英雄・【火臥也・真羅】
俺は死霊転移で自分の寮に戻ってから今回の件について考える。
ようは店員さんは操られていたということだ。
多分だけどダンジョン国際連盟の仕業だろう。
いやにしてもこういうハニートラップを仕掛けてきますか。
ようは何かしらのスキル、【極洗脳】とか【極乗っ取り】とか【極精神操作】とかそういう感じのスキルを持った人がいて。店員さんと俺が接触したのを何かしらの手段を用いて確認して。スキルを使用し。店員さんを操作して俺が好意を抱くようにさせたって感じかな?
なるほど。なるほど。
これならば凄く理に適ってるし、納得が出来るな。そしてかなり不愉快だ。
少なくとも、もし俺が店員さんが操られてることに気が付かずに、流されてたら。それは確実に店員さんの本意じゃないだろうし。そのまま店員さんはずっと操られてダンジョン国際連盟に都合の良い人形にされていただろう。
ああ。凄く不愉快だ。
なるほど。でも確かにこれは考えられてるな。
まず敵が分からん。
いやまあダンジョン国際連盟だろうけど。それを実際に行ったスキルの持ち主やその協力者を探すのがかなり難しいという訳だ。
少なくとも俺一人で探すってなったら無理とは言わないけどめちゃくちゃに時間がかかるな。
でも俺には何万という眷属がいる。
さて、実行犯を縛りあげてこの命令を下した奴らを殺して俺の眷属にしてやろう。
【眷属共、今回店員さんを洗脳したと思われる奴とそれを監視してる奴らを捕らえて俺の元に持ってこい。もちろん全力でだ】
【分かりました。主様】
その瞬間俺の近くにいた眷属含め今手の空いていた眷属全員が俺の命令に従い駆け出す。
「さて、これで長くとも1時間すれば犯人は捕まるだろう。さて、じゃあそれまで本でも読むか」
闇空間からラノベを取り出して読んでいた時だった。
ドン
いきなり扉が開き何とも煽情的な格好をしたタイプの違う美女が3人、部屋に入ってくる。
なんなら一人は白肌金髪・一人は褐色黒髪・最後は白肌茶髪と。国から違う感じがするな。
「どうも。こんにちは」
「ねえ。良かったお姉さんたちと良いことしない」
「君の望むことをしてあげるよ」
そう甘い。無駄になまめかしい声で俺に近寄ってくる。
手には何も持っていなかったが懐にナイフを潜ませているのが探知で分かる。
あ。これは暗殺者だな。もしくは新たなハニトラだな。そう結論を付けたら悪即殺に基づき「死ね」と言おうと思い。思いとどまる。
もしかしたら店員さんみたいに操られてる可能性を考えて。
「洗脳魔法・完全洗脳」
全員を洗脳にかけて無力化させる。
「さて。じゃあまず、お前らは誰かに雇われてここに来たのか?」
「いいえ、私たちはここに死者を蘇らせることが出来る存在がいるという情報を貰い。来ました」
「ほう。因みに誰からの情報?」
「私たちの普段から使う信頼できる情報屋からの情報です」
「その情報屋の名前は」
「ありません」
「なるほど。じゃあその情報屋は何処にいる?」
「分かりません」
「じゃあ。どうやって接触してるの」
「向こうから私たちに接触して来ます。基本はその時にしか会えません」
「なるほどね。じゃあもう会えないだろうね。しっかしダンジョン国際連盟中々に凄いことするね。いやはや敵ながら天晴だよ」
「私の父を蘇らせるて下さい」
完全洗脳状態なはずなのに、急に白肌金髪の美女が俺に懇願してくる。
「どういうことだ?そういえばさっきも、情報屋から死者蘇生うんたら言ってたな?」
「はい。私は貴方様に私達の父を蘇らせて貰うためにここに来ました」
「私達の父?」
「はい。元々私達は孤児でした。そこで辛い日々を過ごしていたのですが、私達が6歳の時に父に引き取られ、そこで冒険者をしていた父の元で育っていきました。ですが3年前にとある魔物暴走を一人で止めに行ってそのまま・・・」
