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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園4年生編
163/222

43



「それで…ルネとファルギエールは正式に婚約を交わしたのか」


「へえ…ルネさんが。それはおめでたいね〜」


「ね!まあ、大変だったけど…」



 お見合い騒動から数日後、わたしは皇宮に来ている。今日も女装をしてお出掛けの予定なので、行き先を話し合い中。

 こういうの、事前に決めておくべきでは?と以前言ったのだが…当日話し合って決めたい!と言う少那の希望でこうなっているのだ。今はお見合いの話に脱線しているけどね。



 そして今日の服装なんですが。上は刺繍の施されたおしゃれなTシャツ。下は…膝上10cmくらいのタイトスカート。右側にプリーツが入っている、可愛い服である。

 少し…短くない?ミニではないが、ちょっと恥ずかしい。最初はもうちょっと長いやつ穿いてたのに!皇宮に着いた途端木華に無理矢理連行され「これがいい」って押し付けてくるんだもん!!!


「もっと女性らしさを出したほうがいいじゃない?少那兄上の特訓になるわよ」


 ってなあ!!渋々着替えて鏡を見ると…あら可愛い。以前のように強風でわ〜お!な事にもなるまい…と考えコレで行く事に。

 そんで部屋に戻ったら。ルシアンは目を逸らして、少那はお茶を噴き出したんだけどね…。


 今も少那とは並んで座っているのだが。彼はチラチラとわたしの足を見ている。無意識なんだろうが、バレバレである。ちなみに向かいのパスカルはガン見である。もう慣れた。

 ……ここでヒッチハイクのようにチラッとさせたら、少那はどう反応するかな…と思ったが。絶対面倒な事になるのでやめておこう…。


 しかし海で女性陣の水着姿には一切反応しなかったくせに。彼の性癖が分からない。



「はあ…それでね、うちにもテオファっていうドレスメーカー目指してる男の子がいるからさ。

 それをオスワルドさんに話したら…会ってみたいって言うの。テオファも是非お会いしたいです!って言うし…明日ルネちゃんと一緒に遊びに来るんだ」


 もちろんオスワルドさんには、わたし達の正体を明かしたのである。そんで互いに名前で呼び合う程仲良しに。まあ、未来の妻の親友ですし!


 よかったら皆も来ない?と聞けば、少那は行きたい!との事。ルシアンもオッケー、パスカルは呼ばなくても来る。

 明日は皆集合かな?と考えると…楽しみになってきたぞ!まあその前に、今日の予定を決めないとね!


 


「うーん。海、キャンプ…色々出来たね!後は〜…」


 うん?少那はなんか雑誌を読みながら呟いている。表紙を見せてもらうと…平民の若い人向け雑誌の夏の増刊号、『夏休みのマブダチ』だった。どこかで聞いた事あるような名前ですね?まあ今日は街に行くだけですが。


 

「うーん…私、街を散策というか…目的地を決めずに歩き回ってみたいな」


 ぶらり旅ですね!更に少那は…大袈裟に護衛とか引き連れないで、お忍びで行きたいと。咫岐も留守番ね!と言ったら、咫岐は絶望の表情になった…。


「そう…ですね…。殿下ももう、子供ではないのですから…。でも護衛は…」


「大丈夫大丈夫。ルシアンがお忍びの時は、いつも護衛さん離れて着いて来てるから!…たまに撒くんだけど」


「撒かないでくださいね!?」


 この心配性さんめ!とにかくジェイル含め護衛は皆離れて行動!今日はわたしら4人で行く事に。ルシアンは金髪に、少那は赤髪に染めて準備完了。





 だが行きの馬車の中…

 

「なんか食べる時とか、やっぱ毒味必要?」


「構わないだろう。皆同じ物を食べるだろうし、今まで過保護すぎたんだ…」


 そりゃ良かった。食べ歩きとかしたいのに、毎回毒味が現れちゃ疲れる。ルシアンもそう言うし、気兼ねなく動けるってもんよ。まずどこから行こうか考えていたら…少那が雑誌を開き「このお店が気になる」と言ってきた。

 どれどれ?と一緒に覗き込む。しかし距離が大分近いけど…彼が緊張している様子は無い。最初はわたしのスカート姿にかなり反応していたが、慣れたかな?

