4話
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「ふんふんふ~ん...」
いよいよ夏休みに入った。
今日は、4人では無く、優太の家に耀が遊びに行くと言う、暑い夏の定番、涼涼お家デートだ。
先日から本格的に付き合い始めた優太と耀が、今まさに佐藤家に向かっている。 今日は二人なので、耀の気分がいいのか、鼻歌を歌っている。
「そんなに俺ん家がいいの?」
「ちがうよ。 優太と一緒なら、お寺でもいいんだよ」
「はは、手を合わせていいか?」
「拝まないで~」
なんと言う、低飛行な会話だろう。
「到着~」
「早く入ろ、優太」
「うん」
玄関の扉を開けて
「ただいま~!」
スリッパの音がして、母親の祐美が出てきた。
「おかえり~」
と言いながら。
「あら、今日は耀ちゃんだけなの?」
不思議に思った優実だが、何かを悟ったのか、次の一言が鋭かった。
「もしかして、二人 付き合い始めた?」
「「な...」」
「は~ん、どうやら図星ね」
「何で分かった?」
祐美が指を指して。
「ほら、二人 手繋いでるし」
言われて気が付き、パッと手を放す...が、すでに時遅しだ。
「さあさあ正直に言っちゃいな、白状しちゃいな、お二人さん」
言葉に詰まる二人。さらに祐美からは追い打ちがくる。 こうなると、祐美は面倒くさい人になる。
「言わないと、今からリビングで、2時間尋問ね、覚悟しなさい」
コレには二人、慌てて。
「はい、俺たち先日から付き合い出しました。オレと耀 共々、コレからよろしくお願いします」
「うん、よろしい。...で、耀ちゃん、ウチの王子はどう? 優しい? 」
「あ、はい。 とっても優しくて、勇敢で、頼もしいです」
「あらら。コレは嬉しい事を言ってくれるわね。良かったわね、優太。こんなカワイイ彼女が出来て」
「オレも、こんなカワイイ彼女が出来るとは思っても見なかったんで、初カノが耀で嬉しくて、毎日が楽しんだ」
「え? 優太、こんなにカッコいいのに、今まで彼女居なかったの?」
耀が不思議そうに優太の顔見る。
「そうなの。優太って、普通に器量はいいし、背も高い、なのに女の子に興味が無いと思っていたくらいに、彼女っていうか、女の子の友達が誰一人居なかったのよ」
「母さん、そんな言い方」
「そんな時に、いきなり勉強会だと言って、女の子が二人家に来た時は、私 赤飯炊こうと思ったわ」
「お母さん、そんな大袈裟な」
「あらぁ~。さりげなく 今、お母さんって言ったわね、耀ちゃん。 優太、コレはもう耀ちゃんに 名字を変えてもらうしかないわね、覚悟しなさい」
「母さん、耀の顔を見ろよ」
耀が真っ赤である。
「あら、カワイイ。 うちの嫁になる気、満々ね、 あ・か・る・ちゃん」
「......」
「そろそろ家に入らせてくれないか?」
「あ、ごめ~ん。耀ちゃん、ゆっくりして行ってね」
そう言って、優実がキッチンに戻って行った。
「ごめんな、ウチの母さん、あんな性格なんで、何か気に障ったか?」
2階にある優太の部屋に喋りながら向かう、すると、祐美がキッチンから顔だけを出して。
「後でお茶持っていくから、イチャイチャはその時だけは止めてね」
さらに顔が真っ赤になる耀。
「母さん! もう...」
「あはは、ごめ~ん! 後で持ってくからね」
「わかった」
一件落着になって、雄太の部屋に入る二人。
慣れたもので、耀はいつもの定位置に座る。
「ごめんな、母さんがあんなで」
首を横に振って、耀が否定する。
「優太のお母さん、何かさっぱりしていて、裏表が無い所がとっても好きだから、気にしないで」
「まあ、それが取柄かな?」
「うん。それに喋ってて楽しいし」
すると、いつの間にか、祐美が素早くお茶セットとトレイを持って、やって来た。
「なになに~? 私のウワサをしていたな~。悪口かな~...」
思いっきり否定をする雄太。
「耀が、とっても好きだとさ。良かったな母さん」
祐美が少し満足気である。 でも、不思議なのは、3つの容器がある。
「コレは何かな? 母さん」
「あ! それは、私も混ざろうと思って...、暫くは良いかな、聞きたい事もあるし」
「は~...」
優太が溜息を吐く。
「私はいいですよ。だって、お母さん楽しんだもん」
