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内緒にしなきゃ!  作者: 雅也
9/10

9話


                 9


 耀が待ちに待った 8月25日が来た。

 この日を最初は待ち遠しく思っていたが、あのコンビニの件以来、耀は優太に依存することが全く無くなった。


 自信を持って、優太との関係が揺るぎないものと悟った時に、もう誰が優太に言い寄って来ても、動じない自信があった。



                 ◇



「お母さん、約束の日が来たから、もう一度みんなで今後の事の話合いがしたい」


 母親の朱里は困ったような顔をしている。 その顔も数日前からだった。


「まさか、耀が余裕でクリア出来るとは思っても見なかったわ、だから、私も一人では決めかねないから、耀の言う通り、これはまた両家で家族会議ね」

 コレには耀が不服そうに言う。


「え~~、だって、やり切れば良いって、みんな言ってたじゃない」

「でも、あなた達の一生の事なのよ、心配しない親はいないわ」

「でもお~...」


 耀が不服そうに頬を膨らます。


「じゃあ明日土曜日だから、明日話し合いをしたい」

「そんな急に言っても、ウチのお父さんは良しとしても、優太くんのご両親の都合もあるし、今ここでは決められないから...ねえ」


 何故かその事に自信を持って、耀が朱里に言いかけてきた。


「あのねお母さん、実は、もう優太のご両親の都合もついてもらっているの、うふふ、だから良いでしょお~」

「ええ? 」

 これには朱里が、開いた口が塞がらない気分だった。


「準備良すぎよ、もう! 向こうのご都合も考えたの?」

「もちろん! 優太に協力してもらったから」

 また呆れる朱里。


「え~! もう。 じゃあ取りあえず、今から祐美に私から連絡してみるから、いいわね」

「は~い」

「こんな時だけいい返事ね、全くもう!」



                ・・・・・



「もしもし祐美?」

『もしもし朱里、聞いたわよ、耀ちゃん見事達成なんだってね』

「そうなの。 でね...」

『あ~~大体は優太から聞いてるから、明日の件でしょ?』

「そうなのよ、全くごめんね~、ウチの娘が」


 取りあえず謝る朱里。

『いいからいいから。 で、何時にする? うちは明日開けといたから』

「うわ! 重ね重ねごめんね、ホント。 で、こういう決まりごとは、午前中が良いと思うの、だから今度はこっちの家で、10時ってのはどう ?」

『了解よ、優さんにも言っとくわ。 だけど、本当にやり遂げたわね、耀ちゃん』

「全く、まさかやり遂げるとは思いもしなかったから、驚きよ、私も淳も」


 少し溜息をついてから、祐美が。

『耀ちゃんって、本気なのよね』

「本人はもう、いつ婚姻届け出そうかな~ なんて、気楽な事を言ってるわ」

『優太はね、 そりゃ嫁にするなら、耀に決まってるけど、何だかな~ なんて言ってるのよ』

「優太くんも、その気にはなってくれているんだよね、ただ、時期が...って言い方よね」

『そうそう。でもね、先月私たちが、軽い気持ちでOK出しちゃったから、そもそもいけなかったのよね』

「あちゃ~、って感じよね。 今更ながら、軽かったって、反省しているわ」

『ま、とにかく明日ね、本題は』

「そうね。 ゴメンね、いきなり電話して、それじゃあ明日待ってるから」

『いいのいいの、じゃあ明日』


 電話を切った後、耀が朱里に寄って来て。


「どうだった? 明日でOKでしょ?」

「もうホントに、段取りの良い事で」

「褒めてもらってうれしいな~」

「褒めて無い!」


 以上が女性陣のやり取りだった。



                  ◇


 明けて土曜日。 


「こんにちは、お邪魔します」

「は~い、いらっしゃい、お待ちしてました。 さあ上がって下さい」


 今日は小川家に、佐藤家が行き、先月に交わした件の話をしに来た。

 ウキウキしている耀に対して、親たちは、神妙な表情になる。 コレからの話し合いの結末が、どうなるのか、不安でたまらない。


 みんながリビングに入ったところで、話はいきなり始まった。


「今回は、私達大人が甘く見ていた様で、耀がこんなに辛抱強い子とは、思っても見なかった事が、知っての通りの結果になりまして、その事についての相談と思っていますが、どうでしょうか?」

