城塞都市
「さて、まずは人里探しから行きますか。といっても、俺の場合は普通に飛行して空から人里を探すだけの簡単なことだけどな」
一人呟いてからいつもの感覚で飛行しようとしたら、背中から翼が生えてきた。
・・・・・・
俺は背中に違和感というか翼が生えたという感覚があったので、闇空間から手鏡を取り出して確認する。
・・・・・・
綺麗な紫色をした禍々しい翼が生えていました。
「何じゃ、何じゃこりゃああああああああ~~~~~~。え。え。え。え。え、待て待て待て待て待て待て待て待て、何で俺の背中からこんな禍々しい翼生えてんの、飛行スキルはどこに行った。というか俺飛行できるのか?」
試しに翼を使って空を飛ぼうとしてみる。
ビュン
と大きく翼が羽ばたき体が宙に浮く。
そして、そのまま翼は羽ばたき続け華麗に空を移動できた。
「うん、飛行は出来るな。じゃあ、いっか翼ぐらい、そりゃまあ、驚きはしたがしまおうと思えば仕舞える感覚があるし、飛行する際に出すだけやしね、それに、この禍々しい翼カッコいいし。最悪幻覚魔法を使ってほかの人に見えなくさせればいいしね」
俺は一人で納得すると、当初の目的であった人里探しを始めた。
10分後
簡単に見つかった。
見つけたのは、そこそこかなり大きな城壁が目立つ都市だった。THE城塞都市って感じだ。
ある程度近くまで飛行した後は降りて翼を仕舞い、都市へと歩いて向かう。
てくてくてくてくてくてく
歩いて城塞都市にある大きな門の前までつくと、いきなり、門番二人に槍を向けられた。
「お前は一体何者だ」
俺に槍を突き付けながら、どこか怯えたように門番が言う。
「それが、分からないのです。目が覚めたいきなり森の中にいて、なので人里を探していたら立派な城壁が見えたので向かったって感じで」
あらかじめ考えておいた言い訳を話す。
まあ、それにあながち間違ってもないしね。
「嘘をつくな、嘘を、お前は無傷であの魔の森から歩いてここまで来たというのか」
怯えと怒声が混じったような声で叫びだす。
魔の森って何?え、もしかして、あそこヤバめの場所だった。
確かにそういわれてみれば、あの森に落ちた瞬間魔物に襲われたし、ここの城壁がかなり立派なのも、あの森に住まう魔物たちから守るためと考えれば合点がいく。
・・・・・・・・・
さて、どうするか、よし、取り合えずとぼけてこのまま押し切ってみますか。
それで駄目だったら諦めて、他の都市を探すなり不法侵入すればいい。
「えっと、魔の森って何ですか?あそこはそんな危ない場所なんですか?特に危険な目には合っていませんけど」
少し、怯えた演技でやってみる。
「なに、まさか、本当に知らないのか?」
「なあ、俺のスキル真実鑑定で確認してみたが、彼は嘘をついていないぞ」
まあ事実だからな。あくまで俺が危険にな目にはあってないってだけだからな。
「何だと、じゃあ、本当に目が覚めたら魔の森の中にいたということか」
「多分、でも。あり得ないことではないぞ。あそこは未知の領域だ。何が起こっても不思議ではない、それに、魔の森だからといっても100%魔物に襲われるなんてことはない、偶々運良く、一回も魔物に合わなくても不思議ではないだろ」
「確かにそうだな、すまんかった、少年よ、疑い槍を向けてしまい、取り合えず迷子という処理でこの城塞都市の入場を許可しよう」
「ありがとうございます」
何とか入れそうだ。良かった良かった。
「何、良いってことよ。それより少年、貨幣、もしくは身分証、または価値のある物を何か持っているか?流石にこの城塞都市で何もない状態はきついぞ」
貨幣に身分証は元の世界のものならあるけど。こっちの世界のは無いな。でも、価値のある物って言われたら、金とか魔道具とか魔石にスキルの書とか?
