1話
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優太と耀は、高校3年生。 なのに親の同意で同居している。 勿論、身内以外は内緒だ。
学校にも内緒で、残り少ない高校生活を ひっそりと過ごす事になった。
◇
「優太。 早くしないと遅刻だよ」
「お、おう、分かった」
いつもの二人の朝の光景だ。
佐藤 優太18歳、高校3年生。
小川 耀同じく18歳。
二人は高校の同級生。 去年のGWくらいの時期に知り合って、夏休み前に付き合い始め、現在は優太の家で同居している、学校はもとより、身の周りには内緒だ。
それまでの経緯は後で述べるとして、とにかく彼ら二人は今、佐藤家で同居している。
「おお!寝過ごすところだった。ありがと 耀」
「早く身支度して 優太」
「分かった」
佐藤家の中の優太の部屋を中心に、生活している二人。 今日は金曜日なので、何故か気分がいい優太。
二階にある二人の部屋の隣に、小システムだがキッチンがある。 シンクは小さいが、二人での食事の支度をするには、十分なシンクだ。
軽い朝食はココで済ますが、夕食だけは皆一緒に摂るという事が決められており、今起きた二人は、この二階で朝食を摂る。
「あまり時間が無いよ優太。 はい、コレ」
そう言って、耀がトーストとコーヒー、それにリンゴを剥いて八つ切りにして、小さなサラダボール載せてある。
「ありがと、じゃあいいか?」
「「いただきます!」」
二人で朝食を摂っている最中 優太が
「耀。昨日の課題 全部出来た?」
耀は即答で。
「と~ぜん」
腰に手を当て、胸を張って言う。
「いいな~、オレあと少しで終りそうだったのに、寝ちゃったからな~」
「学校でやれば?」
「見せて」
「やだ!!」
「やっぱね~」
耀の答えは分かっていたので、がっかりしない優太。
楽しい二人の朝食の時間も終わり、登校への準備をする。
全ての身支度を終え、二人は仲よく一階のキッチンに降りていく。
「おはよう」
「おはようございます」
「「おはよう」」
優太の両親 父親の 佐藤 優 と 母の 優実だ。
降りてきた二人に両親が挨拶を返してきたが、母親の優実が
「二人とも、朝食は済んだの?」
と聞いてきたので
「うん」
「はい」
と、返事をする。
そのまま優太が
「俺たちもう行くから、行ってきます」
「いってきます」
と二人が言って玄関を出た。
◇ ◇ ◇
優太と耀は幼馴染ではない。 家も近所ではないし、小学校 中学校共に、違う校区だった。 だが、出会った。 高校に入ってから出会ったが、学校内で知り合った訳では無い。
◇
優太は小学校からの親友、中西 祥とずっと仲が良い。 変わらない友情で、お互いを理解しあっている。 無二の親友と言って良いだろう。
お互いゲームが好きで、これまたよくゲームソフト販売店には週一で通っている。
耀と出会った日も、普通に二人で繁華街にあるいつものショップに出かけて行った。
一方、耀の方もその日に、中学校からの親友で 枢 寛子と、ショッピングモール内にあるクレープ店に、期間限定でのスペシャルクレープが販売しているというので、向かっていた。
△
優太たちがショッピングモール近くにあるゲームショップに到着しそうになった時、約10人くらいの人だかりがあった。
なんだろうと、ゆっくりと近づいて行くと、人だかりの中で、女の子二人と、身長がやけに高いのが一人と後の二人は普通な丈の、合わせて3人の男が、その女の子の二人連れに向かって、ナンパしていた。
あ!こりゃヤバいヤツだと思い、優太はその場をスルーしようとした。
だが、祥はスルーしなかった。 しかも優太に向かって言い出した。
「優太、あれもしかして、4組の 枢 と 小川じゃね?」
優太は、その言葉に反応した。
「なに? 本当か。それは一大事だ」
(なに? あの学年一可愛いと言う 枢 寛子が、怖そうなお兄さんたちの餌食になってる? こりゃスルー出来ないな)
なんて思いながら、人ごみの中に入って行くと。
「いいじゃん、俺たちとクレープ食べようぜ、その期間限定ってのを」
すると、連れの二人もその声にけしかける様に言う。 強引なナンパだ。
「いいじゃん! 時間だってあるんだろ? だったら付き合ってやるからさ、行こうぜ、な?」
「お断りします! 私達 二人で行きたいので」
キッパリと断ったのは 耀の方だ。
「あれれ、そっちには興味が無いんで、良かったら帰ってもらってもいいかな」
と、耀の事を少し子馬鹿にしている。
すると、気の強い寛子は
「あなたたち、いい加減にして。警察呼ぶわよ?」
と言って、スマホを取り出す寛子。
それを見て、寛子のスマホを素早く奪い取り
「コレでな~にも連絡できなくなっちゃたね、ざ~んね~ん」
まわりを見ていた観衆は、何もできずに只々見ているだけ。
イラついていた、優太がスマホを持って、輪の中に入って。
「お兄さん達、さっき 警察に電話したから、そろそろこの近くのおまわりさんが来ると思いますから、その娘たち 勘弁してやってくれませんか?」
と、言いながら、スマホをかざす。
すると、背の高い男が言った。
「ホントは電話持ってるだけで、俺たちが退散すると思っているんだろ、大概はそんなところだな。分かっている」
「違います 違います、ホントなんですよ、逃げたほうがいいですよ、お兄さん方」
それでも笑っている。
「ははははは...」
「本当ですって」
さらに優太が言うが、3人は言う事を聞かない。
すると、本当に警察官が2人で駆けつけてきたので、本人たちはびっくりだ。
「だから言ったでしょ?」
警察官の人が
「そこ、待ちなさい」
そんな事で、一同は、事情を聴かれるために、近くの交番にゾロゾロと連れて行かれた。
△
各々が解放されたその後、寛子たちと4人で話し合っていた。
「ありがとう、優太くん祥くん。あの人たち結構しつこかったんだよね、寛子」
一緒に居た耀が口火をきった。
「いや、オレ達はただ警察に連絡しただけで、後はな~んもしてないからな」
「でもね、あのままだったら、もっと強引にされていたと思うな。だから、ありがとね 耀と私助かったわ」
今更だが、小川 耀と 枢 寛子は、雄太たちと同級生だ。
特に、寛子は学内で5番の指に入るほどの美人で、肩甲骨まで伸びた黒髪ストレートに、ぱっちりした瞳、どうしたらこうなるの? って言っていくらいに、まとまった女の子だ。
スタイルも良く、いわゆる高根の花ってヤツだ、高値過ぎて、誰も 告る勇者は居ない・・・・らしい。
小川 耀の方は、ごく普通などこにでもいる一般高校生だ。 器量は普通だが、スタイルは寛子と一緒で、美形なのだ。薄ピンク縁のメガネに 黒髪ショートボブが、似合う女の子だ。
△
「折角モールまで来たのに、目前で変なのに絡まれちゃったな~」
「でも良かったね、佐藤くんたちのお陰で」
「ねえねえ 佐藤くん 中西くん、よかったら今日一日、私達と一緒しない?」
「そうだね寛子。 この二人だったら安心だもんね」
「おいおい! 俺たちガードマンかいな」
「いいでしょ? こんなカワイイ女子とデート出来るなんて」
「ま、それもそうだな。 よし! 今日はダブルデートだ、雄太」
「おう!分かった」
「じゃあ決まりね。 まず何処からにする?」
その時、優太と耀の 腹の虫が鳴った。
「あはは!! モールのフードコートだな」
「「「おーーー!!!」」」
ノリの良い4人だった。