いざ公園へ
――日曜日午前八時
自分は走らせていた。麻衣の所まで――メールでで着信音をボコボコ出して自分を無理矢理目覚めさせられた。自分はゲームとアニメに熱中して三時間しか寝てないんだぞ、しかも日曜日ときた、ムカッと来る。
走らせてる内に麻衣の家まで来た。以前にユッケを出された事は覚えてるからな、アレで何日間休んだのやらか。…バイクは置いてあるのだが肝心の麻衣の姿が見えない。準備してないのか?四気筒のGSR400が唸る――
「ブゥーーーン!」
想像以上に目立つ音だったな。これで奴は目覚めたであろう。二階のカーテンが開き、麻衣が手を振る。寝間着、野郎が誘っておいて何故寝間着。
また寝間着のまま麻衣が玄関から出てくる。
「二時間寝ちゃった」
「寝ちゃったじゃねーよ! あんなにしつこく連絡してたのにどうして寝るんだ!」
「待ってて、今支度してくるから」
これだから麻衣は――自分は外で待つ。実は言うと麻衣の親父さんとは話した事無いんだよな。
パカパカと麻衣が歩いてくる
「待った?」
「それはお前が言う言葉じゃない。自分が言う言葉だ。待ったって言う前に先に支度しろよ」
「ごめんねー」
「まぁいいや。それで何処に行く?」
「とりあえずマック」
自分も朝飯は食べていなかった――っていうか食べれなかったが正しい。
「いいよ、行こう」
麻衣もエンジンを付けて跨る、マックまでか。
――午前十時半
少し走った所にマックがあった。朝からジャンクフードなんていつ振りだろうか。日曜日の十時だと言うのにお子さん連れからお年寄りまで入るものだな。
――まだ朝メニューか。そういえば、朝メニューなんて何年振りに見るんだろう、普段マックだなんて行かないし滅多に外食もしない。家の飯が一番という訳でもなく外の飯が一番という訳でもない。自分は食べれればいいんだろうな。うーん――何にしよう?
「こちらにどうぞーご注文はお決まりですかー?」
自分こういうのが嫌い、上のメニュー表を見てるのに店員といったら直ぐに急かしてくる。自分は悩んでるでしょうが!
「あーメガマフィンセットで、ジンジャーエール」
「こちらサイドメニュー、ハッシュポテトに変えられますが?」
「あ、それで」
「かしこまりました、隣でお待ち下さい」
ハッシュポテトなんていつ振りだろう、このハッシュポテトって簡単に作れるのにレア感あるよねー、あのパフェに付いてるクルクルってした筒状のお菓子くらいレア感あるよねー。日常中のレア感はともかく、麻衣は何を頼んだのだろうか? 自分は適当に席に座る。麻衣も前に座りプレートを机に置く。
「オウッ、エッグマックマフィンにチキンナゲットか、重いな」
「羽海ちゃんこそメガマフィンって女の子らしくないよ」
「どっちもどっちだと思うんだがな。」
こういった一日の始まりも悪く無い。何れかコイツと何処か長い旅にでも出るだろうな。三~四日くらい関東をグルっと周った旅にでも出たいものだな、いやコイツは絶対に言い出しそうだ。
マックでの食事も終わりバイクの下に帰る。
「さ、出掛けようぜ」
「……」
「どうしたの?早く行こう」
「待って、何処に行こうかって決めてるの」
「はい?」
「羽海ちゃんは何処に行きたい?」
「朝から呼び出しておいて支度もせずに寝間着で出てきた挙句に何処に行きたいと来たか」
コイツとことん酷いな。まだ一年の付き合いだけど。
「んー? 何処かアニメの聖地?」
自分と麻衣が知ってるアニメの聖地を探す
「埼玉だって」
「断る、自分帰るぞ、マジで帰るぞ」
「待って待って! 探すから」
自分も一応探す、何でこんな事になったのか教えてほしい。麻衣は
「埼玉とか茨城とか群馬とかー」
と言ってるが残念ながらもう十時だし自分も苛立ちが隠せない――そこで
「アンデルセン公園なんてどうだ!」
思いっきり言ってみた。
「おー……えー?」
「お前が事前に決めなかったのが悪い。決めなかったら本当に帰るぞ」
「行きますかー」
麻衣は渋々応える、泣き顔だけど泣きたいのは自分だぞ、麻衣――
__午前十一時
ここ、アンデルセン公園は一九八七年…昭和六二年に"わんぱく王国"として開業したテーマパークである。テーマパークと言われるが某浦安市舞浜テーマパーク程広くはない。だが、某浦安市舞浜テーマパークの二つのテーマパークに次ぎ日本国内3位の人気である。そして世界で見ると十位という驚愕の数字である。アンデルセン公園では子供も大人も遊べる公園で、体力付けにはもってこいの場所だ。尚「アンデルセン」の名称はアンデルセン公園所在地、船橋市の姉妹都市として結ばれているデンマーク王国のオーデンセ市生まれの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンの名前に由来してる。無論、自然も沢山あり、とにかくやれる事はここでやる事が出来るのがここアンデルセン公園だ。
