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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園4年生編
122/222

08



「〜♪」


「ご機嫌ですね、お嬢様。何をお読みになっているんですか?」


「これ?ふっふーん」


 今日は休日なので、僕は本邸の自室で読書中。これは少那にもらった…和食の本さ!!


 彼が以前言っていた、箏の料理を振る舞ってくれるっていう話。何か食べたい物があればリクエストを受け付けてくれるらしい。

 この本に載っている物は大抵作れるというので、何頼もっかなー!と読んでいたのだ。そこにグラスが、ひょいっと覗き込んで来た。


「ねえ、その日はグラスも一緒に皇宮行かない?以前は政治的な顔合わせでもあったけど…今回は友人として会いに行くだけだし」


「ん…いえ、やめておきます。他国の王族に失礼があってはいけませんから」


「(サラッと皇族には失礼してもいいって言ってる?)まあ無理強いはしないけど。お土産もらってくるね!」



 これ美味しそう、懐かしい!とか考えながらページを捲る。

 …懐石、会席料理より…もっと庶民的な物がいいな…。でも陛下も召し上がるだろうし…やっぱ見た目も華やかにしなきゃ駄目なのかなあ。


 僕としては海老天蕎麦とか食べたいんだけど。お願いしてみよっかな…?あと寿司食べたい!握ってもらえないかな?

 とりあえず要望をメモメモ…こんなに食いきれんわ。和菓子だって食べたいのに…。




 と、その時ノックの音が響く。ロッティが来たようだ。


「お姉様、私にも見せて!」


「うん!はい、どーぞ」


 ロッティがソファーの僕の隣に座り、グラスがお茶を差し出す。そのままバジルと並んで控えて…彼もすっかり侍従が板についているね。



 さて。僕の友人達は全員招待してもらったので、ロッティも少那から離れた席にはなるが一緒に食べに行くのだ。


「スシ?……魚を、生で食べるの…?」


 おや、ロッティの様子が…?

 彼女は和食は全く知らないから、僕が食べたい物でいいと言ってくれた。それで寿司について説明していたら…「何言ってんだコイツ?」な目で見られた。悲しい。


 …そっか、この国に生食の文化は無いもんね。美味しいのに…大丈夫、ロッティが残したら僕が食べてあげるね!


「(食べたくない…なんて、このお姉様の笑顔を見たら言えないわ…!)お、おいしそう〜…楽しみだわ〜…!」


 うんうん!その後も本を広げ2人であーだこーだ言っていたら、ふと…バジルがグラスの顔をじー…っと見ているのに気付いた。



「バジル、どうしたの?グラスの顔がなんか変?」


「変じゃありません!…で、なんか付いてんのか?」


「あ、いや…その…」


 グラスが自分の顔を触りながら問い掛ける。どうやらバジルは無意識だったらしい、言葉に詰まっていた。


「えっと…グラスは、箏の出身なんですよね?」


「多分だけどね。それがどうかした?」


「その…よく見るとグラスって、スクナ殿下に似てるな〜…と思いまして…」


「「「え?」」」


 今度は僕とロッティも、グラスの顔を凝視した。彼はたじろいだが、なんとか堪えている。



「………そうかもしれないわね」


「え、そう?そんなに似てる…?」


 少那の顔を思い浮かべるも…言うほど似てるようには見えないなあ。僕がおかしいのか…?それとも…

 

「ねえロッティ、バジル。少那の侍従の咫岐は知ってるよね。彼の顔はどう思う?」


 という僕の言葉に、2人は唸った。


「そういえば……彼も眼鏡を外したら、見分け付かないかも…」


「です、ね…」


 やっぱり。多分2人は、アジア系の顔の見分けが付いていないだけか。


 もう一度グラスをじっと見つめる。すると彼は頬を染めてぷいっと横を向いてしまった。その横顔とか…



「僕としてはさあ…グラスは少那より、木華に似てると思うんだよねえ」


「「「は?」」」


 は?って、酷いなおい。だってそう思ったんだもん!特に目元がそっくり、並べて見たら分かるって!

