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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園4年生編
172/222

50



「シャーリィ、頼む。放課後は俺と一緒にいてくれ…」


「…また、来たんだね…?」


 わたしの問いにパスカルはこくんと頷いた。

 


 あの剣術大会の日から…ビビ様がパスカルに付き纏うようになったのだ…。早2週間、パスカルは限界のようだ。



 友人達とサロンで過ごしていれば

「ご一緒してよろしいかしら?」

 と割り込んで来る!!!王女に「嫌です」なんて言えんわい、仕方なくビビ様を接待する場に早変わり…。


 ジスランと剣術の鍛錬をしていれば

「お疲れ様です。どうぞこちらお使いになって」

 とタオルやら差し入れを持って来る!!!彼はやんわりと断ってくれる。


 エリゼと魔術の修行をしていれば

「エリゼ様、どうやったら私も最上級精霊、それか上級精霊と契約出来るのかしら?」と無茶振りをする!!!何度「無理です」と言っても理解してくれないらしい。


 図書館塔で読書をしていれば

「まあ、沢山あるのね!パスカル様、何かオススメの本は無いかしら?」

 と邪魔をする!!!パスカルは無言で10歳前後向けの本を差し出したらしい、本当になんでもあるのだ。


 数人で教室で勉強をしていれば

「私も授業がよく分からなかったの。教えて欲しいわ」

 と勝手に交ざる!!!だが正直、彼女の学力はジスランとどっこいである…向上心も無いので捗らない。



 街に行ってもついて来て無理矢理腕を組むとか。パスカルは宣言通り、もうデレデレする事もなかったが!!それが気に食わないのか、なんと男子寮まで押し掛けたらしい。流石に寮監の先生に止められたが。



「どこで情報を得るのか…俺の行動が筒抜けで…」


「………親衛隊のネットワークかな…?」


 揃ってため息をつく。

 わたし達はいくらお互いに好意を持っているとしても、それぞれの時間は確保している。生徒会でいつも一緒なのもあって、放課後も週の半分くらいは別行動だけど…こりゃまいった。




 今日は休日、現在地はラウルスペード邸。わたしの部屋でパスカルと作戦会議中。


 この間のパーティーで、わたし達の関係は全校生徒の知るところになってしまった…!当然ビビ様の耳にも入ったが…



『うふふ。ねえ、私達仲良くしましょう?セレス様』


『いや…あの。僕もパスカルも、友人としてならば…』


『ええ、ええ!3人で、仲良くなりましょうね!』


 と…彼女は完全にパスカルに好意を抱いているが、わたしを蔑ろにはしない。なんで…?ここは「アンタ男のクセに彼に付き纏わないでよ」とか言われちゃうパタ〜ンかと思ってたのに。

 むしろ…パスカルの次に狙われている気がする。だってわたしにも胸押し付けてくるもん、無意味ですが。

 


「友人とか生温い事を言っていてはいけません、完全に拒絶するべきですよ」


「うぐ…」


 話を全て聞いているグラスがそう言った。はい仰る通りです…それかエリゼを見習って、徹底的に距離を置くべきだったか…?

 いや、出会いからして無理だった。生徒会として公子として、他国の王族に無礼な態度など…!!



「ま、まあ…あと1ヶ月半で留学期間も終わりだし!」


 そう、彼女が国に帰ってしまえばこっちのもん!


「関係ありませんよ。学生じゃ無くなったとしても…あらゆる手でお2人に近付こうとするでしょう」


「うぐぅ…!」


 グラスの冷静な分析に頭を抱えるわたし達。その時扉がノックされたと思いきや、ロッティが入って来た。


「お兄様、今いいかしら」


「いいよー」


「ありがとう。私のほうでも王女殿下の事を調べてみたのだけれど…」


 ロッティもソファーに座り、何か紙の束を取り出し話し始めた。



「まず…剣術大会の日、彼女は2人が恋人同士だと知って「片方自動的に付いてくる」発言をしていたらしいわ。

 そこから推測すると、パスカルに狙いを定めて一緒にお兄様をお持ち帰りするつもりね。パスカルのほうが勝算があると踏んだのでしょう」


「「ああ〜…」」


「シャーリィもグラスも、何を納得しているんだ…?」


 そら…パスカルは可愛い系好きだと思われてるんでしょう。わたしはガッツリ逞しい人が好きだから、ビビ様はちょっと…ね。


「それと、彼女の親衛隊も超協力的なのよね。ライバルじゃないの?とも思ったけど…彼女は「パスカル様を伴侶に迎えたら、私は女王になれるの。そうしたら貴方達も愛人として愛でてあげる」って言われてるみたい。