 耀の父、淳が口火を解く。


「全く小川さんの言う通り。 耀さんが辛抱したのは、コレもひとえに優太に対する耀さんの気持ちが、一途であった事になります。 これは、優太の親にとって大変嬉しい事と思っています、ありがとうございます」


「いやはや、恐縮してしまいます」


 やり取りを聞いていた耀が、居てもたっても居られずに、口を出す。

「お父さん、挨拶は良いから、早く本題に入って」


 コレにはさすがに淳も。

「まあ待ちなさい。 順番に決めていくから」

「はぁい」

「ホントに言い返事ね」


 本題は優から言い出した。


「今回の二人の条件付きの結婚ですが、はっきり言って、私は賛成いたしかねます」

 続いて、祐美も頷き。

「私も主人の意見に賛成です」

「やはりそうですか...、ですよね」

「誰がどう見ても、早いと思うわね」

 コレには耀が不満そうに膨れた。


「ブ~~!! 何でよ! 大人って勝手じゃない。あんだけ約束しときながら、今更 ダメ でしたなんて...、だったら、駆け落ちするから」

「何言ってる、そんなのもっとダメだ、耀」

「駆け落ちなんて、軽く言うもんじゃあないわよ。 第一に、どうやって生活するの?」

「こうなったら、どうにでもするから」

 コレにはさらに淳が言い宥める。


「世間はそんなに甘くはない。 まして、高校生なら尚更だ」

「そんなのどうにでもするから」

「どうにもならなくなって、泣きついてくるのが目に見えているぞ」


 涙目になる耀、そんな中、優太が耀を説き伏せる様に言う。

「耀、オレは何も今すぐに結婚しなくてもいいと思っている」

「優太も、大人の意見に飲み込まれちゃうの?」

「そうじゃない」


 耀の意見を否定する

「じゃあ何? 今まで我慢して頑張って来た私の苦難の結果が、親たちの嘘なの? それ酷い!ありえない、そんなん絶対に、 イヤ!!」

「だから、そうじゃないって、耀」

「じゃあ何なのよ、はっきり答えてよ優太」


 少し間を置いて、優太が両親たちに向かい、話し出す。


「聞いて下さい、お父さんお母さん達」

 これまで黙っていた優太も、この一ヶ月の間、毎日見ている耀の様子を見て、親が出した条件を、必ずクリア出来ると見た優太が、考えて出した答えが。 


「確かに、結婚は早いと自分も思います」

「ゆうたぁ~...」

「耀、黙って聞いてて」

「......」


「前にも言った通り、オレは結婚するなら、絶対に耀と決めています。だけど今まさに受験を控えたこの時期に、するなんてのは、どう考えてもおかしい。 それは十二分にオレは分かってます。でも、今まで耀が頑張って来た約束が、親の意見だけで、簡単に覆るのも、どうかと思います。どうですか?」

「そうなんだが、一気に結婚ってのが、どうも同意できないんだ」

「だったら、耀のこれまでの態度と、最近の耀の態度ってどうですか?」


 「最近の耀の、何が何でも優太くんに会いたいと言うのが無くなって、落ち着いてきたかな」

「そうなんです。 オレも、最近の耀って、ただ 好きだけで結婚したいって言うのではなく、周りも見ながらの一途になってくれたんです。 コレって、すごい進歩と思います」

