林間学校! その6
一大イベントの肝試しが終わった。――そう、終わった。同時にトミーがいなくなった。自分にとってただの肝試しでは無くなってしまったのだ。トミーがいなくなった事により、コレは大事件になってしまった。しかも、鉄板なのか分からないけど皆からトミーの記憶がなくなってしまった。自分らの班、クラスの全員、生徒一覧表。全てから「阿賀町富子」の存在が消えてしまった。あの時、自分は声を聞いたがアレが最後になるのか? ――神隠し? だったら、返してくれよ。
今は就寝時間となり、布団を引く。部屋に置いてあったハズのトミーの荷物も無い。そして布団も自分と麻衣と由里様の布団分しか――
「さっきからどうしたの? 羽海ちゃん」
「……ああ、気になる」
「ずっと訊き回ってるけど、アガマチトミコっていう子の事?」
「――本当に知らないんだよな?」
ちょっと悲しそうに麻衣はウンという。本当はお前らも知ってる人物なんだぞ――
「――羽海さん、気分が悪そうですよ。このお茶飲みます?」
「うん……」
自分はコップ一杯分の紅茶を貰う――美味しい、少し気分が落ち着く。自分はあの時どうなったのだろうか? 考えてみる。
確か――初めは食堂は暗くて、自分が入っても誰もいなくて食堂自体が歪んで見えた。所々が潰れて見えたり、自分の足下も覚束ない状態、そしてトミーの声。
よく分からない事が起こった後に、麻衣の声が聞こえてその場で立っていたのだ。――そして、誰もトミーを知らない世界へ。
自分は一つ、麻衣に質問する。
「なぁ、食堂入った時、自分どうなってた?」
「ん? えーと、なんか――抜けてたよね? 由里様」
「――確かに、魂が抜けてたというか。生き生きとした感じがございませんでした」
「――そう」
コンコン、ノック後先生が入ってくる。
「そろそろ、布団の中に入れよ……トークは程々にな」
それを告げにアンタは来たのか。トミーが帰ってきたのかと思ってちょっとドキッとしたわ。
「それじゃ、消しまーす」
麻衣がスイッチで蛍光灯を消す。――おやすみなさい。
※ ※ ※ ※
「――はっ!」
自分は起きた、ちょっと冷たい空気、周りを見るとさっきまでいた食堂に自分はいたのだ。
「変だ、自分は確かに部屋で寝てたはず――うん?」
体が動かない。何でだ。自分は金縛りとやらに合ってるのか? ――あの肝試しをやってから怪奇現象が起き過ぎだ、自分は純粋に林間学校を楽しみたいのに、邪魔しやがって。
「ギギギ……」
何かが近づいてくるが首しか動かせない自分、またこの食堂が歪んで見えた。これはさっきの……
「おい、いるんだろ!? てめぇなんかに屈しないからな!」
自分は強気に見せた、でも動けないんじゃこんな強気でも駄目だった。心拍数が上がって空気も重い、ここまでキツく締められる事は初めてだ。 近づいてきた人物――人物では無かった、鎧を来た武者みたいな奴だった。
「ホラーチックな奴だな。お前……はは、これはビビるぜ」
その武者は、腰の刀に手を掛けて一刀両断に切ろうとする。
「う、うわあああ! 止めろ!」
自分は青くなる。刀を向けられるとこんな気持ちになるんだな、戦国時代とかに生きなくて良かった! でも、そんな事言ってる場合じゃない! 自分は目を瞑った。
「羽海に――手を出すなぁぁ!!」
聞き覚えのある声、自分は恐る恐る目を開けると――トミーだった。
「よぉ、羽海。なんで戻ってきたんだよ?」
「トミー……お前を探してたんだぞ?」
「お、そうか。でも、悪いな! アタイはお前のいる世界には戻れなくなっちまった」
「ええ、なんで? どうして?」
「驚かないでくれ。元々は、この現世にアタイという存在はいないんだ。それでお前だけはアタイが見えていたという状態さ」
「……」
「それでな、ちょっとこの武者野郎はこの館の他の魂を狩ろうとして必死みたいなんだ、それをアタイは止めなくちゃならない」