 彼女の一番になるより、何番目でもいいから愛されたい…理解出来ない感情だわ」


 うん、わたしも理解不能。好きな人にはいつだって、自分だけ見て欲しいもの…。なんて考えていたら、パスカルの膝の上に乗せられた。節度は守れこんちくしょう。



「それと、ヨミさんとメイもお兄様と一緒に来ると思っているから…。

 あの授業でメイ達の変化を見て、自分も悪魔を召喚して成長させて。まあ…美形の悪魔に囲まれたい願望があるんじゃないかしら…。

 セフテンスの王女には男好きの方もいるみたいだけど…ヴィルヘルミーナ殿下もそうみたいね。とりあえず見目麗しい男性に色目を使いまくっているわ。ほら、親衛隊も美形ばかりじゃない?

 それとタオフィ先生も狙われてるみたいね。若くて優秀で、それに結構美形だし。ナハト先生は何故か圏外みたいだけれど。彼女の性格からして、妻子持ちとかは関係無さそうなのに」

 


 ロッティはそれ以外にも沢山の情報をくれた。よく調べたね、バティストの教育!?



「ふっ、スパイよ!王女殿下親衛隊に、同盟メンバーを数人忍ばせたの。特にアフロ男爵はいい働きをしてくれているわ!」


 同盟…?アフロ男爵って…1年の時からアフロ固定で同じクラスの男爵令息?

 わたしの疑問が顔に出ていたのだろう、ロッティは「お兄様は気にしなくていいのよ」とにっこり笑った。

 そしてロッティはどんどん紙を捲って進む。が…途中でピタッと止まり、頬を赤らめた?



「……そのぅ…。彼女、首都に家を購入して住んでいるじゃない?

 それで…放課後とか休日とか…えっと…」


 ???随分と歯切れが悪い。珍しいね…どしたん?言いづらいならいいんだよ?


「いえ、お兄様もパスカルも知っておくべきだわ。

 あの、ね…?自分好みの男性を数人家に連れ込んで…い、い、如何わしい行為を…繰り返して、いるみたい…」


「「「………………」」」



 えーと…つまり…その。



「……ちょっと貸してくれ」


 パスカルに資料を渡すロッティは真っ赤だ。多分わたしも…

 彼は躊躇いながらも読み進める。どうやら同盟メンバーとやらも連れ込まれたらしいが…事に及ばれる前に急いで逃げたらしい。よかった…。



「あの…だから。絶対に家に行っちゃ駄目よ。何もしていなくても、噂が広まる可能性もあるから…!

 なるべく私やルネ、姫様と行動してちょうだい。エリゼ、ジスラン、ルシアン様、スクナ殿下辺りも要注意だけど…」

 

「大丈夫、俺が脱がせたいのはシャーリィだけだから!」


「言うなアホ!!!」


 彼の頬を思いっきり殴ってやった。




 とにかく!彼女に注意をしつつ残りを過ごす事に決めた。





 ※※※





「シャーリィ様、今いいですか?」


「いーよー」


 パスカルが帰った後、夜に師匠がわたしの部屋を訪ねた。何事かと思いきや深刻な表情。とりあえずソファーに座らせ話を聞く。


 

「…その。グラスは何者ですか…?」


「………箏出身で、元孤児。今はわたしの従者として仕えてくれている…青年」


 事実だけを述べる。もしかしたら、家族はいるのかもしれないけれど。



「……先日、少那殿下と木華殿下が来ましたよね」


「うん」


「あの日の夜…グラスに聞かれました。お2人と…亡くなった命殿下について…」


「へ…?なん、て、答えた…?」


 まさか彼がそんな事をしていたなんて…。そりゃ剣術大会で、随分と大胆な行動すんなと思ったけど。


「…お2人については、俺が答える訳にはいきません。王弟殿下と王妹殿下、それだけです。

 命殿下については…俺が本来お仕えするハズだった方、と」


「そうなの!!?」


 思わぬ情報に、テーブルを叩いて立ち上がってしまった。師匠は驚き、むしろ命殿下について知っているのか?と聞かれる。

 考えた末…少那の過去を知っているという事を話した。

 