因みに――童話作家アンデルセンの名作は「マッチ売りの少女」「みにくいアヒルの子」「裸の王様」の三つだろう。
「説明どうも」
あ、いえいえ
「喋るんじゃねぇ登場人物に向かって」
「羽海ちゃん怖いよ…誰に向かって話してるの?」
麻衣には聞こえてないのか?自分はたまにこの説明文を出してくる人がうっとおしいと思うぞ。とりあえず着いた。地味に長く感じた。船橋市から船橋市なのに。麻衣と共に警備員に誘導されて駐車場に入る。だがバイクが止められそうな場所が無い。別の近くの警備員が言う
「バイクは駐輪場に停めてー」
「あ、はい――チッ、うぃっす」
あの警備員許さねぇからな。ガソリンがぁ――って気にするほどでも無いか。自転車と混じって自分達のバイクも止める。デカいバイクで女子高生二人、かなり異端な存在に感じる。回りもお子さんだらけで注目の的、小さい子が見てたので手を振ったが逃げてしまった。
自分達は高校生の部類に入るから六百円、大人になると九百円ってテーマパークの部類に入るわりに安め……なのかな? 六十五歳になると無料で入れるとの事、小中学校は二百円って随分と安く入れるじゃないか、それで一日潰せるなら十分だ。麻衣と一緒に自販機に千円ずつ入れて二枚買う、入場口を入ると
大きな風車が見えた。「一枚撮ろうよ」と麻衣がカメラを向けてくる。
パシャ
「なんで羽海ちゃん真顔なの? もう一枚撮るよ」
パシャ
自分はまた真顔だった。
「羽海ちゃん……」
「どんな顔すれば良いんだよ」
「笑ってよーピースするとか」
「あまりこういうの好きじゃないから次に行こう」
自分達はアスレチックがある方に向かった。
パンフレットで見ると、ワンパク王国ゾーンという所に来たようだ。まだそんなに朝食を食べてから時間が経っていないが、フードショップのテーブルで休憩している、麻衣がフードショップのラーメンやカレーを食べたいと言い出したからだ。自分は先程のマックで甘いものを食べていなかったので、ソフトクリームを買って食べている。三百円也。あまり美味しくないが……
麻衣が戻ってきた。カレーは買わないでラーメンを買ってきたらしいな。
「あんまり美味しくなさそうだよ名柄川ちゃん」
白いカップ容器に麺と玉子と和布が乗っているだけだ、自分はここで食べるラーメンよりも店で食べるラーメンの方が美味しいと思うのだが――
「――ウッ」
どうやら美味しくないようだ……。
一食終えて歩き出す、大滑り台というのがあるのでそこまで行く。
「幼稚園以来だなぁ、大人になってみるとそんなに大も着くような滑り台でも無いな」
「十分大きいと思うんだけど……」
「そう? まぁ落下したら骨折以上は確定だろうね」
話してる内に出番が来たので体育座りになる
「それじゃ、行ってくるよ」
自分は滑る――ローラーが痛い!確かに滑るには滑るがガクガクと上下に揺れてかなり痛い。子供達が持ってたお尻を傷めない道具が欲しい! これは生で滑ったら確かに痛い――そろそろ出口だ。自分はブーンのポーズで着地する。麻衣はまだまだ滑っている。自分はお尻の安静を気にする
「いった~い!」
何事かと見たら麻衣が宙を浮いて尻餅をついてた。そのまま浮くとか前代未聞だぞ。
「麻衣大丈夫か?」
「お尻が……お尻が!」
とりあえず、麻衣を立たせて様子を見る。
「何か付いてない? というかジーンズの部品削れてない? 大丈夫?」
「色々心配してるけど大丈夫だよ」
麻衣のジーンズに付いた砂をパッパッとはたく。大滑り台で怪我したらアスレチックで遊べなくなっちゃうじゃないか、心配させやがって。
――午後一時
アスレチックコースの入り口に着く、アスレチックコースは4種類あって ファミリーコース じゅえむの冒険 力試しの森 ダイナミックの4つ。
「とりあえず、ダイナミックコース行ってみようよ」
「ダイナミックコースか……中級者から上級者向けって……」
いきなり中級者から行くか…。
まずは、No1「デコボコ丸太走り」
「丸太を駆け抜けるってコレ無理じゃない?」
「まぁ乗るだけ歩いてみようよ」
一つ目の丸太に足を掛ける、だが自分の靴が安定しないからかグラグラと体を揺らす。「落ちたら死刑なー」と子供が言う。おのれ、知らぬ人を死刑にかけるでない。一方、麻衣はライダーブーツだからか安定して丸太から丸太にと足を掛け渡っている。そして横から見たらあからさまにシーソーのようになっている所に麻衣が足を掛ける。「うわぁ!」麻衣の体重でシーソーが傾いた。だが安全を考慮してるのかそこまで傾いていない。
「そこを誰も渡らない理由は渡れないからだな……」
「でも私はここを渡る」
