1章 弟
「ギルバート、はじめましてー。お前のおじちゃんは優秀なんだぞー。ギルバートに会うために仕事を急いで片付けてきたんだぞー。お前の髪は淡い緑だなー。目元やウェーブした髪がお母さんそっくりだなー。良かったなー。眉間に皺が寄らなくなるぞー。」
サミュエルがスペンサーを抱いて2年後に同じ部屋で赤子を抱き赤子に話掛けていた。
その光景に赤子の父親は眉間に皺を寄せ、母親は柔らかく笑っていた。
「兄さん。暇なのかい?」
「そんな事無いぞ。救援要請は毎日のように来る。その要請を緊急度により仕分けるのも大変だ。
まぁ、合衆国として1つの国になったから州と州の移動が楽になったな。今までより2つ程手続きが減った。そして何より侵略等を疑われなくなったな。そりゃ合衆国になってるから侵略もクソもないから当たり前だな。」
「そんな汚い言葉をギルバートを抱きながら言わないでくれよ。と言うか国中を飛び回りながらよく時間作れるね。」
「まぁ、2年ぶりだが、俺が優秀だからな。どうだ?スペンサーは歩くようになったか?」
「うん。歩くようになったよ。そうか、2年ぶりだもんな。シシー、エリックとスペンスを呼んできてくれ。」
「はい。」
シシーは部屋を出てエリックとスペンサーを呼びに行く。
「良かったな。淡い緑の髪の子だ。実力を伴えば家督を継げる。シシーも肩の荷が降りただろう。それでどうだ?スペンサーはどんなモノに興味を示す?」
「 うん。シシーには苦労かけた。スペンスは特に特別なモノに興味は示さない。ただ、庭に出ている時はすこぶる機嫌が良く、連れ戻そうとすると泣いた事もあった。」
「うーん。傾向としては風っぽいか。お前の小さい頃と同じだな。」
「そうか。でも、風だったら上ばかり見ているだろ?スペンスは上だったり下だったりあちらこちらを見ているんだ。」
「ほう。なんとなく予想は出来てきたな。」
「そうだね。確定は出来ないけど、3年後に備える事は出来る。」
部屋の扉がノックされ、シシーと共に2人の子供が入って来る。
「「こんにちは!はじめまして!サムおじさん!」」
「僕がエリック・オブライエンです!3歳です!」
茶色い髪の子が自己紹介する。
「こんにちは!僕がスペンスです!」
続けて深緑の髪の子が自己紹介する。
スペンサーにシシーが耳打ちして
「スペンサーです!2歳です!」
と訂正した。
それを見てサミュエルは目をウルウルさせ
「ディーン、本当にお前の子供か?ちょっと感動したぞ?」
「……兄さん。僕の子供達だよ。何が言いたいんだよ。」
「あまりにも可愛くて天使に見えたからな。愛想の良さもシシーに似て良かったな!
エリック、スペンサー、こんにちは!お父さんのお兄さんのサミュエルだ!よろしくな!」
そう言いながらサミュエルはふわふわウェーブの二人の頭に手を乗せ撫でる。
「わぁ!サムおじさんの手、でっかい!それにお父さまより硬い!スペンス!触ってみてよ!」
「本当だー。でっかいー。」
「ははは!痛かったか?ごめんな!毎日訓練してるからゴツゴツになっちまったよ!」
「ううん。痛くなかったよ!カッコいいなー!ドラゴンの鱗みたい!な、スペンス。」
「うん。カッコいい!」
「おい、ディーン。本当にお「俺の子供だ。」……」
ディーンはすかさず眉間に皺を寄せ言葉を被せる。
「あの、サムおじさんって悪いヤツをやっつける仕事してるんでしょ?お話聞かせてよ!ドラゴンとかと戦ったりするの?」
エリックが問い、スペンサーはワクワクさせながら答えを待っている。
その問にサミュエルは
「俺はドラゴンとかとはあんまり戦わないなー。」
その答えにエリックは首をかしげて
「じゃあどんな悪いヤツと戦うの?」
「エリックがもう少し大きくなったら話してやるよ!ははは!」
サミュエルはエリックとスペンサーを撫でて言う。
「さぁ、そろそろ仕事に戻るかな!シシー、ディーンありがとうな!また来るよ!」
そう言いサミュエルは帰り支度をする。
「兄さん、ありがとう。また時間が出来たら来てくれ。」
「ディーンをいつも助けてくれてありがとうございます。ギルバートに紹介したいので、またいつでもいらしてください。」
「サムおじさんまたねー!」
「またねー」
5人に見送られサミュエルは仕事に向かった。