 少那の母と姉が主体になって、命殿下とお母様、女中の命を奪った事。それがきっかけで彼は女性恐怖症になってしまったと…。

 師匠はそれなら話が早い、と言って色々教えてくれた。もちろん他言無用でね。



『えーと…ちょっと長くなるので漢語で失礼します。どこから話したものか…。

 まず…王妃殿下、瑞華(ミズカ)様に最期まで仕えていた女中…眞凛は俺の姉です』


『は…はいいいいっ!!?』


 彼は目を丸くして、そんなに驚かなくても…と言うが驚くわ!!いや落ち着けわたし…ふう。


 当時眞凛さんは23歳、師匠は10歳だったそうな。彼らは早くに両親を亡くし、親戚の家で育つ。

 眞凛さんは学校を卒業後、町の本屋さんに就職。そこで…万引き犯に回し蹴りを喰らわしているところを瑞華様に目撃され気に入られ、彼女に仕える事になったとか。お給料も段違いに良くなったので、親戚に迷惑は掛けられんと姉弟2人で家を出た。

 そのまま後宮まで一緒に行くも、そこは入ったら簡単には出られない場所。姉弟は月に一度の手紙のやり取りしか交流が無くなってしまった。

 そして瑞華様は男児を出産。彼女のいずれ飛白には息子を護って欲しいわ…という言葉を胸に、日々修練を積んでいたとか。



『姉に王族の殺害容疑がかけられ…俺も親戚も皆囚われました。特に俺は姉と頻繁に手紙のやり取りをしていたので……まあ、その。拷問されました』


『軽っっっ!!?』


 彼は頬を掻きながらあっけらかんと言い放つ。いや拷問て、10歳の子供を!!?王族、特に正妃と王太子の殺害は…それ程までに重いからか…。

 どうにも眞凛さんは師匠以外、親しい友人なんかもいなかったようで…手紙で殺人計画を立てていたのではないかと疑われたらしい。

 

 その話を聞いて…わたしは血の気が引いた…。寒気がして鳥肌が立ち、まさか全身の古傷は…と思い至る。


『はい…全てその時のものです。姉の容疑が晴れ、俺も解放された時…治癒魔術を掛けてもらいましたけど。1ヶ月くらい続いていたので、すでに塞がっていた傷はご覧の通りです。

 ちなみに髪も生まれは黒でしたが、いつの間にか白くなっていました。精神的苦痛か肉体的損傷が原因らしいです。

 まあ本当に苦しかったし痛かったし。でも…俺は最後まで姉は無実だと言いました。それは俺の誇りです!』


 彼は自分の髪を引っ張ってみせる。が…よく見るとその手は震えており、顔色も悪い。当時を思い出しているのだろうが…なんでもないような振りをするのは。


『……少那に、罪悪感を与えたく無いから?』


『…………………』


 師匠が今も塞ぎ込んでいたり、王族に恨み言を言っていたら…少那は今のような笑顔ではいられないだろう。

 自身が筆舌に尽くし難い扱いを受けたというのに。それでも他者を思いやれる彼の優しさに…わたしは涙が溢れてしまった。そのままソファーから立ち、彼をぎゅっと抱き締める。


 

『………ありがとうございます、シャーリィ様。少しだけ…弱音、いいですか?』


『うん。いくらでも……』


 飛白はわたしの背中に手を回し、震える手で強く抱き締めた。



『俺…本当に苦しかった。来る日も来る日も拷問官に傷付けられて、吐くまでは死なないように加減され治療され…!

 終わりが見えなくて、でもお姉ちゃんは何も悪い事をしていない!と訴え続け。何度も何度も殺してくれって無様に請いました。最後は目も貫かれ…陛下が手配してくれた最高級の治癒師達のお陰で、ある程度の傷は治りましたけど。

 それでも…夜が来ると思い出し、眠れぬ日々を過ごしました。大人になっても変わらず、灯りが無いと眠れなくて。

 周囲の心無い言葉にも沢山傷付きました。でも…幼い少那殿下が「ごめんね、本当にごめんなさい」と泣きながら謝り続けてくれた姿を思い出し…継ぎ接ぎだらけの心で頑張ってきました。


 そして今…俺は幸せなんです。ここでは誰も俺を見下さない、傷を不快に思わない。ありがとうございます。俺を…必要としてくれて…』



 涙を流しながら、長年の思いを吐露する。今までは、誰にも言えなかったのだろう…わたしは彼の頭を撫でながら聞き続けた…






 約10分程で、飛白は復活した。その際…


「えーと…実はさっきから、顔に胸が当たっています。そういうのは、パスカル様にしてくださいね。俺も襲っちゃいますよ?」


「…………元気になって何よりだね!!」


 ニコニコ笑いながら、わたしの口の横ギリギリにキスをしおった!おうおう、泣きたくなったらいつでもこの胸を貸したるわい!!!