 その後も和食そっちのけで、グラスについて3人で盛り上がる。主に顔。




「もう、おれの顔が誰に似ていてもいいでしょう!

 それより来週劇をするんだから、そっちの練習を始めましょうよ!」


 ありゃりゃ、女の子に似てるなんて言ったからグラス怒っちゃった?

 …いや、違うわ。単に照れてるだけっぽい、かーわいーい。


 と言ったら本当に怒っちゃうので、揶揄うのはやめておこうっと。

 


 そうそう、今グラスが言ったように、僕らで孤児院の子供達に劇を披露するのであーる。

 どうせなら誰も知らない話がいいなと思い、最初はシンデレラを提案したのだが…



「このシンデレラは貴族の娘なの?お城から舞踏会の招待状が来るんだもの」

「12時に魔術が解けてドレスは消えてしまうのに、ガラスの靴は残るのですか?」

「ガラスの靴だけが頼りって…足が合う女性、いっぱいいると思うんですけど…」

「そもそも国母となる女性を顔だけで決めるなんて…この国大丈夫?」

「この王子、他に美しい女性が現れたら簡単に浮気しそうですね」

「甲斐性無さそう」


「だーーーーー!!!!シンデレラやめやめ!!」


 そんなモン誰もが疑問に思ってるんだよ!!その上で楽しんでんだよ!!と言っても伝わるまい。


 という訳で、夢のある童話…………出来れば殺人事件の無い物語から選びたい。

 白雪姫は王妃が姫殺そうとするしー…赤ずきんとか?人魚姫は…ラスト変えなきゃ駄目か?


 僕が片っ端から提案してあらすじを語るも、ピンとくる話が無いなあ…。

 バジルとグラスにもソファーに座ってもらい、4人で意見を出し合う。




 うーん…。行き詰まっていたら、バジルがこう提案してきた。


「夢のあるお話がいいんですよね?最初のシンデレラを、設定からアレンジしてしまえばいいのでは?」


 アレンジか…。まあ、虐げられてきたお嬢様が最終的に幸せになるってのは王道だよね。

 誰も不幸にならないし…原典では継母と義姉達酷い目に遭うけど。



「よし!じゃあ基本の流れはそのままに、僕ら流のアレンジしていくぞー!」


「「「おーーー!!!」」」






 …………そして出来上がった新シンデレラ。チェケラ!!




 ナレーション:バティスト

【昔々、とある国に。シンデレラという伯爵令嬢がおりました。シンデレラは幸せに暮らしていましたが、ある日母を不幸な事故で亡くしてしまいます。

 それから数年後、父が親戚の紹介で再婚することとなりました】



 父親:オーバン

「シンデレラ、今日から新しいお母さんが来るんだ。お姉さんも2人いるから、仲良くするんだよ」


 シンデレラ:シャルティエラ

「ねえなんで僕がシンデレラなの?ロッティのほうが…あ、はい。真面目にやります。

 わあい、優しいお母様とお姉様だといいなあ!」



【(切り替え早いなこの父娘…)そうして新しく家族になった母と姉ですが、最初は優しかったものの次第に父親の見ていないところで、シンデレラに意地悪をするようになりました】



