第四十六話・飲食店で生えたイラクサ
私は集団の中ではカゲというものが薄いらしい。みんながもらえるはずの参加賞、お知らせの紙、飲食店でお水をもらえなかったりの経験が多数あります。コース料理なのに私だけサラダがこなかったりもあります。
元々集団行動が苦手なので、その意識が相手側に無意識に通じ、そういうことになるのかもしれません。特に飲食店。単独行動でも、未だに注文したものと違うものがきたりで、「注文運」 というものがないです。今回はその話。某ファミリーレストランでの話。以下ファミレスと書きます。その時も一人でした。
ファミレスもあまり待たずに食事を気軽に楽しめるところです。今回はわりと早く来たなあと思い、フォークを取ったら、低い仕切りの向こう側から不穏な空気が漂ってくる。様子をうかがうと向こう側のグループのうちの一人が私をにらんでいます。年配の女性ですが、面識はありません。もちろん私は彼女に何かをしたという心当たりもありません。その人はウェイトレスさんを呼んでいる。ウェイトレスさんはすぐに店長さんを呼んできました。
どうやら、彼女よりも先に私の方に料理が来たので怒っているようです。店長さんらしき人が何やらなだめています。納得できなかったのかその人が興奮しはじめて、大声をあげました。その人は幼稚園児ぐらいの子ども連れです。お孫さんかもしれません。その子たちは、神妙な顔でそれでもお腹がすいていたのか食べ続けている。その例の人も、おなかがすいている状態で、同じものを後から注文した私の方に先に料理が来てしまいそれで怒っている。
私は料理を忘れられた経験もしている女ですから、あんなに怒ることもないのに、と嫌な気分になりました。ファミレス側の手落ちでしょうが、私がどうして指さされてにらまれなきゃならないのか。
ファミレスは安くてお腹がいっぱいになるけれど、時にはこういう非常識な人も出入りをします。つまり周囲の雰囲気をぶち壊してでも己の感情を大事にする人間も出入りするということ。地雷人間です。ともあれ、周囲は静かになり、大声をあげている女性を見守るような異様な雰囲気です。
私は食事を楽しむどころではなく、申し訳ないが美味しいとも感じない。すぐに席を立ち、レジでお金を払うと店員さんがすみませんといいたげに、目礼してきました。が、これも私の注文運の悪さと、間が悪かったと思うしかない。
しかし、なんだろう。あそこまで怒るのは。食事の無料券などが来るのを見越しているのかな。早々に離席したので不明ですけど。
その人自身にやや病的なものを感じ、同席していた幼い子供を不憫に思いました。もし謝罪金目当てだとしたら、軽蔑しますが最後まで見届けるまでヒマではない。巻き込まれたらその場をさっさと離れるしかない。残念ですがそのファミレスを見るごとに嫌な気分になり、以後利用していないです。
どうも嫌な記憶が脳内につくと、その周囲全体に嫌な記憶反芻装置が自動的に起動されてしまう仕掛けになっているようです。これまたこまったイラクサ案件ですが、解決のしようがない。