 まあそれは置いといて…そのまま隣に座る。今はグラスの話をしているんだったわ。



「そう、グラス。俺はそれ以上何も言わなかったんですけど…彼が「何か箏を思い出させるような物は無いか」と聞いてきました。

 でも俺、私物は少なくて。とりあえず俺の部屋に招き、好きに見ていいと言ったんです。その時…グラスが香水瓶に触れました」


 香水?飛白、香水付けてるの?と思いきや…それは眞凛さんの唯一の形見らしい。

 彼女の遺体が発見された時、ぎゅっと握り締めていたとか…。私物は全て処分されてしまったが、それだけは少那が取り返してくれたと。


 ただその瓶、どうしても開かない。斬っても熱を加えても叩き潰しても魔術でも…ヒビも入らない。



「それが…グラスが触れた途端、簡単に栓が開いてしまったんです。部屋中に甘い香りが漂って、確かそれは瑞華様の好んでいた香りでした。

 グラスは静かに栓を閉めたと思ったら。大粒の涙を流して、立ち竦んでいたんです。5分程経った後、「ありがとう」と残して出て行きましたが…」

 

「……甘い…香り…?」



 夏期休暇に入る前…グラスとの会話を思い出す。




'お嬢様に出会うまではずっと、帰りたいと思っていた。いや…帰らなきゃいけないって…。

 なんか…甘い香りがして…おれ………'



 ………そっか。そっかあ…わたしは立ち上がった。



「ありがとう、師匠。お陰で色々分かったよ。わたし、ちょっとグラスに会いに行ってくるね」


「え?あ、はい…」



 一緒に部屋を出て、おやすみと挨拶をして別れる。わたしはその足で、グラスとバジルの部屋を訪ねた。


「おーい、シャルティエラだけど。2人共いる?」


「おっお嬢様!こんな夜更けに使用人の、ましてや男の部屋を訪ねてはいけません!!」


「すまぬ」


 ノックをすれば、出てきたのはバジル。どうやらグラスは不在らしい。今日はもう仕事は終わってるし…行き先に心当たりが無いかと聞くと、屋根の上かも…と教えてくれた。

 懐かしー。昔わたしもよく、泣きたい時は屋根の上で過ごしたものだ。


「そっか…馬鹿となんとやらは高い所が好きだもんね」


「お嬢様、濁すほう逆ですよ…」

 


 バジルの突っ込みは完全無視、屋根を目指す。窓から外に出て…ひょっこり顔を出せば、いた。ぼけっと外を眺めているグラスだ。

 彼もわたしに気付いているだろうが無反応。隣に腰掛けて、一緒に空を眺める。今日は新月だから…星が綺麗ね〜。




「「…………………………」」



 随分と長い時間、そうしていた気がする。段々と寒くなり…体を震わせると、グラスは無言で上着を掛けてくれた。温かい…。



「……………月」


「ん?」


「…月が…綺麗ですね」


 は?漸く口を開いたかと思えば…月なんて出てないって………え?

 横を見ればグラスは前を向いたままだが…その言葉、この世界でも通じるの……?



 よく考えて、わたしの出した答えは。



「……わたしは、太陽のほうが好きです」


「…そうですか」



 彼は「これが最後でした」と笑った。………前に進む決心がついた、って事かな。



「………思い出した?」


「…はい、全部……」


「そっか……命、で」


「やめてください」


 殿下、と呼んでみようと思ったのに。彼に口を塞がれ、それ以上紡ぐ事が出来なかった。


「おれは、貴女の侍従で在りたいんです。貴女より…高い身分になりたくありません。せめて、この国にいる間だけでも…グラス・オリエントでいたい…」


 目に涙を浮かべながらそう言われては、何も反論出来ない。優しく手を外し、重ねる。



「……うん。答えは、出た?」


「…恥ずかしながら、まだ…迷っています。でも…少那と木華が帰る前には、必ず出します」


「……分かった。それとね、年内に一度凪陛下が来るってさ」


「へ?な、なんで…?」


 いやあ。陛下ってばルキウス様と木華の結婚、すっごい喜んでくれているらしくて。ルキウス様もいずれ箏に挨拶に行くって言ってるんだけど…

 きっと、可愛い妹が暮らす国を早く見ておきたいんだろうね。



「もちろん、国を挙げて歓迎するよ。その時…君も、一緒にお出迎えしてくれる?」


「…………………おれ、は……」


 グラスは戸惑いの表情だ。自分を受け入れてくれるのか、不安なのかな?わたしは握る手に力を込める。

 