祐美の顔が明るくなった。
「ありがとう、耀ちゃん。 さすが優太のお嫁さん第一候補ね」
慌てて、優太が。
「まだ決まったわけじゃ無いぞ。母さん」
「え? そうなの? 優太」
と、耀が言うと。
「え!?」
「ええ?」
3人が、耀の一言に、動きが制止した。
「もしかして、耀ちゃん、優太のお嫁さんになる気があるの?」
間髪入れずに。
「はい!頼もしいですから」
と、耀。
「あかる~...、オレが恥ずかしいぞ」
「それで、小川家のご両親は、付き合い出した事を知っているの?」
「いえ、まだ両親には報告していませんが、優太くんの事は、大変好印象を持っています」
「優太。 あんた、向こうのご両親に改まってご挨拶行く時には、シャキッとしていきなさいよ」
「分かってるよ」
少し気になるのか、優実が耀に聞いてみたい事があったみたいだ。
「耀ちゃん。 ご両親って、お幾つになるの?」
少し考えてから答える。
「え~っと、確か当年取ったら42歳になります。母親が同級生なので、一緒です」
ここで、優太がコレからの展開のカギとなる一言を言う。
「確か、親父さんって 小川 淳 さんって言ってたよな、耀」
「うん、そうだよ。母さんは 朱里っていうんだ」
祐美の目が見開いた。
「え! その二人、同級生。 私の同級生よ」
驚きである。
まさか、佐藤家の母親と、小川家の両親が、同級生だなんて、おっどろき~、である。
「わわ...、朱里とは結構親しくした仲なのよ。しかも、淳くんと結婚していたって...、じゃああのまま付き合っていたのね、で、結婚したんだ。二人とも一途だったんだ。いいわね~」
「お母さん、ウチの両親とそんなに親しかったんですか?」
「うふふ...。 当時わたしと朱里と...うふふふふ」
何か怪しい祐美だった。
「あ~、でも久しぶりに会いたいわ~、あかり~」
懐かしんでいる祐美を見て、耀が。
「お母さんに聞いてみましょうか?」
「え? いいの? 耀ちゃん」
「はい。 ちょっと待て下さい」
そう言って、耀が可愛いバッグから、スマホを取りだし、すぐに母親に連絡する。 そうして。
「あ、もしもし お母さん」
『あら、どうしたの? 今日は優太くんの家に行ってるんじゃあないの?』
「うん、そうだけど。 ちょっとお母さんと喋って欲しい人が居るの、今っていい?」
『いいけど、誰かしら?』
「変わるから...」
そう言って、スマホを祐美に渡した。
「もしもし、朱里? 分かる?」
『あれ? この声は...え~っと...、あ! 祐美なの? そうだよね、祐美だ』
「そう、久しぶりね朱里」
『わあ~、何年ぶりかしら。 元気? でも何で耀の居るところに祐美がいるの?』
「へへ~ん。あなたの娘さん、実は私の息子と同級生だったの、しかも、あなたも知ってると思うけど、例の 勉強会ってあったでしょ? あの 4人の中の優太が私の息子なの」
『え!?...、驚いた~。 ビックリな展開ね、偶然って言った方がいいのかな? ウチの娘が世話になってる訳ね、ゴメンね』
「いいのいいの、ウチの息子も時々世話になったみたいで、ありがとうね。 でね、久ぶりに会わない?」
『いいねいいね、会おう会おうよ祐美、で今から?』
「はや! でもいいけど、この子たちも連れて行こうかしら、どう?」
『いいね~。 じゃあ耀に道聞いて、今からウチに来て、待ってるから』
「ちょっと待って。 今、 子供たちの意見も聞いてみるから」
一度顔からスマホを離し、優太と耀の意見を聞こうとした時に、優太が答えた。
「いいよ母さん。俺たちも耀の家に行くから、いいよな耀」
「うん、ウチで良かったらどうぞ」
「だって。 朱里 子供たち引き連れて、今から行くわ」
『おっけ~、じゃあ待ってるからね』
そう言って、お互いにで電話を切った。
「ま、そう言う事だから、さっさと行きましょう」
そう言ってた祐美は、たった10分で身支度とメイクを済ませ、車に優太と耀を乗せて、出発した。
(支度 はや!)
耀に道案内をしてもらい、道のり約5分で着いた。閑静な住宅街である。 普通に今風の戸建ての家だ。
(ちか!)
車の止まった音で、玄関から耀の母親 小川 朱里が出てきた。
祐美も、運転席から降りてきて、久しぶりの再会を手を取って喜んだ。