逃走
羽海が麻衣、鷹見と知り合い、数週間が経った。
羽海も教室に馴染めたようで、他の人とおはようと交わしたり、話をするようになった。しかしそこまで深い話をせず、大体は麻衣と話をするようになっていた。大体はバイクの話であったが……
「このkawasakiのさーNinjaってバイクカッコよくない?」
「うん、いい緑だね……」
あまり羽海は乗り気では無かったが、話を聞くことにより知識が付くのかもしれないと思い、話だけは聞いていた。そう、話だけを。免許の話になると「免許は取らないかな」と断る。母からは「車の免許は取っておきなさい」と言われてるだけで別にバイクは目にも無かったのだ。
ふと、教室の扉の窓を見るとキョロキョロと何かを確認する人が居た。
「ねぇ麻衣ちゃん――なんか居るよ」
麻衣も後ろを振り返り確認すると
「うわ、本当だ。あれ女子選別してるんじゃない?」
「あー居るよね新入生確認する人、気持ち悪ーい」
偶然にも羽海はその選別をしてる生徒と目が合ってしまった。咄嗟に羽海は伏せてしまった。
(目合っちゃった目合っちゃった、どうしよう)
と扉を開ける音を名柄川羽海は聞いた。
(入ってくる――)
ムギュムギュと上履きと教室の床が擦れる音が羽海に近づいていった。
顔をあげるとその人が目の前まで来ていて何かを喋ろうとしていた。
「あのー」
「はい……」
「好きです」
教室が凍った、ざわざわとしていた教室がシーンとなったのだ。
「俺の名前は三上崇! スポーツはサッカーしてます! 好きです!」
「君! 何かの罰ゲーム! なんなの!」
「いいえ、惚れました! よろしくお願いします!」
「嫌! 君の事知らないし、分からないし! 嫌!」
羽海は断った。だが、三守は
「じゃあ友達からでも! 自分2-C組の三守崇です!」
「友達からでも嫌よ! 何よ! この教室から出てって!」
流石にきつく言われたからか三守は諦めて
「あ、はい――ではまた今度……」
三守は1-A教室を出た。「名柄川さん大丈夫?」や「羽海ちゃん大丈夫?」と慰める声「大丈夫、嫌いアイツ」と無理矢理なファーストコンタクトは険悪だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
――正午
三守は羽海が食堂で食事をしてる所を狙って席に座った。
「貴方、名柄川羽海って言うんですね」
「うごッ!? ゲホッ……ゲホッ……」
唐突過ぎて名柄川羽海は味噌汁を吹いてしまった。
「友達からじゃ駄目なんですか?」と三守は言うが「あの後からよくそんな事言えますね、お断りです」と断る。――だが、三守は「お願いしますよ~」と引き下がらない。羽海は立ち上がって給食のプレートを返却口に返す。何も言わずに三守を置いていって食堂を後にした。
__放課後
羽海は走っていた。授業中や休憩中に何度も三守が襲って来て放課後も絶対に三守はしつこく構ってくるだろう、と思いホームルームが終わったと同時に走りだした。
「大丈夫、大丈夫――」
と言いつつ走る……のだが、現実は非情である。
「名柄川さぁーーん!」
「――速い!」
三守は部活を放り込んで羽海を追いかけてきたのだ。だが、予め走っていた羽海の方が有利だった。
私鉄の駅近くで、改札を抜ければゴールは直ぐである。
「もうすぐっ……!」
ICカードをピッとやって改札を抜けた。もう大丈夫と一息付いていたが
「待ってぇ」
三守は改札を強引に通る。
「ちょっと!?」
不意を突かれたがそれに負けじとまた羽海は走りだす。電車は着ていた、ピィーと駅員が笛を鳴らす。羽海はその電車に飛び乗り、扉が閉まる。三守は電車の扉をドンドンと叩いていたが駅員に捕まりその後どうなったのかは駅員と先生のみぞ知るのであった。電車が行った後の三守は「名柄川さーん!」と叫んでいるだけであった。
(とんでもない一日だった…)
※ ※ ※ ※ ※ ※
その後は三守も問題を起こして謹慎を受けているのか、それとも諦めたのか羽海はまたいつもの日常を送っていた。帰ろうとしていて準備をしている羽海は後ろから肩を叩かれる。
後ろを振り返ると
「あの……初めまして……仁宮蘭……です」
「あ、知ってるよ、名柄川羽海です、よろしくね~」
「あ、あ……」
仁宮は戸惑っていた
「知ってるなんて……その……」
「意外だった? 後ろの席なのに中々話す機会なくてごめんね」
「ううん、その……」
と、仁宮は一呼吸置いて
「友達になってくれる?」
「勿論」
ここで名柄川羽海と仁宮蘭は友達になった。