 さり気なく手を触れ合わせても、ちょっと照れくさそうに笑うだけ。これなら、そろそろ次のステップに進んでもいいかな?と提案すると…


「次だと!まさか…触らせるのか!?見せるのか!!?駄目、絶対駄目!!」


「おぶっ!!馬鹿か君は!」


 何か勘違いをしているパスカルが、思いっきりわたしの腕を引っ張って膝に乗せた。そしてぎゅ〜っと抱き締め…隣のルシアンが死んだ目をしている!!


「こんのアホ!!僕と木華以外の女の子に慣れてもらうのっ!!例えばロッティと手を繋いでもらうとか!!」


「あ、そういう…」


 そんな風に大騒ぎ。少那も「頑張る!」と言っているので…あ、そうだ。本屋行って、女性誌とか買ってみよう。まず写真から女の子に慣れるのもアリだよね!写真集はまだ早いかな〜?



「それなら、コレとかどう?」


 ん?ヨミが影の中から何か差し出し……ギャーーーーーッッッ!!!!



「こ、これ…エロ本!!!なんでまだ持ってんの!!?」


「なんとなく。まだいっぱい中にあるけど…」


「全部捨ててーーー!!!そんなん、ずっとわたしの影の中に入ってたの、何年も!!?」


「うん」


 ひーーー!!!それはバティストとシグニと出会った日、ヨミが物色していたエロ本!!ヨミが言うには「あんま面白くなかった」ですって。読破したんかい!!

 しかも全部出しやがった!!!エロ本に埋もれてる馬車って何!?どんな変態貴族だよ!

 何十冊あるの、ここで捨てないでやっぱバティストに返して!!



「な…何これっ!!?セレス、君の…!」


「違う違う違う!!お願い信じて、コレわた、僕のじゃないから〜〜〜!!!」


 少那は表紙を見ただけで茹でだこに。そろ〜…と開こうとしてやめている。ルシアンは「ほほう」とか言いながら普通に読んでるし、パスカルは…散らばったエロ本に横目で興味津々。恐らくわたしの手前、読めないんだるぉ!!?

 全員の手からぶん取って、影に押し込む。んもう、帰ったら絶対バティストに押し付ける!!

 


「ほらパスカル。この子とか、ちょっとシャーリィに似てると思わない?」


「何ッ!!?…あっ、いや………後で見せて(小声)」


「パースーカールーーー!!!」

 


 男ってやつは!!男ってやつは、もう!!!





 ※※※





 少那のエスコートで馬車を降り、そのまま手を繋いで歩く。ただ…繋ぎ方が、所謂恋人繋ぎ。なんか今日の少那、積極的?ふふ、頑張ってるね!

 

 まず本屋でそれぞれ買い物。パスカルは参考書や小説、ルシアンは遺跡の写真集?わたしは…小説とか読むか〜。

 少那には予定通り雑誌を見繕う。すると…「この服、セレスに似合いそう」と女の子を指差し言った。




 なので…次は服屋!!平民向けのお店で、お忍び用の服を物色。わたしも女装用として婦人服を堂々と選べる、楽しい!


 皆はどんな服を選ぶのかなと思ったら…



「ねえねえ、コレどう!?」


「「「……………」」」



 少那が…センスが!

 柄オン柄!!上は赤いチェック、下は青のペイズリー!!そしてその手に持ってる派手な色の靴下何!!?



「いつも服は咫岐が選んでくれるんだけど…私も自分で決めないとね!」


 咫岐ィー!!君、人知れず苦労してたんだな…!!


「あ、これ格好いいね!これも、あれも!」


 スカル!蜘蛛の巣、星条旗みたいな何か!絶妙なやつ…!!なんだそのトゲトゲチョーカー!!指無しグローブ!!変なとこ破けてる服!!


 

「強そう!!」


 ヒョウのドアップ!!!少那が次から次へと選ぶのは…全てちょっとアレなもんばかり…!っていうか組み合わせが酷い!!

