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内緒にしなきゃ!  作者: 雅也
7/10

7話


                  7


「何か、名残惜しそうね、耀」

「...」

「どうせ明日も午前中は勉強会なんでしょ? 一晩寝たら、すぐに会えるわよ」

「うん」


 少ししょげる耀。


 夕方になり、優実の運転で、朱里と耀を車で送っている所だ。 佐藤家に来るとき、朱里は祐美に迎えに来てもらっていた、なので、今は送っている所である。

 3人と言いたいが、耀が寂しがるので、優太も一緒について来ていた。


「ちょっと~、後ろのお二人さん、あまりイチャつかないで」

「どれどれ...」

 二人の母親が、後部座席の二人をまじまじと見る、優実は運転なので、ルームミラーをチラっと見る。 


「あれまあ、しっかりと手を繋いで、こりゃ参ったわ~」

 と、呆れ声で言う朱里。




 その後、朱里と耀を送り届けて、祐美と優太は夕食の食材を求めて、一度スーパーに寄り、家へ帰った。


 家に着くころには、辺りは薄暗くなっていて、車庫に車を入れようとすると、いま車を入れたばかりの父の優が車庫から出てきた。

 祐美も隣に車を止め、優に


「お帰りなさい、お疲れ様」

「ああ、ただいま。 なんだ、優太も一緒だったんだな」

「ええ、さっきまで 耀ちゃんと朱里が来てたの、さっき送って来て、その帰りにスーパーに寄って来たの」

「そうか。 取りあえず家に入ろう」


 3人で家に入る、優太はスーパーの袋を持って家に入った。



                  △


「「「いただきます」」」」


 一家団らんの時。

 家族との楽しい食事が、一日の疲れを癒してくれる。


 食べ始めてすぐに優太が両親に言う。



「オレ、この夏休みの間だけ、アルバイトしようと思っているんだ」

「ほう」


 優が返事をすると、祐美も聞いてくる。

「お小遣いが足りないの?」

「いや、そう言う訳じゃあないんだけど。 この夏休みって、朝は必ず勉強と学校からの課題をやっていて、午後からが普通にヒマになっちゃうんだ、だから その余った時間だけ利用して、バイトしようと思ってるんだ」

「社会勉強ってやつだな」

「そう取ってもらっていいかな」

「でも、今まで一度もバイト経験無いのに、大丈夫かしら?」

「祐美、やらせたらどうだ? 俺は優太にとって、いい経験になると思うが」

「父さん ありがとう」


 祐美がちょっと考えて。

「そうね~、いいかもしれないわね。一度働いてみるのも」

「でも、優太は一応 大学進学なんだよな」

「うん、そのつもりで毎日 午前中は4人で集まって勉強会してるんだけど」


「そうか...。 な、いいじゃないか、なあ 祐美」

「そうね、いいかもね」


「ありがとう、父さん 母さん」

「やるからには、中途半端は無しだぞ」

「うん、じゃあ、明日、学校に行って来て、アルバイト届け用紙出してくる」

「あら、学校って...」

「大丈夫、休み中でも部活でウチのクラスの担任いるから、それに親に承諾貰わないといけないし」

「その用紙はどうなんだ?」

「もう、貰って来てあるんだ、だから夕食後に、承諾書渡すから」

「段取りの良いヤツだな」

「これくらいはね」


「「「あははは...」」」

 

