3話
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フードコートで、4人 まったりと会話しているうちに、夕方近くになって来た。 結構気の合う事に気が付いた寛子が、皆に言った。
「ねえ、またこの4人でこんな風に集まって、遊ぼうよ...どう?」
それにすぐ耀が反応した。
「それ賛成! わたし この4人って気が合うと思うの。それに、一緒に居て変に気を回さなくて済むし、第一 楽しいから」
それを聞いた 優太と祥が、それぞれ。
「いいなそれ。 オレも今日楽しかったし、これからもこんな風に集まれば、結構楽しく遊べるかも、な? 祥」
「そうだな。 オレも今日は楽しかった。一番驚いたのは、男子の高値の地位にある 寛子が、こんなに普通の女の子だったなんて、驚きだったからな」
ジロッと寛子が祥を見て。
「な、なによ。 私ってそんなにお高く留まっている風な女子になってたの?」
「男子達の中じゃな」
「憤慨だわ。 これでも学校では普通に過ごしているつもりよ? なのに...」
聞いてた耀が、ボソッと言った。
「やっぱ、綺麗な女の子って、高値になるのかな? なんか羨ましいな 寛子が」
それを聞いた優太が。
「寛子は器量が抜群に良いのは分かるぞ」
優太の一言を聞いて、耀が少し凹む。
「だけど、耀は結構カワイイからな。 キレイとカワイイがココに揃ってると言うのは、最強だな。しかも、そんな女子と一緒に居る俺たちが、他からの目から見たら、顰蹙モノだけどな」
「......優太、私 恥ずかしいよ~」
両手を顔に当て、俯く耀。
「あれあれ、やっぱりね。 もう!二人 付き合っちゃえば?」
「「......(憂 耀)」」
確かに、このフードコートに居ると、このテーブル席の4人が、結構目立っているように感じる4人だった。
「でもね、私たち高3なんだから、進学の事も考えて、一緒に勉強もしない? どうかな」
「それいいな」
寛子の発言に、優太が同意する。
「私も賛成。 だって、おのおの得意の教科があったら、お互いに補えるからね~。 第一に楽しそう」
そこで祥が。
「じゃあ、毎週土曜日の午前中に勉強して、午後から遊ぶってのは?」
「「それイイ!!」」
女性陣が声を揃えた。
さらに、寛子が。
「どうかな? 優太は」
少し考え、3人に聞く。
「4人が毎週ってのは基本で、必ず用事ってのは出てくると思うんだ、だから、強制的に4人ってのはどうかな?」
これには寛子が返答した。
「そうね、基本4人でって事で、用事があるときはそっちを優先にして、あとは連絡して集まりましょうか。いいよね? 優太」
「そうだな、それでいいんじゃないか」
「ヨシ!決まりだね」
「「「賛成!」」」
こうして、4人の付き合ってもいないカップルの、微妙に不思議な関係が始まった。
◇
4人が よく一緒に居る事で、周りの雰囲気から目線に変化が出てきた。
まず、不思議な目で見られる事だ。
マンガみたいに、高値の女子生徒が、今まで周りに男子の陰すら居なかったのに、いきなり二人も仲良くなったので、嫉妬の嵐がと思いきや、意外に、冷めたもので、実際にはそんなに変化はない。
まあ、実際なんて、こんなものだ。
朝のHR前、昼休憩、放課後には、必ず4人で集まって、話し合っている。
それを周りの目線は、最初こそ気にしていたが、だんだん慣れてくると、またやってるな くらいの感覚になり、今では、4人が話し合っている所に、他の女子が話しかけてきても、普通に応対するほど、日常になって来ていた。
毎週末の勉強会も、順調に進み、勉強会ともなると、それぞれの親は、進んで協力してくれて、4人が欠ける事は最初から無かった。 おかげで、地道に成績が上がって行った。
