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そして今年も終わる

 もう今年も、あと少しで終わりを迎えようとしている。

 十二月、三十一日。大晦日。

 真冬の外は、日が照り付けていてもそれを打ち消すように風が寒々しく、僕はもうしばらく前から、コートとマフラーが手放せなくなっていた。

 ドア一枚隔てただけのはずの街並みは、直前にあったクリスマスなんて最初から存在しなかったみたいにざわつき浮き足立っていて。

 それがやたらと騒々しく感じられて、鬱屈とする自分の足に必要以上に力を込めた。


 気付けばいつの間にか、年の終わりから始まりにかけてのこの期間が、嫌いになっていた。 縁起だとかが主だっている実感が掴めない催し事が万人総出で熱を上げて行われる感覚が理解できない、というのもあるにはあるけれど。

 それとは別に、この、置いて行かれることが許されない雰囲気、みたいなものが、僕はどうしようもなく苦手で馴染めなかった。一年に後悔とか未練がある人を、国中で無理やり次の舞台へ引きずり出すような、そんな感覚と言えばいいのだろうか。

(クリスマスのが、まだましだな…)

 つい先週にあった聖夜を思い出して、感慨に耽る。

 鮮やかに彩られた風景と、駅前のケーキ屋の人混み、それに至る所で流れるクリスマスキャロルと、たくさんの、手を繋いだ男女の姿。

 クリスマスみたいなイベントは、存外嫌いじゃない。

 枠外の人をちゃんと置き去りにして、然るべき人間同士が楽しむことができる催し事というのは、良いものだと思う。

 参加できないことを許容してもらえるというのは、僕みたいな人間にとっては、ある種救いのようなものだから。

 気を紛らわすために入れていた私用を片付けた足で、自宅最寄り駅の改札を抜けて外に出る。現在、時刻は19時半。遠目に目立つ謹賀新年の垂れ幕から目を逸らしながら重たい荷物を引き摺り、何か食べてから帰ろうかと考えて普段よく行く食事処を回ると、どこも年越しの関係で休みになっていた。

 仕方なく、駅の近くまで戻り、ハンバーガーショップでジャンクフードを適当に買って一人暮らしの家までの帰路についた。年越しだからと蕎麦を食べる気には、どうしてもなれなかった。変な意地を張って馬鹿みたいだなと自分でも思う。

 人の量が普段の倍近くにまで増えた通りを抜けて路地に入ると、ようやくいつも通りの場所になった気がして、息の詰まりが少し和らいだ。

 片手で煙草を取り出して火をつけ、歩きながら吸った。上を見上げると、本当に控えめに、幾つかの星が見えた。

 アパートに戻って電気をつけて、荷物を下ろして暖房とパソコンの電源を入れる。

 部屋が暖まるのを待ってからコートを脱いで布団の上に放り、買ってきたジャンクフードをパソコンデスクの上に広げてもさもさと口に入れた。

 食事を終えてゴミをまとめて袋に入れ、適当な動画を漁ったりしていると、まだ21時過ぎだというのに、強烈な眠気に襲われて、ろくに寝支度もせずにパソコンもつけたまま布団に寝転がった。年が変わる前に書きたいものがあったのだけれど、とりあえず1時間位なら、寝てもいいだろう。


 こうして、大半の人より一足早く、僕の今年は終わる。

 意味ある何かを残せないまま、次の舞台が始まっていく。




紛れも無い1時間半クオリティ。

大晦日に早々に寝たり次の日帰省した実家のネット環境が不安定だったりでこんな時間に。

大晦日やお正月は、こんなことを書いていますが帰省した実家で豪華な食事が出てくるので悪いことばかりではないなぁと思ってます。

でも基本的には大っ嫌いです。


近いうちに短編と短編(?)を2本上げます。1本は恋愛物です。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんばんは! 今年も希乃さんの文体は無機質ぽくって 透明感みたいなものがあって僕は好みです。 次回作品も頑張って下さい。
[良い点] 壮大に何も始まらないって感じが逆にリアルでいいかもしれません。 [気になる点] 変に気取らないでもう少しだけラフに書いてもいいかもしれません。 [一言] 新作ができたら読みに行きます
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