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第七十五話・嘘はいつかばれる …… ⑫ 実母の大好きな因果応報の法則  □



 最初に書くが、私は因果応報は信じない。幼いころは母のいうとおり、己の前世で先祖もしくは私自身が悪いことをしたから聴力が悪くなったと信じていた。今では、そんな育てられ方をされて恥ずかしいと思っている。

 加えて成人するまで耳が悪いのは恥ずかしいことだと思い込まされていた。聞こえなくても聞こえるふりをして、周囲の会話を理解してなくても楽しそうに笑っていました。これも愚母の教えです。そりゃ耳の良い歌の上手な実妹Zからの軽蔑を受けても仕方がなかろう。私は人生の前半を無駄にしました。悪気がなかったことがなお私を苦しめる。妹もです。姉妹の不仲は妹が悪いと私は思っていましたが結局は母の教育によるとも思うようになってきた。母はヒステリーを起こすZに対しあんたは頭がおかしいといいつつも、精神科や心療内科は縁談に差し替えが出るからと受診させなかった。Zは高校生の時に摂食障害を起こしており、生理もなかったので受診させるべきだった。そして家族面接をすべきだった。母は子供の可愛がり方を間違っていました。人生の後半にもなって、そういうことにやっと気づくのは哀しいことです。


 愚母の教えでは、身障者は、全員が前世で何かをしたから。もしくは親や先祖が悪いことをしたからそうなったというもの。幼いころは私はそれを信じていました。悪気ないとはいえ、私によくも嘘八百を教えたものです。で、今回のイラクサ話はそれに関連した因縁話です。しかし、精神疾患やADHDなどは、先祖の因縁とやらは無関係ですよ。念のため先に書いておきます。


」」」」」


「あそこの娘さんは昔親に偉そうにしていたから障碍児を産んだってもっぱらの評判や。かわいそうにな、悪いことをしたら必ずバチがあたる。あんたも気をつけてな、親を粗末にしたら必ずバチがあたるで、わかったな」

「あんたがここまで無事に大きくなったのは親のおかげ、それを忘れるな。親を粗末にしたらあんたも障碍児を産むで。わかったな、あんた長女やさかい、婿をとってずっと私と一緒に住むんやで、遠いところには行かんときや、わかったな。親不孝なことしなや」

 読者の皆様は、上の文だけで辟易したでしょうが、私は独身の頃、ずーーーーっとずっとずっと言われていました。息苦しくなって三十前に一人暮らしを無理に始めたのは前に書いた通り。

 母に泣かれてまで拒否された相手と結婚を強行した時は不仲の実妹Zですら「大阪を出て遠いところ行きたい気持ちもわかる、あんたは反抗期なかったもんな、今が反抗期やろが」 と笑っていました。

 で、Z。結婚しても尚老いた母に殴る蹴るの暴力をふるい、お金をださせて無一文にさせたあげく、借金を負わせる。Zは我が世の春だったろう。Zの容姿や人間関係は圧倒的に私より上だから信じられぬだろう。内弁慶って言葉はZのためにこの世に作られたと思う。

 私は結婚当時は反対されていたので「家も財産もいらないから」 と言いました。だからZとの会話もスムーズでした。でも、長じて父が亡くなった後、母から金を搾り取るようになるとは思わなかった。まだ母が元気なうちにと父の遺産がすべてZに行くようにと公正証書を作ったとたん、母を虐待して「ハヨシネ」 と殴ったり蹴ったりするようになるとは思わなかった。そんなこをするなら、私だって実印をつかなかった。

 このため、私は倒れた母を引き取った折にその公正証書を無効にしておきました。ちなみにZには現在借金がありません。Zの夫が肝癌になり、がん保険プラス、B型肝炎給付で巨額のお金が政府からいただけ、平成二十九年七月にZが造ったローンは全額返済しています。そのうえでまだ母とは金を搾り取ろうとするのは人にあらざるもの。

 二度目の現在の夫が良い人なのに、また結婚に失敗した、風俗の名刺をたくさん持っていた、肝炎になったが性病だろう、感染したらどうしてくれると怒っていたのに、莫大な給付を受けて仲直りしたようです。これもZが今なお夫を魅了する美女がゆえかも。私はZよりずっと容姿が劣っているのでその点についてはある意味あっぱれだと思う。


 また話がそれました。戻ります。母の好きな因果応報ですが、特に頭の障碍に関してはすごく厳しかった。しかしながら母方の親戚はそれぞれの家に私の子を含め、ADHD,LD,自閉症スペクトラムのオンパレードです。計算したら八割の確率です。