 継母:アイシャ

「なんで私が…こほん。シンデレラ!床の隅に埃が溜まっているわよ、ちゃんと掃除しているの!?(この家にメイドっていないのかしら?)」


 義姉1:シャルロット

「シンデレラ、朝食はまだなの?私達を飢え死にさせる気!?」


 義姉2:モニク

「(シャルロットお嬢様ノリノリ…)それが終わったらお洗濯よ、早くしなさい!」


 シンデレラ

「うう…ごめんなさい、すぐにやります…!わっせ、わっせ」


 父親

「おや…どうしてシンデレラはそんな姿で、掃除をしているんだい?」


 継母

「オホホホホ、シンデレラは着飾るのは嫌いみたいなの。それに進んで家事をしてくれるのよ」


 父親

「そうなのかい?偉いな、シンデレラ(んなワケあるかい)」



【毎日毎日召使いのようにこき使われるシンデレラ(これ気付かない父親が悪くね?)。

 ある日シンデレラの家に、お城から遣いの者がやって来ました】



 使者:グラス

「15歳以上で伯爵家以上の未婚の女性を、王子様の妃候補としてお迎えする事になりました。

 この家には3人の娘がいるはず、どうか来ていただけますか?」


 義姉1

「はーい!私以上に王妃に相応しい娘はいないわ!」


 義姉2

「あら私だって!お姉様には負けないわ」


 使者

「…おや。もう1人はどちらに?」


 義姉1

「ああ、いいのよあの子は。醜くてマナーもなっていない、とてもお城に上がれないわ」


 使者

「いいえ、条件を満たす娘全て呼ぶようお達しです。明日お迎えに参りますので、お支度をお願いします」



【使者はそう告げ、屋敷を後にします。その時ふと見上げみれば。屋根裏部屋の窓、肘を突いて外を眺める娘の姿がありました】



 使者

「あれが末っ子か。確かに妃には相応しくな…」トゥンク…



【これまで沢山の美しい姫君と顔を合わせてきた使者ですが、何故かこの見窄らしくも儚げな少女から、目が離せなくなってしまいました】




 シンデレラ

「え、ちょっと待って?なんか使者とのフラグ建った?まあいいか…。

 わたしもお城に行きたいけれど…ドレスなんて持っていないわ。行っても恥をかくだけ、諦めて…」


 ネズミ:ネイ

「諦めちゃダメっす、シンデレラ!ほら、奥様が遺したこのドレス。これをいい感じにリメイクするっす」


 小鳥:フェイテ

「それに、いい感じのアクセサリーも集めました。これで貴女は、誰よりも輝けますよ」


 

【ドレスが無いと嘆くシンデレラ。そこに彼女の友人であるネズミと小鳥が素敵なドレスを用意してくれたのです】



 シンデレラ

「わあ…!ありがとう!これでわたしもお城に行けるね!」


 ネズミ

「ばっちり王子のハートをぶち抜いてくるっすよ!」


 

【しかし喜びも束の間、ドレスが姉達に見つかってしまったのです】



 義姉1

「まあ…どこからこんな素敵なドレスを手に入れたのかしら?シンデレラには似合わないわ、私が貰ってあげる!」


 義姉2

「本当だわ。じゃあ私は、この綺麗なアクセサリーを貰いましょう。ふふ、王子様に会おうだなんて生意気な子だわ」



【なんと姉2人は、シンデレラのドレスを盗んでしまいました。

 この日もシンデレラは夜中まで家事をやらされ、クタクタになって屋根裏部屋に戻れば…】



 シンデレラ

「……あれっ!?ドレスが無い…なんでえ!?