忍び足で麻衣は渡る。進め……進めっ……麻衣……! まぁ自分は他の丸太を渡るんですけどね。
次はNo3「ロープネット移動」をクリアしてからのNo4「輪うつり」
ロープネット移動が辛かっただけにもうやる気が無い、体力なんて無い。無造作に設置されたロープにくくった輪に足を掛け移動する。某ゴリラのアクションゲームでこんなの見たぞ。
「足が…届かない!」
なんて麻衣は身長が微妙に足りなく足を伸ばしては届かない現象が多く発生。
「うおおおっ!? ムリムリ!」
なんて自分は足を掛けてた輪が膝部分にまで入って脱出が不可になったりなんてした。
「おねーちゃん早く早くー」
「待っててね……! 今抜けるからっ……!」
順番なんて待ってないで右の輪に足を掛けて通り抜けろよ、マジで。とにかく助けが必要だ――
「麻衣ー! 麻衣―! ヘルプ!」
「そっちいけない~!」
麻衣の方向を見ると足がとんでもない方向に曲がって引っかかっていた。クソっ、八方塞がりか!
「もういいや」
ゆっくりと落ちた。
No8「ロープジャングルすすみ」No7の橋を抜けたら次はロープジャングル
「見れば見るほど安定しなさそうだ、自分は降りる」
「名柄川ちゃんダーメ、ちゃんとやらないと」
麻衣が言うならば仕方がない、通るか。一つ目のロープに足を掛けただけでロープが弛んだ、これが何個も続くのか……。
麻衣は真ん中から、自分は左のロープから進むことにした。自分は安定……とまでは行かないが所々に建っている中間地点で休みつつ移動する。麻衣は真ん中にそびえ立つ丸太を目指していた。
「麻衣絶対やめなって! 誰かが乗る度にそこの丸太揺れてんじゃん! 折れるよ!」
「私はここに乗りたいの!」
麻衣は丸太に足を掛ける、安定していた。まぁ体重は軽いから大丈夫……。
とりあえず、クリア!
No9「丸太ヘイうつり」ヘイというのはそう塀だ。塀になってる、ほぼ垂直。塀の上にロープが掛かっておりそこに手を掛け右に移動するというのだが、先に麻衣が行く
「あーっはははは! 無理無理無理! はははは!」
麻衣を見ただけで分かった、これ通れない。笑いが込み上がる程キツいのだろうな。
「ここは無理だよ麻衣、自分達には早すぎたんだ」
「はぁ……後ろの10番やろう……」
No10「丸太クイわたり」まぁなんて言うか……アスレチック。
いや説明のしようが無い、刺さった丸太に足を掛けて移動するだけだから事故も無い……ハズ。まぁ3m4mある丸太に足掛けて移動する訳、オーケー?
No11「ネットとびつき」斜面を走ってネットに飛びつくとのこと、自分は飛びつきなんてせずにさっさと登ってしまったが麻衣は「あたしやるから」なんて言って誰も居なくなった所を見計らって飛びつくらしい。さっそく好機が来たようだ。麻衣が走る! 飛んだ! 落ちる……落ちた……。
「何で落ちるんだよ……」
「飛距離が……そんなに無かった……ライダースーツが重い……」
パット外して来いよ、麻衣。
No13「イカダわたり」……ついにこういうアスレチックが来る頃だと思った。
イカダと言えばサバイバル、サバイバルと言えば島、島と言えば……海……海は水……水だ。池の上にイカダがロープで結ばれて浮かんでいる。尚自分達の装備品はバイクの鍵にポーチと……携帯だ。何としてでも渡らなければならない。
「さぁ、行くよ!」
足を掛ける、掛けた途端に沈んだ。
「うわああああ!」
自分は怯んだ。そして竦んでしまった。
「私は行くから」
と麻衣はイカダを渡る、だが沈む事無く進む。何が違うんだ?と見たらイカダの中央に足を掛けて移動していた。単に足を置く場所何だな
「なーんだ、んじゃ麻衣お先」
タッタッタッタッとイカダをクリアした。沈むわけにはいかない。
No14「四つんばい全身」だなんていやらしい姿を見せる自分があった。だが麻衣は絶妙のバランスで丸太に立って移動、自分は前者の通り移動。
「きゅううぅぅん……」
「羽海ちゃん変な声出さないの……子供いるんだよ?」
「あ、悪い」
気持ちが高ぶるとこんな感じに変な声が出る、別に気持ちいいという訳では無いから勘違いしないように。
いよいよ終盤No17「ロープクライミング」これは自衛隊とかの訓練とかで見る奴だな。ロープを持って上に登る……っていうかこれ終盤に出すものではないと思う。自分はロープなんて使わずにスイっと上がる、麻衣はロープを使うが自衛隊もビックリの速さで上がる。麻衣……あんた体力があるのか無いのかが分からないよ……。登ったら次は下るが……ネットが張ってあってそれを使って下る。
No18「ネットくだり」
「怖いー無理ー降りれないー」子供は言う
「大丈夫よーお姉ちゃん達を見てみて、ああやって降りるんだよ」と子供のお母さんは言う。
中々高い所から降りると流石に怖い……気をつけて移動しないとッ……!
