絶望の会議
とある一室にて各国の要人達が揃い踏みしていた。
全員が忙しい中、日本にいるスパイ達からもたらされたとある情報により集められている。
「さて。全員集まったな」
「ああ。じゃが儂とて忙しいのでな早くしてくれ」
「そんなことを言ったわ儂じゃって忙しいさ。でも今回の議題は我が国の滅亡否。この組織全ての滅亡に関わる問題じゃ」
「ああ。そうじゃったな」
「そんなのはよいから。早く話し合いを進めるぞ」
「そうじゃな」
「して。皆よ。理解していると思うが今回の議題は上野 泰斗という人物についてじゃ」
「ああ。分かっておる。あの化け物についてじゃろ」
「おいおい化け物とは化け物に対して失礼じゃないか?化け物なんて言葉は生ぬるい、あれはそう。いうなれば死を司る邪神じゃよ」
「ハハハ。そうじゃな。死を司る邪神、確かにそれは凄くしっくりと来るのう」
「お主ら時間が押しておるのじゃぞ。ふざけずに早く上野 泰斗に対しての対策を考えるぞ」
「そうだな。でも実際問題どうする?」
「うむ。我らが取れる手は三択・懐柔か殺害か無干渉か」
「おいおい。懐柔と無干渉はともかく殺害は絶対にダメな悪手じゃろ。どうやってアレを殺害するのじゃ」
「それはもちろん我が国の暗殺部隊を使えば」
「その暗殺部隊で超絶大英雄純武をダンジョン連合創設者・天神 喰臥を殺せるか?」
「そ。それは流石に無理じゃ」
「じゃあ無理だろ。この報告書を読む限り上野 泰斗はあの二人を超える実力者である可能性が高いからな」
その言葉を聞き会談会場が静まり返る。
「ふむ。確かにその通りじゃ。少なくとも暗殺が可能な人間ならばとっくのとうに儂が暗殺者を送りこんでいるわい」
「そうだな。確かにお主ならばそうするわな」
「して。話を戻すぞ。上野 泰斗、彼をどうする?」
「そうじゃな。やはり選択肢は懐柔か無干渉の二択かな」
「ああ。でも。今現在。彼はダンジョン連合の作った学園に通い、裏ダンジョン連合に所属しており日本生まれ日本育ちであり、特に現状不満も持っていなさそうであるからな。懐柔出来るか?」
「ここは無難にハニトラでもしかけるか?彼とて男、それも15歳の男じゃ。まあ、本当に15歳か分からぬが、少なくとも調べる限りは15歳の男じゃからな。性欲は存在しておるじゃろう」
「よいかもしれぬな。でも。彼がやろうと思えば気に入った女を殺して眷属に出来るのではないか?」
「それもそうじゃのう?でもやってみるだけの価値はあるじゃろ?」
「確かに。それにこの組織の関連を疑われぬように手を回せば仮に失ったとしてもさして痛手ではない。もし成功すれば万々歳じゃ」
「ああ。そうじゃな。他にも金や権力なんてのも良いかもな」
「でも。彼の力を使えばお金も権力も自由自在っぽいがな」
「そう考えると彼には金銭欲や権力欲がさしてないのかもしれないな」
「そうなると案外性欲の方もない可能性もあるな」
「その可能性は高そうだな」
「じゃあ。どうするってんだ。このまま無干渉をするのか。いつこちらに牙を向くかも分からない超絶強大な爆弾を前にして。よう」
「まあまあ。そんなに怒るなよ?今それを話あってるのじゃろ?」
「じゃあ。どうしようか?」
「そうじゃな。でも流石に何もしないという選択肢はないよな」
「ないな。でも。何をする?」
「うむ。そうじゃな。取り敢えずハニトラは確定として、金と権力の方はどうする?」
「一応しかけてみるか。手は多いに越したこのはない」
「うむ。確かにその通りじゃ。とにかく出来る限り刺激しないように気を付けながら行えばよいじゃろう」
「そうじゃな。でもそれだけでは不安じゃのう」
「そうじゃのう。確かにその通りじゃ。ではこうするのはどうだ?一応私はこれでもダンジョン連合にちょっとした伝手がある」
「そのような伝手があるのか?」
「ああ。そしてその伝手を使って上野 泰斗がダンジョン連合に反旗を翻そうとしているという噂を流す。いや噂じゃあ足りないじゃろうから。証拠も捏造させてダンジョン連合と上野 泰斗で潰しあって貰う。そうすれば目の上のたん瘤が二つも減って素晴らしいじゃなかろうか?」
