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第七十二話・田舎差別と学歴差別の二重唱


 私が結婚相手を決めたとき、相手が高卒、田舎育ちの田舎暮らし、実家は専業農家でその長男。職場の同僚は相手が医師や医療従事者、もしくは親が病院経営や開業医だったりで「そんな相手で大丈夫か」 とあからさまに聞かれたりしました。また、「都落ち」 じゃないの? と、面と向かって言われました。若い読者さんって都落ちってわかりますかね? 都会を追われて田舎に落ちるという悪い意味でつかわれることが多いです。平家物語でも平家の都落ちってありますからね。語源はそこから来ています。ですので東京などの大都会から地方に異動になったり、引っ越すことになったら自嘲気味に「都落ちだ」 となります。平成生まれの人はまず使わないと思いますが私は思いっきり昭和生まれなので使います。


 ともあれ、否定的な意味合いで心配もされたのですが、私はまったく平気でした。しかし、実母には困らせられました。実母は、四十才も近い娘の私がやっと見つけた結婚相手を「今までの中で一番最低」 と泣きわめいて嫌がりました。私はいくつになっても、そうやって娘の人生を采配しようとする実母がどうにもイヤでした。私のためといいつつも、己の老後のために嘆いているのがわかるからです。

 さっさと婚約したよというと、なんと某結婚相談所に単身乗り込んで数十万円を出して大卒で大企業勤務で実家に近いところに住む男性の釣書を数枚、買ってきました。八人分。全員次男もしくは三男。正確には釣書のコピーを買ったんですよ。追加料金を払えば見合いができる仕組みです。さすがに私も驚愕しましたが、母は本気でした。この中のどれでもいいから、その人と結婚しなさいというのです。

 母は娘である私の幸せを思ってとはいうものの、すぐ本音を吐き出しました。私が実家遠く離れたら後に残るのは、すぐ癇癪を起こして暴れ、お金を要求する超絶危険人物の私の実妹Zしか残らない。

「Zじゃだめ。年を取ったら誰がどうやって介護してくれるのか」 

 ……ああもう、やはり、これか……ってね。

「老後を心配しているなら大丈夫、必ず私が看取るから」

 二十年たった今、この言葉通りのことはしてますね。実妹Zは母には「はよしね」 といって搾り取れるだけのお金を取った後、音信不通になったから。

 話がそれますが、別のところでも書いた話をここでも書きますね。実家にはZが新調した色留めそでが数枚あります。Zは、一度袖を通したらその着物はどうでもいいみたい。同窓会で百周年記念での来賓に花束を渡す、それだけのために母を脅して着物を新調しました。役目を果たした着物は実家の箪笥に放りっぱなし。

 仏壇の引き出しにあった、いざというときの現金は消えてなくなってる。要はただ一度着るための着物に化けたわけです。母が倒れたそのいざというときは、私の貯金で乗り切りましたよ。母に借金までさせていて驚くことばかりでした。Zの犬が糞尿で汚した畳と例の美しい着物は今なお実家にありますからね。Zは、コレ、どうするつもりかしらね。この文章も見ているくせにね。


 で、話を戻します。

 結婚を勧めたときの母の狂乱ぶりは母方の親戚までコロナウイルスの如く蔓延し、特に叔母Jは、私のところにはっきりと「その結婚やめなさい」 と言ってきました。

 親戚がすべて同じところに固まっていることもあって、田舎の家と親戚付き合いはできないとまで言ってきました。教諭の資格をもつある別の親戚は「大卒の女性と高卒の男性とはうまくいかない、考えも育ちも違う相手とはもう絶対に無理」 と言いきりました。また別の人は「年齢のあせりもあるのだろうが、今回は見送りなさい」 という。誰一人賛成しない。

 結婚するのは私です。無視一択でした。特に学歴は、当時は母は高卒なのに(本当は中卒)、男性の高卒はダメだという。高卒の男性って世間ではそんな不利な人生なのかと思いました。院卒や東大卒でもいわゆるヘンな人もいるし、一律で決められては困ります。

 田舎は都会にはわからぬルールで生きているから住むのは無理という話だけは一部本当でしたけど、私は後悔していません。この結婚で都会側による田舎蔑視の惨さも知る経験もしまして、よい勉強になりました。

 親戚の中心人物叔母Jの横領を知った今、都会で暮らすのが一番良いと信じてやまぬ親戚たちの愚かさを嘲笑っております。

 田舎暮らしで感じたもやもやなイラクサは小説に転化し、今は田舎の自然を愛でて暮らしています。ただ私はクラシックバレエをも愛していますが、あれだけは人口の多い都会でしかできない。田舎では無理。だから都会も好きです。田舎も都会も好きでいられるのは幸せなことだと思っています。

 一方的に狭い範囲での欠点をあげつらうのは単なる愚か者です。それでは終わります。




結婚相談所の話の追記::落ち着いたころに聞いたら入会金十万、高卒の釣書は二万円、大卒が五万円だったそうです。で、お見合料と成婚料は別。二十年前の価格ですがご参考にどうぞ。ちなみにその結婚相談所はもうつぶれていますが、パニック状態の母を前に、入れ食いでお金を儲けただろうなあと思っています。


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