「うおおお!」
足が滑った、親御さんごめんなさいこれは滑る。
「青ざめてるよお母さん方、名柄川ちゃんどうするの」
「……」
終盤だから自分は何も言えなかった。だって事故は起きるものだもの。
No20「四つんばい横進み」また四つんばいか……。
今度は中央の丸太に手を付いて下の丸太に足を付いて移動するのだが、自分は何を思ったか中央の丸太に乗って移動した。
「羽海ちゃん何してるの」
「四つんばい移動ってこうじゃないの?」
「どう考えたってこうでしょ」
「こうでしょ」
自分はここで我に戻ったが、既に遅かった。子供が後ろから来ていたので降りようにも降りれない。そりゃ子供もジーっと見るわな。変な人が居るんだから。仕方が無くスイっと体を使って移動する。だが子供から衝撃の言葉が走る……。
「おねーちゃんおっぱいちっちゃーい」
……。 …………。 ………………。
「プッ」麻衣は笑っていた。麻衣は既に実ってるしな――この場でこの言葉を指すのは自分だろう……。
自分は思わず。
「無くて悪かったな! そりゃここの場所もおっぱいが無いから移動出来るでしょ―よ! 自分だってなりたくてこうなりたかった訳じゃないからな! デカけりゃいいってもんじゃないでしょうよおっぱいって! なして……なして人はおっぱいを求めるんかて! 男って最低やで! ほーんに! 何かいうてみぃこのやなわらばぁ! しょーしんだなーとかおとましー思わんか!」
「名柄川ちゃん! 子供にムキになってどうするの! っていうか色んな方言出てるよ! 全然分かんないよ!」
「はっ、しまった……ゴメンな」
翻訳すると『どうして……どうして人はおっぱいを求めるんだ! 男って最低! 本当に! 何か言ってみろこのクソガキ! 可哀想だなとか気の毒だと思わないか!』って言ったつもりだが何故か……方言が出た。しかも地域バラバラ……。
子供は泣き出してしまった。
「ゴメンな……ゴメンな……」自分はなだめるが、どうにもならない。うわ、お母さん来た……。
「あらあらウチの子がどうしたの?」
「おねーちゃんがぁ……いじめたのぉ……」
話をややこしくするんじゃない! 実質そうだけど!
「ちょっと話聞いても良いですか?」
ということでベンチまで連行される。
――午後三時
「――ですから、ちょっと胸の事を言われて」
真実を言ってるのだがどうも聞き入れてくれない。クレーマーが如何に怖いかを思い知った。自分の意見を言うだけ言って聞き入れてくれないのだな。子が可愛いのは分かるよ。でも人の話は聞いとけ。
「本当に言葉責めしただけですか!? この傷とかは? まだ九歳なんですよ!」
「自分は傷を付ける事とかしませんよ! ちょっと胸の事を言われて言い返しちゃっただけなんです!」
「どうなの! ねぇ、この傷はなぁに?」
だから人の話を聞けって!
「おねーちゃんからは何もされてないよ……僕が悪いの……おっぱいの事言ったからおねーちゃん怒っただけ……」
「……」
「え? あ? あらホント……あの、何かごめんなさいね……」
「分かってくれればもう良いですよ……坊や、アイスでも食べるかい?」
「いいの……?」
「ああ」
「ありがとっおねーちゃん」
自分は渋々売店に向かった――はぁ、三百二十円かぁ。
親子と和解をして麻衣の下に戻る。
「お待たせ、ごめんな。ゴタゴタで」
「ううん、楽しめたからいいよ」
見てたみたいだな…恥ずかしい。
「もう……帰ろうか……」
「楽しんだし、帰ろうか」
二人の意見は一致した。
今日あった事はまぁ気にせずに帰る準備をする、今日だけで色々あったな、今度は計画的に行こうぜ――麻衣。