「へえ、今回の期末考査、4人とも二桁の順位になったのは、成果が出てるね、私なんか、親が喜んで、 『いい友達関係ね、コレからも続ければいいわね』 何てお母さんが言ってたわ」
耀の嬉しそうな顔が、今の成績を物語る。
「私の親も、同じような事を言っていたわね、だけど、ちょっと違うのは 『あなたの彼氏は、どっちなの?』なんて、しつこく聞いてくるから、困っちゃったわ」
毎週の勉強会は、4人の家に持ち回りで行っているので、4軒の親も公認の会になっている。
最初男子達は、女子の部屋に入るのに、抵抗があったが、回数を重ねているうちに、慣れてきた。 それでも大体は優太と祥の部屋が殆どだったが、図書館、ファミレス などで行う事も多くなった。
まさに今回は、ファミレスだ。
勉強会終了後、そのままこのファミレスで、4人昼食を摂る事になる。
「いよいよ夏休みだね」(寛)
「そうだね」(耀)
「この夏休みが終わるころには、学年順位が50位くらいにはなっていたいな」(優)
「オレも、50位以内には入っていたい、でないと、寛子には近づけないからな」(祥)
4人が、夏休みの目標を今の学力よりも、さらに上位を目指す事に、意欲を出した。
実際に、優太と祥は、学年順位が上がって来る自分たちを感じ、机の前に向かうのが楽しくなってきていた。
「じゃあ、とりあえず偏差値60を目指すようにすれば?」(寛)
「そうだな、まだ頑張れる余地はあるから、最終的には65くらいを目指そう」(祥)
「はは、65は夢の目標だな、でも60は越えたいな、そうすれば何とかなるかも」(憂)
ここで、耀が呟いた。
「わたし、優太と一緒の大学行きたい...」
コレに、素早く反応した優太が。
「耀、お前もそう思うのか?」
「え? 優太も私と一緒の大学に行きたいの?」
「そ、そうだが...」
次に反応したのが寛子だった。
「なになに? 二人そんな関係だったの?」
「いや、オレは単に耀と居ると、なんか楽しくて、ホッコリするんだ」
「優太、それって 耀の事 好きって言う事の裏返しよ」
「優太、私をそんな風に思っていてくれたの? なんか... うれ・しい...」
ハッとした雄太が、目を見開いて。
「寛子の一言で 今気が付いた。 オレって やっぱ寛子の言うとおり、耀の事が好きみたいだ」
「お~いいじゃん!何なら今ココで告れ、優太」
「そうね、耀 優太。 私たちが立ち会い人になるから、今ここでハッキリしなさい」
言われて見つめ合う 優太と耀。
耀の顔が赤くなり、優太に言った。
「ねえ、優太」
「な、なんだ」
意を決したように、耀が言い放つ。
「言ってよ! 優太。 私に」
ゴクっと唾を飲みこむ優太。
祥と寛子が見守る中で、優太も何かを振り切ったようだ。
「小川 耀さん、好きです。 これからずっとずう~っと、オレと一緒に居てください」
耀が、うるうると溜めた瞼から、一粒の涙が流れ落ちた。
「ありがとう 優太。 私も大好きです。 私こそ。コレからずう~っと一緒に居てください」
「じゃあ改めて...、耀、オレと付き合ってくれ」
即答で耀が答える。
「はい、喜んでお付き合いさせてもらいます。 大好きよ! 優太」
「「ふう~...」」
「やっとだな優太、おめでとう耀」
「良かったね耀、やったね優太。これからも幸せにね」
「「ありがとう」」
「ま、何となく、最初っから怪しいとは思ってはいたがな、最近は特にコレはって感じだったからな」
「そうよ。優太に対する耀の態度が、少し前から特に怪しいとは思ってはいたわ」
「何はともあれ、良かったな お二人さん」
「ありがとう寛子 祥。 でも、でもね、一つ気になる事があるの」
3人が耀の方を見る。
「う~~ん、私たちは上手くいったけど、気になる 寛子と祥はどうなの?」
「「......」」(寛 祥)