「前にも言ったけど。わたしは…公爵家は君を拒まない。君の正体がなんであれ、どんな状況でも…何を敵に回しても。必ず、君を守る。だから…不安そうな顔をしないで?」


「………はいっ!」


 やっと笑顔になってくれたので、彼の髪を撫でてみた。「おれ、今年で19歳になるんですけど…」という発言は無視!だってわたし、主人ですからー。






「そういえばね、わたし少那にも告白されたんだー」


「ぶふぉっ!!…なんで、難易度高いとこ狙うかなぁ…」


「あははっ!兄弟って、好きなタイプも似るのかな?」


「……ははっ、どうでしょうね」



 わたし達はそのまま、夜通し話をしていた。

 それらは大体、他愛も無い話。グラスもアーティに告白されたけど、残念ながらお断りしたとか。


「そしたら次の日、アーティとセルバが付き合い始めたって…」


「ぶわっはははははっ!切り替え早っ、君も見習いなさいよ!!だはははは!!」


 思わず大笑いしてしまう。どっちもまだ8歳だけどね!!



「バジルはあれ、絶対巨乳好きですよ。フェイテも巨乳のお姉さんとお付き合いしたい!っていつも言ってるけど…最終的には年下の女の子とか選びそう」


「わかる。バジルはしょっ中モニクの胸見てるよね!彼女結構大きいからさ!フェイテはお兄ちゃん気質って言うか…すっごい頼りになる感じするよね」


「はい。それとテオファもよく誰々って素敵〜とか言ってますけど…本気な感じしませんよね」


「ね!なんて言うか…ふざけた感じ出して、断られても「あちゃー」で済まそうとしてる?もしかして恋愛が怖いのかなあ…?」


「むしろ…結婚が、でしょうか。…実の母に捨てられたトラウマで、家庭を持ちたくないとか」


「うーん…でもバジルも同じだし…わたしだって血の繋がった両親には捨てられた。今は超幸せだけど…彼もいつか、傷が癒えたら…本気で誰かを愛せるよね」


「…はい、きっと」



 やっぱ恋愛話は、古今東西鉄板よね。

 いつかネイが彼氏を連れて来たら、フェイテが泣くかどうかで賭けてみた。すると2人共泣くほうに賭けたので無効です。


 ラディ兄様とタオフィ先生がグラウンドを凍らせ、スケートをして遊んでいたら…クザン先生に追いかけ回されていたとかいうアホな話や。

 最近魔物の出現が多くなって大変だよね〜という深刻な話題や。面白かった本。あの店のお菓子が美味しかったとか。ビビ様の行動を相談したら…


「あの変態様はお嬢様しか見ていませんから大丈夫ですよ。おれはね、むしろお嬢様が絆されないか心配です。演技にコロッと騙されそう」


「騙されないよ!多分…」


「……多分て…」


 そんな呆れんといて。しかしパスカル、皆からの信頼が厚いね…誰も彼もが、あいつは大丈夫だなんて言うわ。




 そんな風に楽しく話していたら…あらまっ、明るくなってきちゃった!?やば、仮眠とって刀の特訓じゃーい!

 また後でね!と笑顔で別れるも…結局揃って昼まで寝てしまった。どうやらわたし達が朝まで話していたのは知れ渡っていたようで、師匠も「今日の特訓はお休みですね」と笑った。




 あとどれくらい、グラスとこんな日々を過ごせるだろうか…。どんな関係にも、いつか必ず終わりは来る。ただ…


 笑顔でお別れするか、もう一生顔も見たくない!と喧嘩別れするか。どうせなら…また会おうね、と約束をしたい。

 例え今生の別れになろうとも。いつか再会を願う心だけは…確かに存在するものだから。



ヴィルヘルミーナ問題とグラス問題が同時進行中。いずれ必要になってくるので…ややこしいけどよろしくお願いします!

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