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緑華戦記  作者: 紫雀
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虜囚 4

「なんと、今、何と申した、鄭眼」

一同、一斉に入り口の方へ顔を向ける。

そこにいかにも商人らしい威風堂々とした男が立っていた。


「はて、聞こえませんでしたかな?緑華様は私共が

 お預かりした大事な商品。傷物にされては迷惑でございます」

「商品とはいかなる意味か?」

「本日をもって王よりこの鄭眼めに下げ渡していただいた奴隷でございますゆえ」

そういうと鄭眼は宮廷印の入った羊皮紙を両手で高々と掲げて見せた。


「奴隷と申したか、ならばこの虎狼がそなたの言い値で買い取ってやろう」

「あいにく、高うございますよ。緑華様は」

「いくらだ。」

「金一万眼でございます。虎狼様にお支払いいただけましょうか」


虎狼は眼を剥いた。金一万眼は功一国の国庫に匹敵する金である。

「緑華にそのような価値があると?」

「緑華様の美しさはつとに有名でございまして、世の金持ち連中の引く手数多なのでございます」

羊皮紙をくるくると巻いてひもかけながら含みのある笑いを浮かべて見せる。


「この世には桁外れの金持ちがいるもの、

 それに緑華様を引き取られる方はもう決まっております」

「それは誰か」

「虎狼様と言えど申し上げられません。私共、信用が第一でございます

 さて、事情がお分かりいただけたのであれば速やかにお引き取りいただきたいのですが」

「そなた、我に指図するか」

「私をお斬りになるのですか?王妃様はなんと仰せられますでしょう」

虎狼はちっと小さく舌打ちをする。鄭眼の宮廷への影響力は桁がはずれている。

「では」

そういうと鄭眼はぽんぽんと手を叩いて、部屋の外に控えていた

女官たちを呼び寄せた。

「皆の者、お客人がお帰りになられる。屋敷の外まで丁重にご案内申し上げなさい。」

虎狼と玉葉はにべもなく部屋から追い出された。侍従たちも慌てて後ろをついていく。


この場を支配しているのは明らかに主人の鄭眼である。

虎狼とは役者が一味も二味も違った。





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