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第六十九話・コロナウイルス感染防止のための電話受診よもやま話 (二千二十年四月現在)


 私は非常勤の医療従事者です。現在、皆さんの共通認識で一番怖いのはコロナウイルスに感染することです。今回はそれに関連した話。どんなウイルスがはやっていようが、定期的に通院して薬をもらわないといけない患者やその家族様への注意喚起と自戒をこめた話です。一種の時事問題ですので、いつしかこの話が昔話、笑い話になるようにと願っています。


 人は一人で生きていけない。完璧に孤独な人はいない。ネットという仮想空間でも立派な「つながりグッズ」 です。

 快適に長生きするために薬が必要な人は病院とは定期的に接触が必要です。今回はその話。

 私の勤務先も出入り口が数か所ありますが、コロナウイルス対策の一環として不特定多数の患者さんが出入りするところは一か所にかためました。不特定多数の人がさわるカウンターや待合ソファも時間を決めて定期的に消毒です。窓も定期的に開放します。朝だとまだ寒い時もありますが、万一感染者が出たらと思うと念を入れすぎることはない。皆ぴりぴりしています。どこの医療機関でもそうだと思います。

 普段から消毒は当たり前ですが、コロナウイルスは感染力がハンパなく強いので念入りです。なのにマスク入手不可、消毒剤も品薄。それぞれが在庫確保に必死ですのに需要と供給のバランスが医療機関内でも崩れて久しいです。

 病院も感染を警戒して定期的に受診する患者さんには電話再診をすることになりました。医師と患者が電話で会話して処方せんを発行してもらうのです。それを看護師や医療事務員が薬局にファックス送信する。それを調剤して患者が現物を受け取りに行く。

 試験的に導入でなくいきなり通常運転で開始されました。病状が安定している患者限定ですが、患者側にとってもいきなりだったようで、特に高齢の人は診察は月に一度のイベントで楽しみにしていたとのクレームもありました。感染予防のためというと全員が納得されました。泣く子も黙るコロナウイルス恐るべし。一応電話診察であっても直接診療が必要だと判断されたらマスク着用必須で来院していただいています。ちなみに二千二十年四月下旬現在、マスク持ってこない人は一枚五十円で売っています。年初めは希望者に無料で差し上げていたのに、今はこんなです。

 家族からのクレームもあります。患者本人の睡眠薬や安定剤が減らされたというものです。

「あの人はね、電話や診察の時だけ元気に話します。医者はあの人にだまされています」 と。逆に「コロナで心配なのに、いつもの量では困る。薬を増やしてくれ」 というクレームも。医師と実際にあって直接会話するのとしないのとでは患者の満足度が違うことを痛感しています。

 先の人は私の実母と同じパターンで同情しました。母も電話だとめちゃくちゃ元気。電話がないときは、ベッドの上で、ぐでたま状態なのに、電話だと声に張りと艶が出る。相手先が体調悪いと聞いていたが元気じゃないですか、と驚くとすごく喜ぶ。後でその相手先から私に大げさじゃないの? と嫌味たらしく言われる。この複雑な気分を誰がわかってくれようか。


 患者の家族のうち、ある人は、眠剤を半分に減らされて大変お怒り。しかも年度替わりでその人の担当医が異動になり、面識のない医師が電話再診で薬を減らしたというのが怒りに輪をかけた。

「会ってもいない医師に父の何がわかるのですか? 昼間寝てばかりして、夜になると元気に動き回って寝ている家族を起こす。相手にしないと徘徊外出。その苦労もしらないくせに電話で本人が夜は寝てますと言ったのかどうかはしらないけど眠剤を削るなんて……日中働いている私に死ねというのか」

 と、抑揚のない疲れた声で延々と訴える。確かに家族の意見は電話再診ではなかなか……事情を知らぬその新任医師も悪い。いや、本来あってはならぬ電話再診を開始させたコロナウイルスがもっと悪い。

 在宅の患者さんの家族にはそれぞれの苦労がある。電話だとそれが見えない。電話だと患者本人であっても顔色や様子がわからぬ。嘘をつく患者もいる。嘘をつく家族もいる。それもわからぬ。年度替わりと同時にコロナ対応で病院によってはやり方が違う。対応統一すらされていない。混乱はさらに続くだろう。

 患者も怖がっている。頓服も予約日にいけなくなったときのために多めにくださいといったりする。せきをする患者もいる。薬手帳に他科の見慣れぬ薬が併用されているので聞いたら先週から食べ物の味がしなくなったからという。ついでに解熱剤も出されている。もしかしたら……と、私も怖くなってその患者が帰った後は厳重に周囲を再消毒した。毎日の感染者増加のニュースにすべての人間が恐れている。

 正しく恐れ、正しく防御するしかない。

 その中で垣間見える患者本人や家族の苦労。

 毎日世界のどこかでイラクサどころか歴史にのこるような凄惨な出来事がおきている。

 早く平和を。

 私はそれだけを望んでいます。





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