表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑華戦記  作者: 紫雀
7/12

虜囚 7

舞姫と楽師達が部屋を退出した後

残された3人は縁台にあるテーブルについて海を眺めながら

紫苑に給仕させて五華茶を楽しんでいた。


「大した趣向だな、鄭眼叔父上、ここまでしないと皇子をつれだせなかったのか」

「さすがに察しがよいですな、虎狼様の間者がうるさくていかん」

「儂もだ。ときにこのナイフに見覚えはないか」


白珪はそばにあったサイドテーブルの引き出しから絹にくるまれた数本のナイフを取り出した。

鞘がなくむき出しの刀身、刃渡り18センチ、柄の部分に見事な象嵌細工が施されている。

実用というより、装飾品に近いものであったが、ナイフの刃は一級品らしく

大抵のものなら刃が通りそうだった。


鄭眼には見覚えがあった。

この美しいナイフは後宮に住まう皇女玉葉の求めに応じて作らせ

数か月前に宮廷に収めたものであった。


「ふむ・・・玉葉様と何かあったのですか」

「うん、あった」

 白珪は即答した。

「何があったのですか」

「据え膳を食わなかった」

「はぁっ?」


据え膳とは女のほうから情事を誘いかけること。

それを断ったというのだから皇女にしてみれば怒り心頭だった事だろう。

事情を察した緑華と紫苑は耳まで真っ赤になって絶句している。


「いいかげん、身を慎まれた方が」

鄭眼は若い二人を憚り渋い顔をして咳ばらいをして見せたが

お構いなしで白珪はわめき散らした。

「あの女、冗談ではないぞ、あやつは旅人を寝所に誘い込み

 事が終われば即座に殺して川に捨てている」

「白珪・・・」

さらに 鄭眼の声を遮って続けた。


「儂が調べただけでも五人は犠牲になっている」

「それで偵察にいかれたのですか・・・

 宮廷の醜聞は声高に言わぬ方がよいと思いますがな」

「そうだ。だから最近、そのナイフが儂を狙ってくるようになってな」


皇女が直接命を狙ってくるとは考えにくい。

お付きのものの仕業であろうことは容易に推察できるが、しかし、

なんとあからさまなアプローチであることか

ただただ、鄭眼は呆れるほかなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