊は人間の魔力を通じないと実体化出来ませんよね。最上級精霊も、今は人間が開発した魔法陣を自分で展開して簡単に顕現していますが…」



 そこで先生はチラッとヨミを見た。


「あー…そうみたいだね。先代の知識だけど…大昔は、一部の魔法使いしか精霊を喚べなかった。

 最上級も単独顕現する場合、色々制約があったみたい。ぼくで言えば…例えばタオフィを依代に、身体を乗っ取るしか無かった。上級以下には無理だけど。

 だから魔法陣が開発されて、制約無しにこっちに来れるようになったんだよね。フェニックスなんかは「やるじゃないか人間」とか言ってたみたい」


 ほうほう。それで魔物は、()()を介して実体化する能力を得たのだと言う。

 それは…自然から発生する瘴気等、世界の膿ではないかと。もっと抽象的に、人間の負の感情が集まったモノという研究者もいたとか。



 先生は水晶を取り出し、拳サイズの火の玉を2つ浮かべた。



「この2つはマナの塊とします。

 1つは清廉なまま、長い時間をかけて…精霊へと変化します。

 もう1つは変化の途中で何かの切っ掛けで徐々にズレていき…最終的に全く違う性質に到達しました」


 1つは赤いまま燃え続け、もう1つは青く変化した。



「この赤い炎に人間が魔力を分け与えると…あら不思議、世界に顕現するのです。

 しかし青い炎は最早精霊では無いので、人間の呼び掛けなど届きません。それよりも、変化が完成すると…何かを依代に実体化するというのが現時点での考察です」


「その…何か、とは…?」


 先生は炎を消して…あくまでも仮説ですがと前置きしてから口を開く。



「今から十数年前…動物の死骸が動き出し、魔物に変化したという目撃例が挙がりました。魔物は大体動物型ですし…その説が濃厚です。

 植物型に関しては研究中です。以前のカバルカズラ、結構重要なサンプルなんですよー!姫とスクナ殿下の魔力を吸って成長した事から、全ての植物型は種の状態でこの世に現れているのかも。

 で…アンデッドは皆人型ですよね?なので…人間の死体では…と、言われております…」


「………………おぉう………」



 それにより、現在は世界的に火葬が推奨されているとか。ただまあ、魔物は大体自然の中で生まれる。だから…アンデッドは、山で行き倒れた人なんじゃないかと。



「それで最近問題なのが魔物の活性化ですよね。ご存知結界があらゆる場所に設置されておりますが…アレは行き来を防ぐモノ。

 つまり…もしも町中で死んだ犬なんかが魔物に変化した場合。町は大パニックに陥ります」


「……可能性があるの?」


「ごく稀に」


「怖…っ!それで、活性化の原因は?」


「………魔物は数百年に一度…大暴走(スタンピード)と呼ばれる現象を引き起こします。これは天災のようなもので、防ぎようがありません。

 地道に全ての魔物を討伐するしか無いんです。前回の大暴走はもう750年前。活性化は…次の予兆である可能性が高いのです」



 ……あれか、富士山の噴火みたいな?

 大暴走が起こると、結界なんぞ役に立たん。数の暴力で簡単に破られ、沈静化の為人間は古来より最上級精霊の力をお借りしていたらしい。



「ふむ。私も何度か手を貸したな」


「わいも、わいも」


「ぼくは何もしてないけどねー」


 ヘルクリス、トッピー、ヨミが言う。まあヨミは普通に召喚出来ないしね…。

 彼らは普段だったら呼び掛けに応じないけど、まあ緊急時くらい手伝ってくれるらしい。それで大体終わったら帰るって。



「結構国の上層部は大慌てなんですよ?いつでも大規模な避難が出来るよう、常に警戒していますし。

 今回の発生はこのカンタル大陸全土に及ぶでしょうから…恐らく王と姫は、大陸全土から要請が来るかもしれません」


「そうなの!?」


「なのです。ヘルクリス様、地の精霊様、闇の精霊様。どうかその時が来たら…どうかお力添えを賜りたく存じます」



「「「………………」」」



 タオフィ先生は膝を突き頭を下げる。あわわ…何気ない質問が、こんな大きな話題に…!!

 わたしが1人右往左往していると、ヘルクリスが翼でタオフィ先生の頭を叩いた。


「ふん、私達は契約者の願いを叶えるまでよ」


「そう、そう」


「今回はぼくも張り切っちゃおうかなー。初陣だもん、他の皆も呼ぼっか」


「皆…ありがとう…!!」



 それにわたし達には、古代の神々・英雄達のアイテムもある!!

 大暴走が起こるのは早くて1年後…全く犠牲を出さずに、というのは難しいらしい。

 それでも…魔物なんかに蹂躙なんてさせない。絶対に、この大陸を守ってみせるんだから…!!



 わたしも決意を新たにし、刀と魔法をもっともっと使いこなせるよう特訓だ!!!









「ちなみに先生、凶暴じゃない魔物っている?」


「あー…数千年前、1つだけ報告がありますね。もしかしたら…本来は精霊として生を受けるはずが、突然変異で魔物になってしまった…のやも知れません。

 他にもいたのかもしれませんが…魔物は基本、発見したら即討伐ですから…」


「………そっかあ…」



今まで登場した神や英雄の名前は全く重要じゃないんで覚えなくてオッケーです。

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