「……」
「それで、狩られた身で既に体は消滅してるんだわ」
「お前は……」
「ん?」
「どうして、自分の為にそこまで――あんなに喧嘩しあった身で、自分の事、嫌いじゃないのか?」
トミーは考えたのちにこう言った。
「アタイにさ、兄と弟が居たんだけど。お前、兄にソックリなんだわ。それで、ちょっと似てるもんでいがみ合いしちゃったりとか。――でも、ある時にアタイは兄と弟は兄が乗った車が事故にあって共々、死んじゃって、アタイは一人になった。そこで、未練があって現世を彷徨っていた時にお前を見たとき、兄にソックリさ。だから、嫌いにはなれない」
自分はトミーの過去を知って衝撃だった。兄と弟が居たなんて、悲しんでるとかそんな素振りを見たことが無かったからだ。そして――とうに阿賀町富子は死んでいた? 冗談じゃない。トミーは、ハッキリと見えてるじゃないか、そこにいるじゃないか
「だから、お前は家族として見てる。アタイはここでお前を見てるよ」
自分は涙した。自分はこの時までトミーの気持ちを知ることが無くて今聞いた時、どうして分からなかったんだろう? とか後悔した。
「トミー……」
「まぁ、大丈夫だって。あの世に返るだけだ。――そうだ、コレ。よーく握ってろ」
手渡されたのは――トミーがしていたリストバンドだった。
「これは……?」
「お前にとって布っきれかもしれないけどこれはアタイの兄が付けてた物でアタイの大事な物だ。これは羽海が持っててくれ」
「……本当に、帰れないのか?」
「――悪い、じゃ後は頼んだぜ? リーダー」
自分は何かに吸い込まれるようにこの食堂を離れる。トミー、お前は――
※ ※ ※ ※
目が覚める、自分が寝ていた布団の中だ。
特に手足に異常は無し。ん? ――夢、じゃないのか? 自分の手の中にはトミーのリストバンドが。でも悪いけどトミー、自分さー、腕時計以外に付ける趣味が無いのよ。
「フッ、トミーらしいチョイスだな。でもこれでお前の事は一生忘れないぜ。阿賀町富子」
自分のバッグにトミーのリストバンドを仕舞う。自分は今まで不思議な体験をしていたということだろうか。――よくよく考えてみると、誰も「トミー」とか「富子」と呼んだ人は自分一人だ。誰一人呼んでいなかったのだ、そうなると麻衣も鷹見も皆が阿賀町富子という女を知らないのも合点があう。そして自分は阿賀町富子の兄に似ていたということで、強力で特殊な霊感があって富子の幽体が見えていた――? 本当に、冗談じゃない。今でも信じられない事だ。
というか、トミー。自分は兄にソックリなのか? 何処らへんがソックリなのだろうか? ま、まさか。顔がソックリだとか言われたらそれは兄じゃなくて姉なんじゃ……。トミー、お前の偏見とかでそんな風に見られて言われて張り付かれたら、それタダの迷惑――って、トミーは何年に亡くなったんだ? もう何もかも全く分からん。
今は――七時か、麻衣はジャージの上着のチャック全開で体が開けてる。由里様は綺麗に一直線に掛け布団が膨らんでて寝ている。流石お嬢様。七時半迄に起きるのがルールらしいから皆はキッチリとギリギリまで寝るつもりなんだろうな。――ちょっと外まで出てみるか。
一階まで降りてみると宮川が自販機で何かを買おうとしていた。
「宮川?」
「お、名柄川? 珍しい。いつも授業中は寝てるのに」
「枕が違くて寝れなかったな――というより、悪夢が」
「悪夢? まぁいいや。朝はコーヒーを飲むと目が冴えるぞ」
宮川は一本コーヒーを買って飲む。
「精神的なショックや、心理的なトラウマ――それとも、何かか?」
「……そんな事はもうとっくに」
「ほほぉ――心的外傷後ストレス障害もありそうだが」
「過去に問題でもあるっていうのか?」
「お前の一年生に何があったのかは知ってる。それで、不快で苦痛な出来事がフラッシュバックとして夢の中に繰り返し現れることがあったんじゃないのか?」
