図書館でのひと悶着
「うわ。懐かしいな。凄い久しぶりに来た気分だな。いや。実際に久しぶりか」
ついそう口に出してしまってから周りの目線で気が付く。あ、ここ図書館や静かにしなければということに。
「すみません」
俺はそう小さな声で言って頭を軽く下げてから適当に図書館を歩き始める。
図書館にある独特なそれでいて俺は結構好きな本の匂いを嗅ぎながらライトノベルの棚に移動する。
そこで昔、夢中になって読んだなとい思い出に浸る。
こうして見てると久しぶりに読み直したくなってきたから、一時期ドハマりしたとあるシリーズを手に取り。近くにある椅子に座って読み始める。
ペラ
ページをめくって一人黙々と読み進めていく。
そうして読んでいると昔を思い出してきた。
昔といってもこの本に嵌っていた中学生の時に自分の事。いうても1年、2年前の事。
ダンジョンに憧れて日夜身体を鍛えながら図書館から借りたラノベを読みふけていたあの頃の自分。
中学校では友人と馬鹿やったり、楽しく遊んでた自分、クラス一の美少女だった高嶺さんに友人と一緒につき合いたいな、なんて馬鹿なことを言ってた自分。
給食のおかわりじゃんけんでマジになっていた俺含む男子たち。気に食わない先生にいたずらを計画して実行して死ぬほど怒られたあの黒歴史。
女子大生に絡んでるヤンキーに何の正義感か注意をして喧嘩を売られて戦いになって。喧嘩とかはしたことなかったが才能があったのかフルボッコにして大怪我を負わせたあの思い出。いやまあこれは流石に怖くなってその場から逃げたんで誰にも言ってない黒歴史だが。
懐かしいな。
何だかんだであの頃は楽しかったな。
そんでもって今考えても心の底から思うのだが凄い彼女を欲しいと思ってたな。
付き合いたいって欲求がギラついてたな。
それで何か行動を起こそうとかはしてなかったが。だから彼女が出来ないんだよ、まったくもって愚かだな俺は。
まあ今は死霊神になったおかげというべきかせいというべきか少々性欲が死んだからな。いやはやあの喰臥が雑談中に俺の事不能とか言ってきたが、まあ、あながち間違ってもないんだよな。
悲しきかな。悲しきかな。
まあ、そんなことを考えても仕方がないか。さて、本の続きを読んでいきますか。
ペラ
そうして俺は暫くラノベを読みふけていた。
一巻を読み終わり二巻を取ろうと席を立った時に気が付く。
あれ?あそこで勉強してるの高嶺さんじゃねってことに。
俺が見つめたのに気が付いたのか向こうも俺に気が付く。
「あれ?もしかして上野君?偶然だね。こんな所で」
「ああ、そうだね。偶然だね。いやにしても図書館で勉強って相変わらず真面目だな。俺なんて図書館にラノベを読みにしか来たことがないよ」
「フフフ。相変わらずだね」
「まあね」
久しぶりにあった高嶺さんは中学生の頃とはほとんど変わってない様子だった。
強いていうなら少し痩せたように感じるぐらいかな?
・・・・・・・・・・
何か今フラグが立った気がする。
久しぶりに会った同級生が少し痩せてるってこれがダイエットとかなら分かるが。高嶺さんが性格的にそういうことをするような人には思えないし、何となく一度疑うと顔にも少し陰りが見えてきた。
何か悩みでも抱えてるのかね?
本当はよくはないが。気になったし。少し精神を除いてみるか。
俺は無詠唱で精神魔法を行使して、軽く精神状態を確認してみる。
すると、悩みや憂鬱、怒りに殺意に怯えの精神が見えた。
うん。確実に何かあるな。
まあ、ここで会ったのも何かの縁だ。俺が解決出来そうな問題だったら解決させてあげますか。後少し面白そうだしね。
「もしかして、高嶺さん。何か悩みを抱えていない?」
「悩み。・・・・・・、いや。そんなのは全然ないよ」
あ、誤魔化された。まあでもある意味当たり前か。そんなに仲が良いって訳でもなかったからな。断られたとなると無理して聞くのアレだな。
まあ、でも一応もう一度遠回しに聞いてみるか。
「ああ。そう?まあもし悩みがあったら何でも相談してくれ。俺。これでもダンジョンに潜ってから最強クラスの力と何十億というお金を手に入れたから。ダンジョン連合創設者との伝手とかもあるし。基本的な問題は全部解決出来るよ」
少し自慢っぽくなったけど。まあいいだろう。全部事実だし。
「フフフ。そうか。最強クラスの力を手に入れたんだ。そういえばずっとダンジョンに潜って最強になるって言ってたね。凄いね上野君は自分の夢を叶えたんだ。羨ましいよ」
最後の声だけ消えるような感じで哀愁を漂わせて呟く高嶺さん。
うん。何だろう。これは助けて欲しいってアピールなのか?それともほっといてくれなのか。にしても羨ましいか。そんな言葉を吐くってことは夢方面で問題でも抱えてるのか?
少しどんな悩みを抱えてるか気になってきたな。もう一回だけそれっぽく言ってみるか。
「まあね。でも。俺は行動をしたから夢が叶ったんだよ。これでも強くなるまでに何度か死にかけたし。四肢がもげるような怪我だって何度も負った。でも諦めずに行動をした。もちろん周りの力も借りたことはあったけどね。だからもしも。高嶺さんが悩みを抱えてて行動をする気があるな。俺に言ってくれ。大抵のことは解決してあげれるよ」
結構直接的な表現になったな。さてこれで何も言わないのであれば。ノータッチでいきますか。別に無理やり助けてやるなんて傲慢めいたことをするつもりはないからな。
「あのう。実は私脅されてるんです。助けてください」
高嶺さんはそう言って頭を下げた。お。その言葉を待ってました。うん。楽しくなってきましたね。いやはやどんな問題を抱えてて俺はどう解決しましょうか。いやはや実に実に楽しみだ。
「ああ。もちろんいいとも。だけど、ここは図書館だし一旦喫茶店にでも行こうか、もちろん俺の奢りでね」
「あ。はい」
そうして俺と高嶺さんは図書館から出て近くの喫茶店に入った。




