#1 転生してました
絹の靴に銀糸で縁取りをしている最中気付いた。
あれ?
私、異世界転生している。
ここは、パミール王国。
魔法や騎士のいる世界。
衛兵の父とお針子の母を持つ私は、15歳で母の口添えで工房に入った。
私が入った工房は、貴族の後ろ盾を持つ服飾工房だ。
ドレスだけではなく、靴や帽子などの服飾小物を扱う。
今は、辺境伯の3女のデビュタント用の靴の刺繍をしている。
靴といっても木や皮ではなく、絹のルームシューズのようなものに、金糸や銀糸で縁取りや模様を刺繍したものだ。
納期は、来週。
細やかなところはチーフが行うが、今は縁取りを行っているため、私の作業となる。
今週中に、自分の担当部分を終わらせチーフに渡さなければ、またチクチクと文句を言われる。
「私に彼氏ができないのは、あなた達が仕事の納期を守らないからだ。」
「納期を守るために徹夜もしないなんて、プライドはないの?」
はっきり言って、まだ無い!
4~5年働いているベテランさんならともかく、入って4ヶ月の小娘の私に仕事へのプライドはない。
働かなければ、食べていけないから働いているのだ。
母に、針作業を小さいころから仕込まれたからこの職業に就いたのだ。
いいものを作りたいという気持ちはあるが、食べるための就職という気持ちが80%を占める私に仕事へのプライドを求めるな。
あと、彼氏ができないのはそのきつい物言いのせいで私たちのせいではない!
しかし、チクチクと文句を言われるのはつらいのでせっせ、せっせと針を運搬しているときにふと気づいた。
山川 沙織。
それが私の前世(?)の記憶。
商業高校を卒業後、服飾の専門学校に通い、アパレルメーカーに就職した。
事務として…。
他人のデザインした服を他人が営業した書類通りに、工場への発注書類を作成する。
そんな毎日…。
自分の作りたいものは趣味として作っていた。
コスプレとか、個人受託で。
そして今、ミネアとしてお針子をしている。
あれ?
私、いつ死んだんだ?
ミネアとして生きている以上、沙織は死んだと思う。
いや、並行世界で生きているとか…?
分からない、
でも、死んだとしたら親が心配だ。
姉が一人いるが、県外に嫁いでいる。
これから、老いるであろう父母のそばでのんびり暮らすつもりだった。
縁があれば、お見合い結婚なんかして…。
(恋愛経験値0の私には恋愛結婚は敷居が高い。)
もし、私が死んだのなら父母の老後が心配で堪らない…。
思いを馳せて手が止まっていたのだろう。
「ミネア、手が止まっているわよ。」
同僚のフィーアが心配そうに顔を覗き込む。
心優しい彼女は、私がチーフに怒られないか心配なのだろう。
「ありがとう、フィーア。少し考えことをしていたみたい。」
フィーアに心配をかけないように笑顔を向け、仕事を再開する。
考えることは後でもできる。
今は、目の前の仕事を終わらせることに集中する。
なにせ、やることはいっぱいあるのだ。
そして、万が一納期が間に合わなければ場合によっては首が飛ぶのだ。
もちろん物理的に…。
異世界、怖っ!
初めて、投稿します。
誤字・脱字等多いかと思いますが、生暖かい目で見ていただけるとうれしいです。
設定の矛盾・漢字間違い等ありましたら、やさしく教えてください。(切望)
そのうち、ゴリマッチョをいっぱい出せたらいいなと思っていますが、主人公が若いのでゴリマッチョより細い人の比率の方が今のところ多いです。