「うん?...どうした? 祥」
「あれ?どうしたの? 寛子」
「優太、あのな...、実はな...」
「おいおい! まさかだろ? マジ? 本気?」
「ま、まあなんだ、その...、寛子」
祥が寛子の方を向いて、頷くと。
「一昨日オレ、寛子に告ったんだ」
「「へえ~~~~!!」」
優太と耀の声が重なった」
「それで、寛子はどうしたの?」
恥ずかしそうに、俯きながら、答える。
「了承いたしました、全開で」
「全開って! 寛子、私に報告は?」
「ゴメ~ン。 言い出し難かったの、でも、今日あたりに二人には言おうと思っていたから、今日の優太と耀の告白が、いいチャンスだと思った」
「わ!ずる~い 二人とも、言ってよすぐに」
「耀ゴメンな、オレも寛子もすぐに言いたかったんだが、何か抜け駆けしているみたいで、言い出せなかったんだ、スマン」
テーブルに手をついて、頭を下げる二人。
「ふ~...、ホントにもう! コレからは隠し事とか遠慮は無しよ、寛子 祥」
「ホントだぞ、オレ達だけが公開告白になって・・・・って? あ!」
「どうしたの? 優太」
いいことを思いついたのか、優太が 祥と寛子に向かって言い放った。
「お前たちも、今ここで告白のやり直しをしろ!」
「「......」」
「いいだろ? 今ココで告ったら、今回の事は許すからな、どうだ?」
「そうよ。祥 寛子、二人が再告りを目の前で見せてくれたら、許すから」
優太と耀が、ワクワクしながら言う。
見つめ合う 祥と寛子は、少しの間沈黙してから。
「寛子、いいか?」
「うん。 恥ずかしいけど」
祥が決心した。
「枢 寛子さん。 あのモールで出会った時から、好きになってました。 こんなオレで良かったら、付き合って下さい」
少し恥ずかしそうに、寛子が答える。
「はい。 私も祥の事は最初から気になっていて、最近特に気になっていました。 コレからもよろしくお願いします」
と言いながら、向き合って、軽くキスをした。
どうやら二人の世界に入ってしまったみたいだ。
「きゃ~!!!」
耀が叫んだ。
周りの客が、一斉に4人のテーブル席を見たものだから、優太が耀を宥めた。
「おいおい!そこまでやったのか?」
「「あ!!」」
気が付いた二人。 やってしまったという文字が顔に映っているような、顔つきになっている祥と寛子。
「寛子、だいた~ん! でも、羨ましい」
コレに優太が反応する。
「それって...、耀 オレと」
「言わせないで優太」
4人が周りを見て、鎮まった事を確認してから。
「やり過ぎだろ!二人とも」
「ごめ~ん」
「わ、私、つい」
寛子の顔が真っ赤になっている。
「ま、でも、コレでお互い様だな」
場が落ち着いたところで、耀が寛子に聞いてきた。
「寛子。そんな進展、私は分からなかったな~、4人で一緒の時もそんな風には感じなかったのに、どうして?」
あ~なるほどという素振りをして、寛子は言う。
「あのね、4人で勉強会している時、祥がどうしても成績の伸びが緩やかだったじゃない。だから、皆に追いつく様に、空いた時間があったら、もう少しやってみる? 私が付き合うから・・・っていう機会が、ちょくちょくあって、二人で会う機会が増えたの。でね、祥の誠実で真剣に向き合う姿勢に、私がやられちゃったんだ。だから、私が祥に 惚れちゃったの」
「お~お~! 言ってくれる、寛子。 なんだ祥、寛子からドッカリと好かれてるんだな、この幸せもんが~」
「嬉しさ 全開だオレ」
「だから この席の座り方、自然と正解だったんだ」
「もういいか? コレでオレたちを許してくれ」
「もう十分だ。いいもん見れた」
また顔が赤くなる寛子だ。
最初からカップル同士で座る席位置に座っていた4人。もうカップルが決まっていたみたいな感じの4人だった。