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6 実は魔王とかいました


 さて、ちょっと混乱してきたのでまとめるね。


 今私が持っている能力が違う世界のものをこちらに交換する魔法。それでもって、神殿が私を比較的自由にするのは、私が『こちらの』世界の不用物を召喚する魔法を持っていると勘違いしていること。こちらの製品とむこうの製品はよく似てるもんね。ちゃんとラベルとか文字をしっかり確認しないとわからないんだよ、本当に。


 ここで問題。私が持っている魔法、ごみしか呼び出せないのか?


 それでちと実験。現在、私がいるのは貸し出されているお部屋です。それでもって床に掌サイズの魔法陣を呼び出してます。フローリングです、うちのアパート畳なんだよな、フローリングにすると高くなるから畳。


 んでもってその魔法陣の上に、この世界の硬貨をのせてみると……。


 光ったと思うとフローリングの中に吸い込まれる。

 そしてーー。


 こつんと落ちてきたのは、さっきの硬貨とほぼ同価値の十円玉でした。


「まじか」


 思わずこぼしてしまった。


 私は財布の中を見る。中には硬貨は残り一枚。だいたい五百円分の価値。


「……」


 思わず手がとまってしまったけど仕方ない。仕方ないと取り出した。さっきと同じように魔法陣を展開し、その上に置く。


 五百円玉相当でやってみるとどうだったか。すると五百円玉が落ちてきた。

 

 よし、一万円! と思ったけどやめた。


 一万円無駄にできないよ! お金は大切に!


 だって、地球の通貨、こっちじゃ使えないから。派遣の給料ですから。それに、十円のときより、五百円のときのほうがなんか疲労感半端ない、しかも腰に来てるんですけど。痛い、腰痛い。


 貴い五百十円の私の腰の犠牲によってわかったこと。


 結論、ごみ以外も出せる。ただ、交換するものが必要で、それはは私のものか、なくなっても問題ないものだけっぽい。泥棒になるからかな。


 それと、やっぱ魔法ってMP概念あるみたい。この調子だと私には千円レベルまでしか交換できない、でないと足腰立たなくなっちゃう。いや、ホントやばいんですよ、これ、明日仕事いけるかな?


 うふふ、知ってた、わかってた。

 私の能力なんてそんなもの、MPの存在わかってもステータスで見られるチート能力なんてないんですからね。一万円で試さなくてよかった。きっと恥骨が砕けてるわ。


 だけど、これ、訓練したら上達するものなのかしらと考える。


 もし、レベルが上がるとしたらいろいろ使い道があるんじゃないかな。






 というわけで、翌日。

 自分のMPの低さと腰痛に絶望しながら私はせっせとお仕事する。その合間に魔法の訓練したりして。倉庫内はちゃんと把握しとこう、他の人に気づかれたら色々面倒になるかもしれない。


 パルマさんにいつもどおり入庫した品物と、廃棄した処分品の伝票を渡す。パルマさん、それにしても仕事慣れてるなあ、ここ長いのかな。もっと他の仕事できそうなのに。


「あー、ありがと。ちゃんとできてるね」


 にこっと笑う彼女を見るとなんか懐かしく思える。しょうゆ顔のせいだろうか。


 前は彼女にも早く他の部署に移れないか話していたけど、今のところその必要はなくなってしまった。こういう倉庫の中のほうが、私の魔法は使いやすいのだ。


「あっ、もうお昼だ。ごはん一緒に食べる?」


 そう言われると私が断るわけないでしょう。パルマさんといれば、少なくともぼっち扱いされませんからね。


 食堂では、前に私が避けていたリア充さんたちの一人が座っていた。どうやら、私とは同じ職場らしい。倉庫管理ということで、場所が離れているため顔を合わせないだけだ。うん、ある意味気楽なんだよ、ここ。腰使うけど。


 私としては何ごともなく通り過ぎたかったけど、向こうはそうはいかないみたいだ。


「パルマさーん」


 うん、パルマさん、この人の面倒も見ているのね。知ってる、私だけの姐さんじゃないって。


「今日は新入りと一緒ですか?」

「はは、君のすぐ後に入ったんだけどね」


 うん、向こうは知らないだろうさ。私だけ一方的に知ってるのさ。


 そんあリア充くんは私のことはどうでもいいらしく、パルマさんにばかり話しかけている。私は自作のお弁当を食べる。焦げた玉子焼きと出来損ないの煮物が入ったものを。


 米はちゃんとこちらの世界にあるらしい。昔、稲刈り途中の農家さんが召喚されたらしく、おかげで美味しいジャポニカ米が食べられます。


 私は完全に無視されるので仕方なくテレビをつける。テレビといってもテレビもどきだ。なんかSFともファンタジーとも言い難し、グラフィックが魔法陣の上に浮いている。ただ、これは翻訳がうまくされないので、画像を見るだけでおもしろくない。借りている部屋にも家具といっしょに備え付けであるんだけど、まだつけてなかったりする。


 今後のこと考えると、ちゃんと翻訳なしで話せるように練習したほうがいいのかな。


 うん、テレビつけたのはいいけど、さっぱりわからん。目を細めてアナウンサーを見ていると、リア充くんが不思議そうな顔をして私を見た。そして、何も言わずリモコンを取ると、ぽちっと操作した。


「……」

「これ、副音声あるから」


 なに!?


 まじで!


 リア充くんの親切はそれまでで、私はそれだけで彼の株が上がった。一株三円くらいが一気に五十円くらいに上がった。


 目をきらきらさせながら、テレビを見ていると奇妙な台詞が聞こえてくる。


『ここ数年、静かだった魔王軍勢が……』


 はて?

 魔王ですと?


 HAHAHA、そんなわけないでしょう、そんな異世界ファンタジーみたいな……。


「うわあ、大丈夫ですかね? こっち飛び火しません?」

「うーん、首都近辺は一番安全だと思うけど」


 ごく普通に受け入れている二人。


 そうでした、ここ異世界で魔法があるファンタジーな世界でした。


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