 男2人は笑いを堪えている…指摘してやれ!!



「いやなんて!?ダサいぞなんて、私には言えない!」ヒソヒソ


「俺はもっと言えませんよ!?ここは…シャーリィが違う服を勧めてあげればいいんじゃ?」ヒソソ


「なんで僕!?」ヒソソン


「好きな子に「これ似合うよ〜」とか言われたら…私なら買ってしまうな」ヒッソン



 く…!!人の好意を利用するのは気が引けるが…これも全て彼の為だ…!

 顰めっ面のパスカルは無視し…無難な服を選…


「これ全部ください!!」


「「「待ったーーーっ!!!」」」


 レジ行っとる!!!はあ…ギリギリで止める事に成功した。「なんでー!?」と怒る少那を宥めるのは2人に任せて、わたしは急いで店内を駆けずり回り服を選ぶ。



「はあ、はあ…んっとね…僕、少那にはこれが似合うと思うな〜?これも、この色素敵!」


「うーん…ちょっと地味じゃない?」


 シンプルと言ってもらおうか。こうなったら奥の手じゃい!もう一着、婦人服を取り出し…


「ほら、これ僕とお揃いだよ!」


「これ買うね!」



 ふ…こうして僕は、少那の名誉を守ることに成功したのでした。



「……シャーリィ。俺のも選んで」


「…じゃあ私のも」


「セレネも選んで欲しいぞ」


「むむ。もちろんぼくもだよね?」



「え…えぇ…?」

 


 君らはセンスいいじゃん…と思いつつ。3人と1匹の圧に負け、全員のコーディネートをするのでした…いやセレネも!?

 


 ルシアンは華やかな美形だから…結構派手なのいいかも。パスカルは落ち着いた…いや、カジュアルなの見たい…。

 ヨミは〜…床に引き摺る程の長い黒髪に加えて肌も黒いからな。少し明るめの色で…そういやこないだのアロハ似合ってたな。目の色に合わせてみるか。

 セレネは女性用のミニシルクハットね。これで全員完成!!



 セレネにはその場で被せる、あら可愛い。そして男連中はそれぞれ試着室に放り込む。

 まず出てきたのはルシアン。なんか…出勤前のホストかな?……まあいいか。

 次いでヨミ、だぼっとした南国兄ちゃんになった。うん、可愛い!

 そんで少那。彼はハーフパンツを穿かせてみて、ちょっとスポーティー?少年っぽくて似合ってるぞ!


 最後、パスカルなんだけど…



「シャーリィ。これちょっとキツくて…もうワンサイズ上の無いか?」


 シャッとカーテンを開け…半裸で出てきおった!!なんでインナーも脱いだ!?って、わたしがタンクトップとセットの服渡したんだった!!思わず両手で顔を覆ってしまう。

 ん?小さい?ぴったりだと思ったんだけど…


「パスカル…また筋肉付いた…?」


「え、ああ。ちょっとトレーニング増やしたんだ」


 そ、そっか。指の隙間からパスカルの身体をちらりと…いい身体やんけ…。結局、海では彼の水着姿拝んでないんだよな…。赤い顔を見られたくなくて、急いで他の服を取りに行った。

 だが…彼にはわたしの挙動がおかしい事をすぐ気付かれてしまい…。ニヤッと笑っていたなど、知る由も無かったのである。





「…パスカル〜、持って来たよ。はい」


 全く同じ服は無かったので、似たようなやつを選んだ。他の3人はレジに行ったり他の服を見たりしていてここにはいない。


「ありがとう」シャッ


「ぶっっっ!!」


 また半裸で!!左手で自分の目を覆いながら、右手で服を突き出す。早くこれ着て!!と、その時。


「あああーーーっ!足が滑ったんだぞ!!」


「へ…ボオッシュ!!」


 背中になんか衝撃が!!今の声は…セレネ!?なんで体当たり…っ!前のめりに倒れるわたし。反射的に受け身を取ろうとしたが…それは必要無かった。




「…大胆だなシャーリィ?こんな狭い所で…裸の男に抱き付くなんて」


「う…!」



 目の前に、パスカルがいたからね!わたしは彼を巻き込み倒れる羽目に。あらやだ逞しい胸板…痴女か!!?