「だって、優太の事、信じてるもん」


「ありがとう 耀。 オレも揺るぎないから。 でも、両親の意見はしっかり聞こうね」

「うん。 うれしいよ 優太。」

「...、どうです? 自分の事ばっかりだったのに、最近は自分たち以外の事も視野に入れる余裕が出てきたんです、お父さんお母さん」


「「「「......」」」」


「どうしたの? みんな?」

「......」


「......」



「耀 変わったな、ここ一ヶ月で」

「そうね、段々大人になってきているのね、耀」


 親たちが、最近の耀の変化に感心している。


「どうでしょう、オレ達の結婚はムリでも、一緒に暮らすと言うのはどうでしょうか?」


この優太の意見に、大きく目を見張る 耀。


優太の発言に、祐美が問う。

「何が言いたいの? 優太」

「母さん、ハッキリ言うね」

「いいわよ」


 一呼吸おいて、親たちに向かい。


「オレと耀で、同棲したいです!」

 コレに耀が反応した。

「ゆうた! それって...」

「だって、親たちが結婚はダメって言ってるだろ? だったら、同棲はどうかな? と思って」

「う、嬉しい...。 嬉しいよ~、ゆうたぁ~」


だが、それには朱里が言い返す。


「結局二人で暮す事に、変わりがないじゃないの? 優太くん」

「違うんです」

「どう違うの? 説明して頂戴」


 優太が、淳と朱里向き直って、思っている事を言う。


「佐藤家の2階で同棲したいんです。 オレの親の監視の中で」


「「「「...!!!!...」」」」

 コレには両家の親が、驚いた。 


 耀の努力を無駄にしたくない、そう思っていた優太の、考えぬいた提案だった。



「どうでしょう? 折角頑張った耀に、全くの労いも、褒美も無いなんて、いくら何でも可哀そうでしょう? だったら、こっちも条件付きの二人暮らしと言うのも、考えてくれてもいいでしょう?」


「う~~ん。 そう言う事もありかな? どうだ朱里」

「え~~っと...。 そうねぇ~...。 まあ、祐美たちが一緒なら、不安は無いけど、二人暮らしってのには、程遠いんじゃないかな? 例えば毎食親と一緒になる訳でしょう?」


「あ、そこは大丈夫です」

「どういう事かしら? 優太くん」


「ウチ、2世帯住宅なんです」

「「!!」」


 そうなのだ。 佐藤家は一階と二階、もともと今の親は2回に住んでいて、祖父と祖母が一階に住んでいたから、2階だけでほぼ生活する事が出来る。

 今は、祖父母共に、二人で気楽に暮らしたいと言って、すぐ近所にある、二人暮らしのマンションに 一昨年に引っ越している。

 一階が空いたので、今は優太の両親がそこに住み、2階は3部屋と、小さいながら、シンクがあり、トイレ 小さなお風呂まであるのだ。

 つい2年前まで使っていたので、ちょっとのメインテナンスで、十分使えると言う訳だ。


「どうかな? 父さん母さん。 二人だけの同棲よりも、親との半同居って感じになるけど、許してくれないかな?」

「私からも、お願いします」


 耀が親たちに頭を下げる。 真剣だ。

 すると、朱里が淳に向けて微笑みながら言う。


「もう許してやったら? こんなに二人が真剣になっていたんだから」

 いささか不服そうな表情で、溜息をつきながら淳が言った。


「そうだな...。 優太くんの耀に対する気持ちは本物だし、監視の目がある同棲と言うよりも、同居になるからな......。いいだろう、それなら」

「主人もどうやら折れたみたいなので、そう言う事にしてもらえるかしら祐美」


 祐美が優に向かって、微笑ながら同意を得ようとする。

「私はそれなら許しても良いと思うわ、どう? 優さん」


「そうだな、俺たちの監視が効いている中での同居と言う事なら、いいだろう」


「ありがとうございます!」

 耀が双方の両親に頭を下げて、お礼を言った。


「父さん母さん、認めてくれて、オレも嬉しいよ、ありがとう」


「ただし。 羽目を外さないように、監視はしてるからな、その事は肝に銘じておく様に」


「「はい!!」



 という事で、優太と耀の監視付き二人暮らし? が決まったのだった。







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