 夕食後、承諾してもらった用紙に、アルバイト先を記入して、明日先生に提出するだけとなった。


「へえ、ココから近いじゃないコンビニ」


 優太は家に近いコンビニに、話が通してあったので、親から 手筈てはずが良いなと、褒めけなされた。



                  ◇



「なんでなんで?! なんで勝手に決めちゃうの? 優太!」


 ここは耀の部屋、今日は週末なので、勉強会は無い。 だが耀の両親は在宅中だ。



 耀がご立腹である。


 一人で決めたこの夏のアルバイト。 耀には話してなかった、と言うのも訳があった。


「耀、聞いてくれ。 コレには訳があるんだ」

「何! 私よりも優先する訳って。 まさか、私の事 キライになったとか、飽きたとか...、そんなんイヤだからね、優太」


「おいおい! ちょっと待てよ。 オレがいつ耀をイヤになったって言ってるんだよ」

「だったら何よ!」

「大きな声を出すなよ」

「出ちゃうわよ、何でよ 言ってよ優太」

「分かったから、大声出すな」


「う、うう...」


 優太が宥める様に言い始める。


「俺がバイトをする事にしたのは、別にお金が欲しくってやる訳じゃあないんだ」

「分からないよ」

「だろうな。 で、オレは耀が嫌いになったとか、飽きたとかじゃなく、今よりも距離を取ったらどうかなと思ったんだ」

「ま、まさか、優太...、他に好きな人とか出来たの?...」

 少し涙ぐむ 耀。


「...な訳ないだろ? オレ今だって耀にキスしたいくらいだし、それ以上だってしたい、でも...でも、今のままじゃあオレ達は恋愛と言うよりも、執着になってしまい、お互いに良くない方向に向かってしまうんじゃないかと、心配なんだ」

「私の気持ちはどうなるの? 私だって、優太と今以上の関係になりたい、エッチだってしてもいいと思っているのに、どうしてなの?」

「!......。深く考えるな 耀。 何も変わらない、ただ、会う時間が少なくなるだけだ」

「だから、そんなのヤダ!」

「そう言う我儘が、執着につながるんだと思うんだ。だから、この夏休みの間だけは、言い方が悪いが、今よりも距離を取るって言う事をオレは言いたいんだ、分かってくれ」


「うわ~~~ん! 優太のバカ~~!!」

 堪えきれずに、耀が大声を出して泣き出した。


「うわ、無くなよ~、俺たちのためだぞ」


「うわ~~ん!」



 大きな鳴き声を聞きつけた耀の両親が、部屋に駆け付けてきた。


 部屋に入った両親が、優太に向かって激しく怒る。


「優太くん、君はウチの娘を泣かしたのか、なんでだ? 事によっては許さんぞ!!」


 父 淳の声が怒鳴り声になろうかと言う程の大声だ。

 しかし、母親の朱里は冷静に、優太に聞いてくる。


「優太くん、何があったのか話してくれない? 耀も 泣き止みなさい」


 少しして、耀が落ち着いてきた頃、朱里が再度 聞いてきた。


「話してもらえる? 優太くん」



「はい。 実はこの夏休み、勉強会が終わった午後から、オレこの休み機関だけ、バイトをする事を耀に話していたんです」


 それから、先ほどの二人の経緯を両親に話した。

 すると、淳から思いがけない言葉が帰って来た。


「なるほど、そう言う事か。 私はまた別れ話かと思ってしまったよ、こりゃ早とちりだったね、すまん」

「いえいえ、オレの方こそすみません」


 今度は朱里が話始めた。

「そうね、最近の耀って、明らかに優太くんに執着し始めていると、私も思うわ。 その自覚が耀には無いみたいで、まさに恋は盲目ってのに、なりかけていると思うの、だから、優太くんと、少し今よりも、距離をとるっていうのは、二人にとってはいいことになると思うのよ、分かってる? 耀」

「いいじゃない、好きなんだからベッタリしていても」

 コレには朱里が否定をする。

「だから、それよ。 そこが相手を後々に迷惑を掛ける事につながるのよ、分からない?」


 淳が不思議そうに朱里に聞く。

「何でだ?朱里。 好きならいいんじゃないか?」

「あなたも、耀がストーカーになってもいいの?」

「それは...」

「でしょ?」


 朱里が今度は耀に向かってハッキリと言う。


「耀、このままじゃ、本当に 優太くんのストーカーにならないとは言えないかもよ、今なら優太くんの言う事を聞いて、少し距離を取りなさい、何なら今からひと月、勉強会以外で優太くんとは会わない様にしなさい」

