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第四十一話・私が聞いたいじめ殺人

 新聞や警察が動かなくとも殺人はある。今回は私が聞いた話。被害者は成人の男性で軽度の知的障害がありました。Aさんとします。コミュニケーション能力は劣るものの、基本穏やかで静かな人でありました。簡潔に書きます。Aさんは成人後、とある場所に就職しました。初めての親元を離れて独身寮に暮らすことになりました。障碍者雇用などという単語自体がなかった昔の話。ここまでは実話。以降はかなり差しさわりがありますのでフィクションを入れています。


 寮に入るとやはり閉じられた世界になります。縁に恵まれて仕事もプライベートも楽しく過ごせたらよかったのですが……Aさんは、おとなしすぎて何を言っても笑顔でいる……それをおもしろがってからかったりバカにするメンバーがいました。小中学生のようないじめが始まりました。寮母さんなど監督にあたる人はいたはずなのですが、見つからぬようにしたのでしょうか。

 ある時、深夜に寮から外に出されました(その経緯は不明)Aさんは、なんとか部屋に入ろうとします。スマホなどはない時代で携帯電話などはありません。共通のドアのカギはあるので、鍵穴になんとか差し込もうとしたようです。季節は厳寒。どうやってもドアは開きません。そしてAさんは行方不明になりました。

 数日後にAさんは遺体で見つかりました。場所は寮から見えるとある山の中。残雪がある季節だったのに、ほぼ裸の状態だったそうです。明らかな変死ですが、事件になりませんでした。故に新聞にもどこにも報道されていません。Aさんの母親が事件になるのを望まなかったとも聞きました。

 しかしAさんは誰にも言わないで一人で見知らぬところへ行く人ではありません。母親の心情はいかばかりか。遺品を引き取りに行ったときに、Aさんの部屋のつくえや、ドア、小さなかぎあなにはチューインガムが詰められていたそうです。誰かがAさんの私物に細工をしていたのは日常茶飯事だったのです。Aさんを助ける人は皆無だったのか。Aさん、山へは一人で行ったのか、それとも連れていかれたのか、それもわかりません。


 今回の話は遺族からしたら公表すべきでない話かもしれないので、聞いた経過も書きません。ただ私を含めて、Aさんの療育やデイケア履歴などを知り得る人全員は殺人だと感じました。無事就職できて皆に祝福されて張り切っていたのに人気のない山奥で凍死です。

 毎日どこかで殺人事件が起きていますが、私はニュースになるのは氷山の一角とみています。身体を傷つけなくても魂の殺人はいつでもどこでも誰かがと思うといたたまれないです。

 今日もどこかで誰かがひそかに殺人をしている。物理的でなくとも心を殺そうとしている人、反抗もできぬ幼い子供や老人をじわじわといたぶる人。いるでしょう。やっているでしょう。私が神さまだったらその場で仕置きをするのに。今日もどうやっていじめようか、何か決定的なイジメ方はないだろうか。と、快感や優越感を感じながら仲間と相談している人もいる。狂っていますね。そういうのは外見や仕草でわからない。内面は誰もわからない。現在生き地獄にいる人に「これも試練だ」 と誰がいえようか。ちょっとそれは違うでしょ?


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