「なるほど。名案じゃな」
「おい、待つのじゃ。それが失敗した時はどうするのじゃ?」
「その時は・・・・・・」
提案者が口ごもる。
それも無理はない。何故ならばその作戦が失敗した場合に訪れるのはダンジョン連合と上野 泰斗という最強の2柱を敵に回すということなのだから。
そしてそれ即ち破滅であるのだから。
「破滅だろ」
今日何も話さなかったとある国の一人のスパイが声を発した。彼は今日上野 泰斗という恐ろしさを伝えるために自ら志願してこの会議に参加した者だった。
その瞬間会場の空気が凍り付く。
「おい。何を何を言うのじゃ。無礼だろ」
提案者の怒鳴り声が会場に響く。
「なあ。おい。100歩譲ってハニトラも権力や金をやるのはいいと思う。だがしかし、敵対的な行動は駄目だ。絶対に駄目だ」
何かに怯えるようにそう錯乱したように叫ぶ。
「失礼。少し錯乱をしてしまいました」
「ああ。そうだな。して一応聞きたいのだがその根拠は何だ?」
「根拠か。そうだな私は日本にてスパイを行っていた。そして私の配下である魔物を通してだがアレを見た。アレは化け物だ。いや化け物なんて言葉が生ぬるい化け物だ。死を司る邪神って言葉は確かにしっくりと来る。アレが声を発するだけであの日本で最も力を持った犯罪組織の人間がバタバタと倒れる、いや死んでいった。ただ何よりも驚いたのがアレだ。アレなんだ。アレは人間の出来る技じゃない。神の神の御業だ。ああああああああああ」
「おい。大丈夫か」
「ああ。すみません、今話しますね。それはあの虐殺があったからです」
「虐殺?」
「はい。それも皆様が思ってるような虐殺じゃありません。そこには何万人という犯罪組織の人間がいました中には国際指名手配されている凶悪犯罪者も多数おり。そこにいる犯罪組織の人間だけで国を一つ落とせるようなそんな戦力でした。だけどその大群をあの化け物はたった一言死ねと口にしただけで全員が死にました。私はそれを遠くからスキル【極眼】を使っていたので大丈夫でしたがその光景には自分も死ぬのではないかと思いました。ですが、真に恐ろしいのはその次でした」
「次だと?」
「はい。その次の瞬間。あの化け物がたった一言死霊生産と口にしただけで、いましがた殺された犯罪組織の人間全員が蘇りあの化け物に向かって跪いて忠誠を誓ったのです。アレは恐怖いや悪夢。そんな優しい言葉では片付けられないような出来事でした。私は逃げ出しました。すぐさま逃げ出しまた一刻もその場から離れるために貴重な空間転移の巻物を使って本国に帰還しました。そしてこの恐るべき事実を皆様に知ってもらおうと思い、今に至るわけです」
「な。なるほどね。今の話は多分事実なのだろうな」
「いや、待ってくれ。そ、そんなふざけたことがあるのか。だって、だって、数万の人間をそれも中にはかなりの強さを持つ凶悪犯罪者がいたのにも関わらず全員を等しく言葉だけで殺して蘇らせて眷属にするだと。そんなものそんなもの神ではないか」
「ああ。だから本当に神なのだろう。死を司る邪神、案外本当に当たっていて。死神とか死霊神とか死生神とかそんな名前を持っているかも知れぬぞ。事実神は本当に存在しているのだから」
「た。確かにそうだな」
「そうだな。にしても神か。となると。もしかしたらな自由自在に加護を与えたり使徒を作ることがあの上野 泰斗にも出来るんじゃないか?」
「もし神ならば出来るだろうな。実際この組織で最も強大な戦力を持つ氷戒は氷の神から加護を貰い受けて神の使徒となってるのだから」
「じゃあ待てよ。その上野 泰斗が神の使徒という可能性は考えられないか?」
「それはないと思われるのじゃ。断言できる」
「どうしてだ?」
「これは儂がダンジョン連合創設の学園に潜ませているスパイからの報告なのじゃが。どうやら彼は筋肉の神の使徒である鉄志という存在と戦って勝利をしているらしい。原則神の使徒は神の使徒に負けるとその権限を失い神の使徒ではなくなる。じゃがしかしそのような事態は確認されておらぬ。つまり彼は神の使徒ではなく神じゃということだ」