流石にこれらは価値があるやろ。
「多分持ってると思います」
「おお、そうか、因みにどんなものだ」
「魔石と魔道具、スキルの書とかですかね?後は普通に金塊とかもありますよ」
・・・・・・・・・
「待て、魔石と魔道具に金塊は100歩譲って分かる。大分疑問は残るが。まあだけど、今スキルの書といったか?」
凄い、驚いたように言う門番。
あれ?これはもしかして、結構スキルの書がレアだったりする?
でも、隣の門番の人真実鑑定のスキル持ってたしな、ここで下手に誤魔化すなんて出来ないな。よし、正直に言うか。
「はい、言いました」
「そうか、因みに聞くがどんなスキルの書だ?」
ここは無難そうなのを答えておくか。
「身体強化や魔力強化ですかね」
「マジか、その二つを持ってるのか、じゃあ、忠告だ絶対にその事を他の人に言うんじゃないぞ、死にたくなければな」
そこまでか、これレアなのかよ。俺山のように持ってるけど。そんでもって山のように使ってるけど。でもこれ危ないな、まあ、言わなければいっか。それに最悪返り討ちにすればいいしな。まあ俺は強いからな。
「そうですか、忠告ありがとうございます」
「おう、よければ、そのスキルの書俺たちで買い取ろうか?もちろんオークションなんかに出品って考えると安くはなるが、俺たちに売ってくれれば危険も減るしお金も手に入る互いにいい条件だろ」
確かに、そうだな、この門番達はなんかいい人な気がするし、少々ぼったくられても今の俺的にはこの国の通貨が欲しい&山ほどあるスキルの書なので別に一つ消えても痛くも痒くもない。
「じゃあ、お願いします」
「おう、そうか、そうか、じゃあ、値段はこれでいいか?」
そういって、門番の一人が俺に金色に光る硬貨10枚渡してくれる。
それを受け取ると、俺は着ていた服の内ポケットに手を突っ込み取り出す振りをして闇空間からスキルの書を取り出した。
「はい、どうぞ、これで取引成立ですね」
「ああ、そうだな、じゃあ、これ仮身分証だ、一応保証人に俺とアイツの名前がある、犯罪をやると俺らに迷惑がかかるからやめろよな」
門番が俺にそう言って、一枚のアクリル板でできたようなカードを渡してくる。
こうやって、わざわざ仮身分証くれて保証人になってくれるってかなりこの門番いい人だな。
「色々とありがとうございます」
「何、俺たちは勘違いでお前に最初槍向けてしまったしな、そのお詫びもかねてだ」
「ああ、同じく、まあ、俺は少年のおかげで前々から欲しかったスキルの書をゲットできたしな、その礼もある、ただ、問題だけは起こさないように気を付けてくれ」
「はい、分かりました、では、また」
「「おう、またな」」
そして、俺は門番二人に見送られながら城塞都市の中に入った。
―――――――――――――――――――――――
補足説明
主人公の渡したスキルの書である身体強化と魔力強化は、それぞれ金色に光る硬貨もとい金貨10枚で取引されています。
金貨1枚の価値は日本円で10万円くらいです。
そう考えると結構ぼったくてるふうに見えますが、その物の価値を知らない相手に半分も払ったのは結構良心的だと思います。というかあの門番二人の自由に使える額が金貨10枚が限界だったというのもあります。
主人公と眷属の闇空間は繋がっています。
これは理由として無機物だからです。無機物は簡単に界渡りで異世界を自由に行き来できます。というか行き来してもなんの影響もありません。
ただ、一部例外として、その世界に100%存在しえないものはその世界に出した瞬間壊れます。
スマホとか機関銃とか核爆弾とかそんなのは持ってこれないということです。というかそんなものをこの世界観の異世界に持ってたら大分話が崩れますから。