 キッパリと言う朱里、だがこれには耀も言い返す。


「何でそんなに私達を離したいの?」

「だ、か、ら、 今言ったじゃないの、分からないの?」

 そこで、優太が耀に向かって。


「分からないか? 今の耀じゃ、この先の結末が何となく見えてるんだ。 オレだって苦しい、だって、オレにとって耀は、この世で一番の女性と思っているんだから」


 少し黙った耀が、次に放った言葉に、ココに居る全員が仰天した。


「じゃあ...、じゃあ、それ一ヶ月我慢したら、わたし優太と結婚する」


「「「!!!......」」」


 コレにはみんな仰天である。


 暫く間が開く。


「耀、何を言ってるのか分かっているのか?」

「だって、一ヶ月我慢したら、ご褒美あるんでしょ?」

「ご褒美って...」

「ご褒美あるなら、わたし頑張るから」


 これには他の3人があっけに取られる。 それに対応したのはやはり母親の朱里だった。


「いいわよ!」


 男性陣が見合って、素っ頓狂すっとんきょうな顔をしている。


「やった~!」

 大喜びの耀であるが、結婚は一人では出来ないので、朱里は優太に聞いてみる。


「どう? この条件で、見事に耀がやり遂げたら、考えてくれないかしら、優太くん」

「おいおい!、お互い18歳で結婚って、朱里、普通じゃないぞ」

「そうですよお母さん、オレ達これから大学受験だって言うのに」

「そうだぞ、朱里」


「あら、優太くん、お母さん だなんて、もう意識してるのね、結婚を」


「あ!」


「どういう事だ優太くん、説明したまえ」

「お父さんまで...」


「!!...、お、お父さんだと?...、な、何か、息子が出来たみたいで、う、嬉しいか...な」

「ほら~、あなたも男の子が欲しかったって言ってたじゃない」


 何か段々と、変なペースに向かっている雰囲気に、優太は戸惑っている。


「で結局、どうするんですか?」

 優太が両親に聞いてみる。


「取りあえず、今の耀では一ヶ月なんて到底無理だから、その条件はOK出してもいいんじゃない?ねえあなた」

「そう...だな、多分持たないだろうからな」

「じゃあ、いいんだよね、やった~、優太、覚悟してなさい。うふふ....」


 一度 耀を見てから、両親を見て、優太は言う。

「でもお父さんお母さん、オレの両親の意見も聞かないと、返事が出来ません、だから、一応この件は保留でお願いします」


「確かにそうね、祐美とご主人の意見も聞かないと、ダメよね」

「分かってもらえましたか」


 取りあえず、分かってもらえて、良かったのだが、話が結婚まで進むとは思いもつかなかった。


 夕方になり、優太は家に帰ったが、両親に小川家であった事を報告した。

 それを聞いた祐美が特に反応した。


「あれ、やっぱりね。 耀ちゃんって、最近優太にベッタリだもんね。おかしいとは思っていたわ。 でも、結婚なんて、そこまでは私も考えていなかったわ」


「18歳で結婚って、それについてはどうも賛成できないな。耀ちゃんも、随分思い切った事を言うもんだ」

「だから、親に相談してるんだよ。 でもやっぱり、どう見てもおかしいよ、今の耀は」

「ベタ惚れされてるね~ 優太は」

「茶化さないでよ、母さん」

「うふふ...、でも、朱里たち両親がOK出したなんて、いいのかしら? ねえ優さん」

「オレに娘が居たら、許さないけどな」

「ま、普通はそうだよね 父さん」

「そりゃそうだが、今の優太だって親としては同じだぞ」


「でね....、」


 優太が改めて両親に聞く。


「耀の両親が、近々合わないかって言ってるんだ。 どうかな?」

 一瞬の間を置いて。


「そうね、一度会って話さないといけないわね 優さん」

「どのみち、一度会わなければと思っていたんで、良い機会じゃないか?」

「分かった。 じゃあ、日程を決めようか」



いよいよ佐藤家と小川家の両親が合うと言う話になって行った。




 これまでお読み下さった方々、ありがとうございます。   内容も佳境になってきまして、この先が気になるところです。  この小説は、10話で取りあえずの完結なります。   あと3話で終えるので、もう暫くのお付き合いをお願いします。     

 

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