 うわーーーん!!今から新しく準備する時間なんて無いよう!!」


 ネズミ

「あわわ…!どうしようお兄ちゃん!?」


 小鳥

「うーん…奥様のドレスはあれしか残ってないし…!」



 魔術師:バジル

「泣かないでシンデレラ!僕がなんとかしてあげる」



【泣きじゃくるシンデレラ、頭を抱える2匹。そこに、1人の少年が姿を現しました】



 シンデレラ

「誰…?」


 魔術師

「通りすがりの魔術師です。…君のお父様と、お母様には生前お世話になったんだ。どうかその恩を返させてください」



【魔術師の少年が杖を振ると、なんという事でしょう。シンデレラのつぎはぎだらけのワンピースが、豪華なドレスに早変わり。ヘアセットとメイクのサービス付き】



 魔術師

「この魔術は、24時間しか保たないんだ。だから明日の12時には解けてしまう、それまでの間に王子様とお近付きになるといいよ。

 そしてこの…お父様から預かってきたガラスのティアラ。これはお母様が、君が成人したら贈ろうとしていたらしんだ。これを付けて行くといい」


 シンデレラ

「わああ…!うん、わたし頑張ってくるね!」




【(この格好でどうやって寝たんだろう…)次の日の朝、使者が3人を迎えに来ました】




 使者

「…末娘はどこですか?」


 義姉1

「ああ、あの子は体調不良で…」


 シンデレラ

「はいはいはーい!ここにいますよ、連れてってー!」



【大慌てで降りてきたシンデレラ。その美しさに…誰もが目を奪われてしまいました】



 使者

「……はっ!では、参りましょうか。王子様がお待ちです。お手をどうぞ」


 シンデレラ

「え…あ、はい。ありがとうございます…お優しいのですね…」


 義姉2

「ちょっとアナタ?私達のことはエスコートしてくれなかったわよね?」


 使者

「参りましょう!」


 シンデレラ

「お父様ー!シンデレラ行ってきます!

 …あれっ、お姉様達。そのドレスにアクセサリー…」


 義姉s

「参りましょう!!!」



【こうしてお城に向かった娘達。そこには同じく条件を満たす娘が、国中から20人ほど集められていました】 



 使者

「では王子様。皆様と交流をなさってください」


 王子:エリゼ(特別出演)

「いや待って?なんでオレなの?」


【バジルもグラスもフェイテもやりたがらなくて】


 王子

「騎士は駄目なのか?じゃあパスカルにしろよ!あいつなら喜んで」



【王子様は沢山の美しい娘達と言葉を交わしますが、どうにも心を揺さぶられる姫君はいませんでした。

 そして最後に、シンデレラの番がやってきたのです】



 王子

「聞いちゃいねえ。はあ…この台本通りにやればいいんだな?えっと…

 おぉ…なんと美しい姫。どうかお名前を教えてくださいませんか?」


 シンデレラ

「わたしはシンデレラと申します」


 王子

「シンデレラ。どうか私と踊ってくださいませ」


 シンデレラ

「はい…喜んで」



【こうしてシンデレラと王子様は踊りました。何曲も、何度も】




 〜中略〜




【なんやかんやあって候補の姫君は5人にまで絞られました。シンデレラも最終候補まで残り、その日はお城に泊まる事に。義姉は帰らされた。

 しかしシンデレラに掛けられた魔術は、12時になると解けてしまいます。それをすっかり忘れていたシンデレラは…】



 

 シンデレラ

「ふふふ〜ん♪ねえネズミさん、小鳥さん。王子様とっても格好良くて素敵ね!あんな人のお嫁さんになれたら、きっと幸せだろうなあ…」


 ネズミ

「っす!……でもシンデレラ、本当にいいんすか?」


 シンデレラ

「何が?」

 

 小鳥

「王子様と踊っている最中も、お茶をしている間も。チラチラと使者のほうを見ていたじゃないですか」


 シンデレラ

「………そう、だった…?」



【お屋敷からこっそりついて来た2匹とおしゃべりに興じていたら…12時を知らせる鐘が鳴りました。その瞬間、術は解け…シンデレラは、元の侘しい姿に戻ってしまいました】