 気付けばわたしは、試着室の床に座るパスカルの上に跨り…狙っただろこの体勢!?そしてなんでカーテン閉めた!!


「あ、の、ごめん!すぐ出て行くから!」


 わたしは一切悪くないはずだが、なんとなく謝ってしまう。急いで離れようとしたのに、腰を抱かれてしまい…身動きが取れない…!


「シャーリィは本当に細いな。俺よりずっと鍛錬を積んできたはずなのに…筋肉が付きにくい体質なのかな?」


「ひう…!そ、そうかもね。あの…それ以上は…!」


 あろうことか彼はわたしの服を捲り上げ…脇腹を撫でた!!しかも知らないうちに、わたしが押し倒されているし…!狭すぎて逃げ場はなく、すぐに試着室の壁に追い詰められた。

 に、逃げねば!!これ以上捲られたら…胸が、見える…!!自分の胸を抱き締めてガードする。更に眼前にはパスカルの裸、目のやり場に困りぎゅっと瞑れば…クスッと笑う声がした。



 ……?何も見えないが…彼はわたしの上から離れたようだった。暫くしてからそろっと目を開ければ…すでに服を着たパスカルが、わたしを笑顔で見下ろしている。


「どうだ、似合うか?」


「あ…うん。格好いいよ…」


 普段とは違い、ラフな格好が新鮮で惚れ直すわ…。彼はその返答に満足したように笑い…すぐに脱いだ。なぜ脱ぐ!!?


「脱がないとレジに持って行けないだろう」


「そっかー。……じゃ、わたしはコレでっ!!」


 全くもって正論だが、わたしも一緒の必要は無いよね!?と逃げようとすれば…腕をガシッと掴まれ止められた。


「待って。実は俺も、君に似合いそうな服を選んでみたんだ。良かったら着てみてくれないか?」


 と、紙袋を差し出された…いつの間に買ったんかい…。

 短くお礼を言って、じゃあ隣の試着室に…と思いきや。すぐ終わるから、ここで着替えればいいと止められた。

 普通に考えれば、その理屈はおかしい。だが…わたしは軽くパニックになっていたのと、ちょっと筋肉を見ていたい…という欲が働き。壁に向かって座り込みつつ、チラチラと覗いていたのでした。



「(………見たければ、いくらでも見せてあげるのに…。可愛いな〜)」



 

 彼はやたらと時間を掛けて着替えを終えた。じゃあわたしも…と、居座ろうとしていたパスカルを蹴り出し服を脱ぐ。

 ほう…黒のハイウエストショートパンツに、柄ストッキング。オフショルダーのフレアスリーブシャツ…普通に可愛い…。パスカルセンスいいな…と感心しつつ、鏡の自分に見惚れる。


 試着室を出れば、会計を終えたパスカルが待っていた。わたしの姿を確認すると…「思っていた通り、凄く可愛い」と言ってくれた。いやあ…それほどでも〜!

 他の皆にも褒めてもらい、上機嫌なまま買い物終了。次はどこに行こうかと話していたら、とある事に気付く。



 ここは…イェシカお母様の実家である香水店の近くだ!行ってみようかな…と思ったけれど。おじさん達に、今のわたしをどう説明すべきか?と考える。

 わたしが女で、現在男として生きているのは知っている。でも今は女性の姿。しかも男性を3人…いやヨミを入れて4人も連れて…ハーレムかい!!!



 よし、面倒なので諦めよう!と結論を出したのに、店の前を通りがかった時。


「香水店…?ねえ、行ってみようよ!」


 と、少那が立ち止まってしまった…。仕方なく入店する事に。こうなったら…!



 カランカラン…


「いらっしゃいませ…おや?」


「……………」


 わたしは誰にも気付かれないよう、おじさんに指でバツを作って見せた。これは以前決めた…『知らない人のふりしてください』の合図さ!!おじさんは一瞬躊躇った後、笑顔で挨拶をしてくれた。


「…いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりご覧ください」


 ほっ…助かった。中に入ると、それぞれ好きに見て回る。久しぶりに来たし…なんか買おうかな?