「なるほど。確かに納得できる内容だ。だが一ついいか?」
「うむ。何じゃ?」
「その情報初耳なのだが?」
「おっと。これは失礼なのじゃ。さして面白い情報ではないので共有を忘れておったのじゃ」
「さして面白い情報ではないじゃと。新しく表れた神の使徒、それも近接戦闘型の筋肉の神の使徒という存在にそれに勝利する神の情報。そんな貴重な情報を共有せぬとはどういうことか。まさか裏切りか?」
「おい。待て今ここで揉めても仕方がないぞ。それに情報を共有するとは言ってるが。全部共有というわけじゃないからな。お前の国だって隠してる情報の4つや5つあるだろ」
「まあ。そうじゃな。すまない。少し感情的になってしまったのじゃ」
「いいのじゃよ。そんなことよりも彼の対処を決める方が先じゃよ」
「ああ。そうじゃな」
「それで?結局どうするんだい?今分かってるのをまとめると欲を刺激する系統は厳しそうだけど一応行う、敵対をしたら絶対に詰むので敵対はしない。後はほぼ確実に神であるぐらいだけど?」
「そうだな。もういっそのことこの組織の全権をあげるのはどうだ?」
「何を血迷ったことを言っている。そんなのは駄目に決まっておるだろ」
「でもよう。案外いいかもしれないんじゃないか?」
「お主まで何を血迷ったことを言っておるのじゃ」
「だってよう。少なくともそうしたらこの組織の長があのくそったれたダンジョン連合創設者天神 喰臥よりもあの狂った戦闘魔の超絶大英雄純武よりも強い存在がトップに立つのだぞ。もしかしなくともこの組織がダンジョン連合を追い抜き世界の覇権を握ることだって夢じゃない」
「でも、それってこの組織じゃなくて上野 泰斗個人がだろ」
「そう言われるとそうだな」
「だいたい。その時儂らはどうなってると思う?お主らならば分かるじゃろ」
「それは。殺されて死霊にされるだろうな」
「ああ。そうじゃ。そうなるじゃろう。もし儂が同じ立場だったならばそうする」
「私もそうするのう」
「という訳だからこの案は無しじゃ?皆もそれでよいかね?」
「異論はない」「それでいい」「それはそうじゃろ」
他の面々も頷き同意をする。
「で?他に何かいい案はあるか?」
「もう。何もないんじゃないか?少なくとも儂は何も思いつかんのじゃ」
「でも。それでいいのか?考えたら他にもなにかあるんじゃないか?」
「そこまで言うならばお前が考えろよ。俺には無理だぞ」
・・・・・・・・・
「確かに。無理だ」
「じゃあ。これで会議は一旦終わりにs」
「ちょっと待って下さい。情報を。そう情報をもっと集めませんか?」
「情報?」
「はい。情報です。この資料以外にも上野 泰斗に対する報告は全てを目を通しました。その上で情報が足りないと思いました。彼の趣味は何なのか。片思いの人とかはいたとか、初恋の相手とかはいたのか?そして特に力を手に入れる前の情報を手に入れていきたいです」
「力を手に入れる前?」
「はい。だって。彼だって元々は人間であり幼少期は何の力も持っていない一般人でした。そして普通の学校に通い、普通の人と同じように生きていました。ですので。その時の人間だった頃の人間関係があるはずです。それを利用すればあるいは」
「なるほどな。確かに理にかなっている」
「じゃあ。彼の過去の情報を集めるということで」
「ああ。そうだな」
「そして過去の情報を元にして何か対策をするということでいいか?」
「ああ。それでいいぞ」
「では。今から上野 泰斗の過去の情報を集めるべく諜報員部隊を派遣しよう」
「うむ。我が国からも派遣するとしようか」
「では。私も」「儂の国も」「俺の国も」
「さてと。じゃあ。今回の緊急会議はこれで一旦お開きとするか。まだ多少の議題はあるが。それは別途資料を配布するからそれでよろしく」
「分かったのじゃ」
「それでは解散」
そうして緊急会議は終わった。
だがしかし彼らは知らない一人の馬鹿が愚かにも上野 泰斗の家族を人質に取ろうとすることを彼らは知らない。そして自分たちが破滅を迎えることになることを。