 シンデレラ

「あーーー!!!!忘れてた…!どどどどうしよう!?」


 小鳥

「い、一旦逃げましょう!このままでは不法侵入を疑われます!」


 ネズミ

「抜け道を案内するっす!こんな事態に備えて調べておいて良かった!」


 シンデレラ

「うわーん!王子様、また会いましょうね…!」



【こうして1人と2匹はお城から逃げ帰りました。ガラスのティアラを部屋に忘れて…。

 数日後、新聞を読んだシンデレラは…目を見開きました】



 シンデレラ

「お、王子様がけっこん…!?お相手はあの美人の公爵令嬢…!なんでえ!?君が一番美しいって言ってくれてたじゃん!!」


 義姉1

「あ、それ私も言われたわ」


 義姉2

「私もよ。誰にでも言っていたみたいね…それより、まだ掃除が終わってないじゃない!」


 継母

「それが終わったらお茶の準備よ!」


 シンデレラ

「うわーーーん!!!」



【シンデレラは王子様が迎えに来てくれるのを待っていましたが、一向に現れず…。

 当の王子様は去る者は追わず、王妃に相応しい品格、知性、美貌を持つ公爵令嬢を妻に迎え入れました。当然だよね。

 そしてシンデレラは相も変わらず、屋敷で使用人のようにこき使われる日々】



 シンデレラ

「ううう…酷いよう。適当に甘い言葉を囁いてその気にさせて…ぐす。

 こうなったら旅に出てやる!傷心旅行だ、どこに行こっかなー。食べ物が美味しい土地がいいなあ!お金はお父様から貰って…いかん、ヨダレ出そう」


 ???

「あの…」


 シンデレラ

「はい?」



【すでに王子様は頭の中から追い出し、世界中のグルメに想いを馳せていたシンデレラ。

 玄関の掃除をしていたら…なんと、お城の使者が訪ねて来たのです】



 シンデレラ

「あれ、使者様。まだ何かご用ですか?」


 使者

「その…これを。貴女の物ですよね?」


 シンデレラ

「それは…確かに私のティアラです。わざわざ届けてくださったのですか?

 あれ、でも…この姿でお会いするのは初めてですよね?よく分かりましたね」


 使者

「分かります。どれだけボロ布を纏っていようと…貴女の美しさは、少しも損なわれてはいないのですから」


 シンデレラ

「(サラッとディスられた…)まあ…そんな、美しいだなんて」


 使者

「…烏滸がましくも自分は、貴女が王子様に選ばれなくて良かったなどと安堵しているのです。

 王子様よりも先に…貴女に心を奪われてしまっていたから」


 シンデレラ

「え…それって…」トゥンク…


 使者

「(えーと…そっとティアラを頭に乗せて、跪き手を取って…)おれは王子の地位も美しさもありませんが、どうか…結婚していただけませんか?必ず、幸せにするとお約束します」


 シンデレラ

「……本当に、幸せにしてくれますか…?」


 使者

「はい。この命に懸けて!」


 シンデレラ

「…はい、よろしくお願いします!」




【……と、こうしてシンデレラはそこそこの幸せを手に入れて、使者といつまでも仲睦まじく暮らしたのでした。めでたしめでたし】






 ※※※






「…めでたしめでたし」



 劇が終了すると、子供達のパチパチと手を叩く音が響き渡る。まあまあの反応だね!

 やっぱあれか、小道具とか演出とか凝ったお陰かな?

 ちなみに会場は、公爵家の玄関ホール。孤児院は狭いからね。


 終わった後は、子供達と一緒にジュースとお菓子でパーティーじゃい。僕らはちびっ子に囲まれて、劇の感想を聞いてみる事に。



「ねえねえセレス様、どうしてシンデレラは王子様と結婚しなかったんですか?」


 そう聞いてきたのはアーティだ。彼女は何年経っても変わらず僕を慕ってくれているのだ。

 彼女の問いに、他の子(主に女の子)もなんでなんでと聞いてきた。それに答えたのはロッティである。



「男は顔と地位が全てじゃ無いのよ。それに今まで貧乏令嬢だったシンデレラが王妃様なんて、道のりが険し過ぎる!!

 それならどんな姿でも愛してくれて、お城勤めでそこそこ高給取りの使者のほうがずっといいわ。

 いいこと?顔とお金に釣られちゃダメだからね!男は甲斐性よ、誠実さよ!!」


「「おおおー!!」」



「夢無いなあ…」


 お菓子をつまみながら、エリゼがボソっと呟いた。ま、まあ…リアリティを追求した結果と言うか、ね?