「男物の香水?へえ…こんな物が…」


「マクロン…男だって香水くらい付けるぞ?」


「うぐ…」


 というパスカルとルシアンの会話が耳に届いた。そうだ…今着ている服のお礼に、パスカルに何か買おうかな…。

 わたしはカウンターにいるおばさんに近付いた。彼女にもおじさんから話が伝わっており、初対面の振りをしてくれる。


「いらっしゃいませ、お嬢さん。何をお探しですか?」


「えっと…そこにいる青い髪の男性。彼に贈りたいんですけど」


 店内はそれほど広くないので、男性陣に聞かれないよう小声で伝えた。そういや…パスカル以外皆黒髪だな、とかどうでもいい事を考えながら。するとおばさんはパスカルに目を向けて…超笑顔になった。


「あらあら、あらあ。ふふふ、畏まりました!」

 

 うぐう…。そのままおばさんは色々提案してくれて…最終的に、わたしが気に入った匂いの香水に決めた。でもパスカルが嫌な匂いだったらどうしよう?と不安になる。そん時は…自分で付けるか!!


 他の皆は買わないようで、わたしが終わるのを待っていてくれた。帰りにこっそり贈ろう…と考えていたら。

 店内にいた他のお客さん…中年の夫婦の会話が、何故か耳に留まった。




「そういえば…あの時の少年、どうしたのかしらね?」


「ああ…腹筋30個に割れたかな…?」



 ………なんの話?どうしても気になってしまい、その夫婦に声を掛けてみた。


 


 で、彼らの話によると。今から20年位前。彼らはまだ結婚前、2人でこのお店に訪れていた時。

 なんと店の中で…バイトの女の子に、客の男の子が熱烈な告白をしていたと言うのだ。

 だが…バイトの子が「腹筋が30個くらいにバキバキに割れてる人が好き!!」と宣言して逃げたと。



「どう見ても相思相愛っぽかったんだけどなあ」


「そうよね、どうしてもお断りする理由があったのかしら。その時あなた、男の子に「諦めんな!」なーんて言ってたわよね」


「おう!一度断られたくらいで引いてちゃ、男が廃るぜ!」


「あはははっ!そんな事があったんですか〜」


 あっはっはっと3人で笑う。その後2人がどうなったか、店主は何も教えてくれないと。従業員のプライバシーですもんね!

 ただ…こうしてこの店に来る度に、思い出してしまう。腹筋は割れただろうか…彼らは結ばれたのだろうか、と。夫婦はそう言ってまた笑った。



 

 彼らに話のお礼を言って、皆で店を出る。その時…おじさんとおばさんがプルプル震えて、両手で口元を押さえていたのが見えた。どうしたんだろう…?




「腹筋って、30個に割れるもんなの?」


「無理だろうな。そもそも先天的に個人差があるらしいけど、多くても10個だとか聞いたような…」


「(叔父上…こんなところで伝説になっていたとは…ぷっ)」


 そっかー。歩きながら、自然と腹筋の話になった。バイトの子はマッチョが好きだったんだねえ。世の中には変わったカップルもいるもんだ〜。



「で、でも…もしセレスがそう言うんなら、私頑張ってみるからね!」


 少那がわたしの腕を取りながらそう言った。いや…君ヒョロイから、無理じゃない?それ以前の問題だけどさ。

 それでも少那は真剣な表情で必死に語るものだから…私達は皆、苦笑するしかないのだった。








 その頃、ラウルスペード公爵邸で。


 

「ぶえっくしょおいっ!!」


「うっわ!汚ねえな、オーバン!」


「あー…わり。風邪か…?」


「気ぃつけろよー?明日はオスワルドとか、何人も来る予定なんだからな」


「わーかってるって」



 鼻を啜るお父様の姿があったとか。




冬の増刊号『冬休みのズッ友』もあります

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― 新着の感想 ―
[一言] パスカルがさりげなくプレゼントを渡したところ、かっこいいと思いました! ちょっとこれからオーバンとイェシカの出会ったシーン読み返してきますp(^-^)q
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