 私の子に関しては恥じることもないので誰に対しても公開していましたが、頭に来るのはFとHです。実はFの孫も虚弱児であったこと。私がうちの子はLDよというと、実は以前手術を受けたの、身長が低くて心配なのという。母はFに対して自分の家のことは何も言わないくせにと怒っていました。

 でも、ばかばかしい。秘密は逆に言いあうべしと思っている母の思考回路が不思議です。ま、FやHもずるいです。母の財産状況や年金金額をすべて掌握して介入したがるのに、実孫や同居の姪の子のことは黙っている。母はこういいます。

「Fはうそが多くて大げさな話ばかりするけど、でも血を分けた姉妹だから」 

 そんなだからJやFにいいように扱われるのよといってもあとのまつり。でもFを上回るのが温厚な性格の母の従姉妹のH。Zがあの人はなんでもおごってくれるので大好きというHです。

 HはJと同じく生涯独身を通したが、同居している兄夫婦のただ一人の孫がADHDでした。当のHの兄の葬式で立ち居振る舞いで判明、改めて説明されてわかりました。これも母方親戚一同がADHD関係を表に出すのは恥ずかしいことを思っていた表れだと思っています。それで、HもF以上に私の子に関して療育の話など根ほり葉守り聞きたがったのかと思いました。それにしても確率的に多すぎる。


 かつてZはこう言いました。

「おばあちゃんは、近所に阿呆の子が産まれるのは先祖の報いと、よくバカにしていたから。そういう家だったから、親戚にそういう子供がいっぱいうまれたのではないか」 と。

 確かにそうです。祖母だけでなく、愚母も近所で見た自力歩行が困難な子や小児まひの子の顔つきを真似して笑っていたこともありました。長じて施設に行っても、痴呆が進んだ人のふるまいや尿失禁時のふるまいを実演して嘲る。まだそういうところが治ってない。「ヘルパーさんに怒られてはった」 と、笑い話にする。医療従事者の端くれとして放っておけず、やめなさいと怒ったぐらいです。

 以下は少し前の話です。(現在はコロナウイルス予防により面会禁止)

「ねえ、お母さん。お母さんの大好きな因果応報ではうちの子もそうだけど、何が悪かったのかしら。私の聴力の悪さは馬の祟りだったよね? この子はどう? Gの長男はどうなの? Fの孫は? Hのところの子は? 今、どう思っている?」

 母は複雑な顔をして黙っていました。私はJのふるまいに怒っていますのでこう言いました。

「お母さんの大好きな因果応報によると、JとHが人に言えぬことをしてきたせいで、とばっちりが次世代の子に来たのよ。ついでに私の子にも」

 冗談で言ったのですが、母は真剣な顔で「そうかも」 と言いました。あれまあ、未だ因果応報を信じているのか、という怒りもありますが、それもどうでもいい。

 明治生まれで迷信深い祖母に育てられた母ですから。そして同じく迷信を恐れ信じて育った母ですから。 五十才もとっくに過ぎた娘のもとに、病気で引き取られるまで己が中卒なのに高卒と嘘をつき通した人ですから……なんというかここまでいくと、単なる愚か者です。


 私は医療従事者になって本当によかった。因果応報からくる障害が霊能者の祈祷ごときで治るなら、この世に医者も看護師も薬剤師も臨床検査技師も介護士もケアマネもみんないらない。

 病気を因果応報の一言ですませ、その人の苦労を思いやらなかった愚母。その母からたかろうとしていた祈祷師や霊能者たち。もうみんな大嫌い。これらは今なお私が宗教家を嫌う原因の一つです。母を長期に渡って利用し尽くしたJがこの世で一番嫌い。歴史上の悪人や連続殺人犯よりもずっと憎しみを感じる。Jは私の人生に大きくかかわってきた人だからです。しかもJは私に対してもなんら説明がなく、JAや親戚には虚偽の説明をして私を悪くいう。大悪人ですよ。でもJにとっては私が悪人らしい。恩知らずと罵っていている。ばかばかしい。それを信じるJAの元部下たちも大嫌い。諮問するといっていたのに、昭和時代の帳簿もあるから調べておくと言ったくせに全部言ってないことにされてしまった。誰も私のくやしさを理解してくれない。



 私は愚母を捨てられない。捨てたら母は死んでしまう。確かに産んでもらったのは母のおかげ。やはり受けた恩は返したいと思う。


 親をないがしろにしたら、バチがあたるで、

 今まで生きてこられたのは誰のおかげ、

 この世に生まれてきたのは誰のおかげ……


 ……私は、その愚母の言葉に未だに呪縛されている愚かな娘です。でもやれることはやっているので、後悔しない。


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