表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑華戦記  作者: 紫雀
3/12

虜囚 3

ピシッと鞭の音が響いた。

もう何度目に振るわれた音かわからない。

鞭が当てられるたびに傷みと衝撃で体がのけぞる。

声を殺していたが息が上がっていくのはどうしようもなかった。

白い背中に何本のもの傷が走り、うっすらと血がにじみでている。


部屋の隅に座り込み

あふれ出る涙を拭いもせず、目を見開いてその光景を見つめている紫苑。

貴人の随従としてこの部屋にやってきた5人の家来たちは、

あまりの理不尽さに皆、目を閉じて顔を伏せていた。

誰も、この二人の狂人を止められないのだ。


「よいざまよのぉ、緑華、此度の戦で必ずそちは死ぬものと思っておったが

、まさか、敵将を倒して戻ってくるとはのぉ、まこと驚きじゃ」と虎狼がいう


「そなたも運がない、

 生きて帰らねばこのような責め苦を受けることもなかろうに」

後頭部をつかまれ、ぐいっと顔を上に向かされ、耳元で玉葉が囁く。


合点が言った。

過去の戦において常に前線に立たされ、死地に赴かねばならなかった理由。

実の父親に疎まれての事だったのだ。


この折檻も父の指図によるものだろう。

もう、よい、このまま死んでも、諦めの境地で目を閉じる。


「そなたはいつも静かだの。たまには泣いて見せよ。わめいて見せよ。

 そして命乞いをするのじゃ。でなければ面白味がないではないか、

 見よ、緑華、そなたの為に泣いてくれる女がおるというのに」


言われて目を転じると泣き顔の紫苑が目に入った。

「・・・紫苑、泣かないで・・・私の為に誰かが泣くのはつらい・・・」

苦しい息の下で女官に告げる。

「いいえ、いいえ、緑華様、あなた様はこのように誰にも愛されずに

 過ごしてまいったのですか?・・・おかわいそうに、緑華様」

紫苑の言葉が胸をえぐる。


自分を可哀そうと思ったことはない。

もうずいぶん前にこの感情は捨て去ったものだった。

母が亡くなってから誰に愛される事もなかったのだから


しかし、紫苑の言葉が一滴の毒のように心の中に広がった

だめだ、自分を憐れみそうになる。

憐れんで泣きそうになる。



また鞭が飛んだ。

緑華は気を失った。


紫苑は思った。

なんとかしなければ、このままでは本当に緑華は死んでしまう。

そうだ、鄭眼様ならこの場を収めることができるかもしれない。

鄭眼様に知らせなければ・・・意を決して顔をあげ立ち上がった。


「その辺にしていただこう。商品に傷をつけられてはたまらない」

その時、開け放った扉の方から声が響いた



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