洗脳状態の筈なのに、三人ともが涙を流す。
なるほど。それだけ強い思いという訳か。
でも、3年前。魔物暴走。そこで殉職。
・・・・・・・・・
「もしかして。岡山史上最悪の魔物暴走・火天事件の英雄・火臥也・真羅が君たちの父親か?」
「はい。その通りです」
なるほど。そうだったのか。
そうか。
この娘たちがあの英雄の娘か。
なるほど。それならば俺は助けられた者の一人として敬意を払わないとな。
「洗脳解除」
「あれ?私達は一体?」
「なあ。君の父親、火臥也・真羅だよね?」
「はい。そうですよ」
「そうか。そうか。そうなのか。じゃあその死体を持ってるということか?」
流石の俺も死体がないと蘇生は出来ないのでな。
ただ逆に言えば。死体さえあれば今の俺ならば蘇生出来ると思う。
いや。違う。意地でも死霊神の名において意地でも蘇生をさせてやる。
絶対にだ。俺が彼に受けた恩を考えればそれくらいは当然だ。
「はい。あります。ただその大分焼け爛れてて・・・」
「どれくらいだ?どれくらい残っている?」
「えっと。5割程です」
「それくらい残ってるのなら、多分行けるかな。3年間立ってるってのが少しネックに感じるが、まあ何とかなるやろ」
「ほ。本当ですか?」
「ああ。嘘を言ってどうする」
「お姉ちゃん。本当だよ。私の嘘感知に本当って出てるよ」
白肌茶髪の美女が嬉しそうにそういう。
どうやら彼女は嘘感知のスキルを持ってるようだな。
ああ。なるほど。確かにそれならば情報屋の情報を信じて俺にわざわざ向かってきたのも納得出来たな。
いや~。実は少し不思議だったんだよな。
納得。納得っと。
「まあ。という訳だからな。案内してもらえるかな?」
「あのう。何で蘇生をしてくれるんですか?」
褐色美女が俺に恐る恐るという形で質問をしてくる。
「いや。まあ何だ。俺はその場にいたんだよ。その場にいたといってもその日偶然家族でそこにお出かけしててさ、いきなり魔物暴走が起きて、そしてダンジョン連合の職員に案内されるがまま避難をした。そうして命は助かったわけだが、もしもあの時。英雄・火臥也・真羅さんがいなかったら避難が間に合わずに俺含め全員死んでいた可能性もある」
今も当時の状況は鮮明に思い出せる。
そして俺は彼のおかげで救われた。
皆の為に命をかけて魔物暴走を食い止めたという正に英雄というに相応しい行動に心を打たれた。
「だから。まあ。恩返しだよ。俺は彼によって救われた者の一人だからな」
「う。うわああああああ。お父さん。やっぱりお父さんは凄いよ」
金髪白肌の美女が子供みたいに泣き出す。
その隣を見たら、もう二人の美女も泣きそうになってる。
え?今の話感動する要素あった?いやまあないことはないけど。そんな泣くほどか?
「ハア。まあいいや。取り敢えず泣き止んでくれ。泣くのはお父さんが蘇ってからでしょ」
「あ、ありがとうございました。えっと・・・」
「上野・泰斗だ。まあ、泰斗とでも呼んでくれ」
「えっと。泰斗さんありがとうございます」
「「ありがとうございます」」
「お礼は蘇らせてからでいいよ。さて、じゃあその場所まで案内してくれ」
「「「はい」」」
俺の言葉に三人は息ぴったりの最高の返事をした。
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後。悪女の娘と憑依者の魂という作品を新しく書いてみました。よろしければ読んでみてください。
こういう浮気をするからこの作品を毎日更新出来ないんだよというのは。もう。本当にすみませんとしか言いようがありません。
すみません。