第七十七話・嘘はいつかばれる …… ⑭ Jの横領がわかっていた人たち □
母とは令和二年の四月からコロナ禍のせいで面会できませんが、入所にあたり感染の危険性がなくなるまで我が家に在宅している間、いろいろな話ができました。新しい出来事はすぐ忘れますが、大阪の古い習慣をよく覚えていて驚嘆することもありました。
ある時、母は言いました。
「私は早くに嫁に行ったのでJのやったことはよく知らない。だけど、昔のことだし許してやって」
それを聞いた私はJの犯罪を家族ぐるみで、うすうすとでも「わかっていた」 と思いました。
私は幼い時に、叔母たちの家や部屋に出入りしていました。由緒ある年代物のものは何一つないものの、高額な家電や芸術品などをおしげもなく買っていました。叔母JとFの部屋は洋室で同室でした。身体が一つしかないのに、洋服やアクセサリーがそれこそ、足の踏み場もないぐらいに置かれていました。母は実家に行くと、どの引き出しを開けても札束があると金持ち自慢していました。
でもそれはおかしいです。家族に金融関係者がいるならば、現金を置くぐらいなら貯金をさせるでしょう。祖母も大学に入った私に祝いの言葉の述べ、かつ、こういいました。
「農協や銀行に行ったらあかん。あれはな、他人のお金と区別がつかんようになるから絶対にあかん」
この言葉は小さい時から私に繰り返し言われていたので、なぜだろうと思っていましたが、今は祖母がいつばれるかという思いで私に諭したのかと愕然としています。でも祖母は末子の叔父、母やJ,Fの一回り年下の叔父には農協に勤めさせました。そこしか就職先がなかったのかは知りませんが、あの時、私にいったセリフはなんだったのだろうと思う。
母は近所の人にJのことで嫌味を言われた話を教えてくれました。
「私の子供は絶対に農協に勤務させない。横領して平気な人間にはさせたくない」
私はがぜん興味を持ち、その時の祖母の反応を聞いたら母は「覚えてない」 といいます。このあたり、だれか尋問できる人いないかなあ……母実家のすぐ近所の人、ということは、うわさになっていたのではないか……。もっとも昔を知る人にとっては急激な金持ちになったのを単純にやっかんだという意味かもしれない。
またHの兄が同和の人と協力して税金を抜けて巨額の金を儲けたという噂も立っていました。母はそれも事実だと言います。でも母自身が金銭関係には疎いので実証も詳細な話も知らない。もはや、ここまでか……そこまでいくなら、Jの横領話に関しては、同僚のみならず税理士、司法書士もわかっていて黙認していたのではないか。実はそれを示唆してきた人がいます。組織ぐるみってこと? 農協からJAに合併の時のどさくさで帳尻合わせでみんなで横領しあった? そんな、まさかね。
また別のある人は薄笑いを浮かべていました。
「知ってる? 農協は昔から横領天国と言う言葉があるよ。取り放題ってな。銀行のような厳しい監査もないし、こんな事件は表面にでないで、いくらでもあるのではないですか」 と。
私はこんな親戚を持ったことが恥ずかしいです。私をこんな目にあわせてなお親戚やJAに私の聴力の悪さを言い立てる一方、肝心の説明もできない元凶のJを心から憎み、軽蔑しています。




