10話
10
次の日。 いつもの4人の勉強会が、久しぶりにファミレスでやろうという事になり、時々行くファミレスに、9時半に集合した。
いつもよりも30分早い集合としたのは、昨日の佐藤家 小川家の会議の報告を、勉強の前にしておこうと、優太 耀 の二人が、祥 と寛子に提案した。
・・・・・
「ヘえ、それで双方の両親は認めてくれたのね」
「まあ、二人でアパートってのもまだ高校生だし、無理だもんな」
寛子と祥は、驚きながら優太と耀の報告に、頷きながら答えていた。
「それで耀はいつから優太の家に住むんだ?」
コレには耀が答えた。
「えへへ。 今日からだよ~」
「「ええ!!?」」
祥も寛子も驚きが半端ない。
「耀。 あんた、いくら何でも昨日の今日ってのは、早すぎるとは思わないの?」
「だって、今日 大安 だもん」
「だそうだ、祥 寛子」
「「......」」
嬉しそうに、耀は言う。
「大安 って...、縁起、気になるんだ。 それに、学校にはどう説明するの?」
「その事だけど。 全くの二人暮らしでは無いので、学校へは報告せずに、残りの半年を過ごすつもりよ」
「バレたらどうするんだ?」
「その時は、双方の両親が決めた事なので、私達に任せなさい って、言われたわ」
「どうするんだろう?」
「どうなのかしら?」
少し4人で首を傾げる。
「でも、真っ先に祥と寛子には、報告しておきたかったんだ」
「ありがとう、話してくれて。 何か、信じてくれていると思うと、嬉しいわ」
「他には絶対に言えないからな」
「全くそうね、先生にも言えないし」
「そうそう、だから、学校では全く 内緒にしなきゃ! いけないんだ」
「その分の秘密感が、優太との関係を燃えさせるの~...えへへ」
この返事に優太は少し怯む。
「耀。 何かエッチい 顔してるぞ?」
「女だって結構スケベなところだってあるんだよ、ね、寛子」
「わ、私に振らないで、耀...」
女子がそんな事答えられる筈がない。
「だけど、もし学校の友達が、耀の家に遊びに行きたいって言ったらどうするの?」
それについては、耀がドヤ顔をした。
「へっへ~...。その対策もバッチリだよ~」
「どういう事?」
祥と寛子が、興味深々だ。
「あのね、その時だけは、実家に帰ればいいんだよ~。自分の部屋は、基本そのままだからね~」
「「あ~、なるほど」」
「分かったかな? お二人さん。ちゃんとアリバイが作れるように、作戦はばっちりなんだよな? 耀」
「うん!」
「ほ~~、そうですか」
「ですです」
もう学校では、優太と耀、祥と寛子はカップルと言う事は知られているので、公然とした態度は取っている。
4人が微笑みあう。 何でも話し合える4人だから、即 分かり合えるのだった。
◇
その後、いつもの様に午前中の勉強会が終わり、優太と耀は耀の家に昼食を摂る為に、来ていた。
「優太君ご苦労様。 二人ともお昼出来てるから、食べてから行きなさい」
小川家で昼食を摂るのは、今日から耀が佐藤家に来るので、昼食後に、一人では大変だろうと、優太も手伝いに来たのだった。
・・・・・
昼食後、朱里が少し話があると言い、リビングに場所を移した。
「耀、祐美にあまり迷惑かけるんじゃあないわよ。 昔から友達の面倒見がすごく良い子だったから、多分大丈夫だとおもうけれど」
「お母さん大丈夫よ。 普段は私達、二階で生活するから。それに、優太も家事手伝ってくれるって言ってるし」
「まあ、ごめんなさいね優太くん。 耀がもう我儘言って」
「いいえ、いいんです。 コレも将来の為に、役立つと思いますから」
「あら!、もう結婚の練習なのね、うふふふふ」
朱里が、微笑んだ後、すぐに真剣な顔になって。
「祐美も私も、二人暮らしには賛成したけど、心配なのは、やはりどうしても男女という事なの。 分かるわよね? だから...。 二人、そう言う関係になると思うから...、ちゃんと避妊はしなさい。 コレは肝心な事よ。 在学中、しかも受験が迫ってきている時に、妊娠なんて事は、ありえないから」
「......。お母さん、ありがとう、心配してくれて」
「すみません、色んな心配をお掛けしまして」
二人で同居と言う事は、いつも男女が一緒に居るという事だ。 しかも、好き合っている同士なので、そう言う事になるという事は、奇麗事では無く、親としては当然心配になってくる。
優太と耀は、好きだけでは一緒に暮らせない事を、実感をもって、感じた。
・・・・・
「じゃあお母さん、いってきます」
「耀、ちゃんとするのよ、それと、あまり優太くんに迷惑をかけないように、それから...」
「もう、お母さん。 歩いて4~5分の家なんだから、心配しないで、時々は帰って来るんだから」
「優太くん、ごめんなさいね、こんな娘で。 仲良くしてやってね」
「はい。 じゃあ行きますね」
「連絡するのよ」
「心配性だな~、おかあさんは。 じゃあね、いってきま~す」
玄関先で見送る朱里に、二人とも手を振って、優太は頭を下げた。
その後、耀は振り向かず、その眼には 涙が滲んでいた。
「どうした? やっぱり泣いたか」
「なによ! 分かってたって言い方ね」
二人とも、リュックと手提げのスポーツバッグを持っての道中である。
「耀は泣くと思っていたからな」
少し、しおらしくなり、たまった涙をこぼしながら、耀がこぼした。
「お嫁に行く気分が、少し分かったような気がする」
「そうか...」
離れていた手を握り合い、優太が耀に向かって。
「よし! コレから受験が待ってるぞ、もうやるしかないからな。オレ、がんばるぞ」
「うん」
「耀と一緒の大学に行くからな」
「約束だよ優太。 コレは破れない約束だよ! 絶対に!」
「まかせろ!」
更につないだ手に二人力が入る。
「幸せになろうな あかる」
「しあわせにしてね ゆうた」
「まかせろ!」
「同じ事言った」
涙目で笑う耀の手をしっかり握り、優太の優しさに将来の希望を期待する耀だった。
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最後までお読み下さってありがとうございました。
内緒にしなきゃ! の本編はコレで終わりです。
本当は、社会人になるまでのストーリまで考えていたんですが。書いているうちに、この辺がキリが良いと思い、ひとまず終了しました。
ベタな内容ですが、お付き合いありがとうございました。
雅也