「(でもフルーラが読んでる『メイドは見た!!』シリーズより遥かにマシだな…劇見せてやれば良かった)

 にしても、王子役をパスカルにしなかった理由が分かったわ。あいつは台本無視してシンデレラに求婚しそうだからな」


「やっぱそう思うよね!?」


 その様子が容易に想像出来てしまい、僕らは吹き出して笑った。すると子供達が「なんのお話しですかー?」と、また集まってくれるのだ。



 いつかの誕生日パーティーのように、お父様とバティストが楽器を演奏すると…子供達が思い思いに踊りだす。その中にはネイやモニクも混じり、本当に楽しそう。

 バジル達三人衆は、男の子に囲まれて大忙し。庭でかけっこ勝負が始まってしまった。

 それに子供好きなヘルクリスも、外で一緒に遊んであげている。さ、他の精霊(みんな)も行っておいで!




「セレス様、お久しぶりです!」


「おー、ミント!レナートも娘ちゃんも久しぶり〜。1歳になったばっかりだっけ?」


「はい。いやあ、子育ては戦争ですね…」


 僕とエリゼで楽しそうに遊ぶ子供達を眺めていたら、ミント達が挨拶に来てくれた。

 前からしっかり者のお姉さんだったミントだけど、もうすっかりお母さんだなあ…。


「そうそう、知ってますか?最近パセリに彼女が出来たんですよ〜」


「うっそ!てかセージはまだ結婚しないの?」


「はは…セージ、彼女が長続きしないんですよ。なんか理想が高いみたいで」


「はあ?どんなだよ、あいつの理想って」


 そうエリゼが聞くと、2人は顔を見合わせて笑った。


「それがですねえ。優しくて、無茶をするけど放っておけない…セレス様のよ」


「レレレナートさん!!!ミントも、変な事言うなっ!!!」


 うおっ!レナートの言葉を遮り、どっかからセージが飛んで来た。そのまま「なんでもありません!!」とニヤニヤしている2人を連れて去って行ったぞ。なんだったの…。





「……こうしていると、初めてコイツらに会った日を思い出すな」


「あ…そうだね。エリゼには沢山協力してもらったね。

 ……本当に、ありがとう。君には感謝しきれないよ」


「いいよ。オレも…こうしてあいつらが笑ってくれているのが嬉しい」


「…うん」



 その後も僕達は、楽しそうに過ごす皆を…時間がくるまで、ずっと眺めていたのであった。


 

劇のラストにパスカル乱入させようとしてやめた。


おまけ ラウルスペード家で白雪姫を演じた場合


 王妃:シャルティエラ

「鏡よ鏡…世界で1番美しいのは誰?」


 鏡:グラス

「はい…それは王妃様です!」


 王妃

「おいコラ」


 End



 人魚姫開幕


 人魚姫:シャルティエラ

「あっ!あんなとこに王子様(※パスカル)が落ちてる!!なんて格好いいのかしら、助けて恩を売って結婚してもらお」


 人魚姫の姉:シャルロット

「くたばれ王子ッ!!!貴様さえいなければ妹は!!!」ザシュッ


 王子

「俺まだ何もしてないーっ!!」


 人魚姫

「お、王子様ーーーっ!!!」


 人魚姫閉幕



 不思議の国のアリス


 白ウサギ:バジル

「大変だ、遅刻しちゃう!急げ急げ~っ!」


 アリス:シャルロット

「お姉様と一緒に外でお勉強、とっても楽しいわ!あん、ページ捲るの早いわお姉様♡」


 白ウサギ

「追い掛けてくれないんですかあーーー!?」


 冒険が始まらない



結果 全て起承転結の起で終わる

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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりに仲良しなセレスとロッティーのお話を読めて、ほっこりしました(*´∀`)♪ 本家の『シンデレラ』へのマジレス、爆笑しました! 確かにあの王子、ちょっと残念…笑 そこそこの幸せをGET…
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