「それは――確かにあったかもしれないけど、今はもう無い。もっと別の悪夢だし、あの"例の事件"からもう長い」
「ふーん」
「というか、やけに詳しいな」
宮川はコーヒーを飲み終わったのか、ガコンとゴミ箱に入れる。
「俺の親父は医者だ。俺のお袋は薬剤師だ。これ位は」
「驚いた。お前の両親は病院関係なのか」
「宮川クリニック」
「……」
何かシュール。何処にでもありそうなクリニックの名前で笑ってしまいそうだ。普段何にも素性を喋らないから何者かと思えば、クリニック出身の方でしたか。
「どうした? 名柄川。俺は別に何を思われたって怒ったりもしないし、泣いたりもしないぞ」
「あ、ああ――。いや、そのービックリした」
「因みに産婦人科だ」
「えぇ……」
凄いと思ってたのになんか――うん、凄いよ。医者の息子だもん。でも、産婦人科って――いや、うん。馬鹿にしちゃいけない、もしかしたら将来お世話になる可能性だってあるんだから。麻衣も由里様も自分も。
「あのー、産婦人科でもそう――内科とか精神科の勉強ってするのか」
「いや、俺自身は全部の医学を叩き込んでる」
「やっぱり天才なのか?」
「俺自身はまだ天を目指さなければならない」
宮川、お前は医学の覇者を目指すつもりか。
「俺は部屋に戻るぞ。それじゃあな」
「おう、じゃあ――」
宮川は階段を登っていった。――でも、医者の息子の志ってなんか、凄い。そして医者の子は必ず医学を教えられるのね。自分は医者の息子じゃなくてよかった。
自分も外の空気を吸ってから部屋に戻ると麻衣と由里も起床していた。よくよく由里様のジャージ姿を見るとお嬢様と思えないほどのギャップだな。スレンダー姿な由里様に引き換え、麻衣は――ちょっと太った? 太ったよね?
「あ、羽海、何処に行ってたの?」
「外歩いてた。――今日は何処に行くんだ?」
「今日は農家の方に行って草団子とか畑を手伝うみたいだよ」
林間だからなんとも言えないけど、こういう体験必要だよね。山登りとかするよりはマシかもしれない。しかし、畑の手伝いか――何をするんだろうか。福島での名産って何かあったっけ?
※ ※ ※ ※
――館に何十台もの車が停まっている。拉致されて監禁――かな。御もっとも犯罪のためにこの車達が停まっている訳ではないが。だけど、学校の予算って一体どうなってるんだが。ここら一帯の農民達を買い占めてここに集めてくるのはよっぽどの地脈と人脈のあったのだろう。
それで、自分はその一車両に乗って揺られている。勿論、名柄川一班である。自分は夢の出来事もあったからか寝れてないので目を瞑って少しでも寝ようとするが、ここの道は荒れているのか揺れる。――今ちょっと片輪走行したべ。
「揺れててトランプ出来ない――」
「お前はどんな状況でトランプをしようと……」
「紅茶が――紅茶が飲めませんわ」
「由里様無理ですって――」
「……ZZZ」
「はぁ――」
鷹見は後ろで横になって寝ていた、お前はどんな状況でも広い空間があれば寝れるのか。男性陣はダラダラと喋って、自分たちは何か――頑張ってた、ひたすら暇を潰そうと。
「着いたよー、君達降りて」
車のドアを開けてもらって外に出ると、一般的な家の横にデカい田畑――成程これが田舎の畑なんだな。
「初めまして佐藤です。えー、今日は……なんだっけ?」
何で学校から説明されてるのに忘れるんだ――
「ヒマワリとか、何か色々お手伝いをするのでは?」
「あーそうだ。手順教えてあげるから、頑張って」
農家のおじさんニッコリ笑うけど話をハブきすぎだろ。おじさんだからキツい事言えないけど、先生からの説明の方がよっぽど分かりやすかったぞ。
――早速、先ずは雑草を刈る所から始まる。
「細かい所も全部やってね、一つでも雑草が残ってると栄養取られていいのが育たないよ」
「ここ、佐藤さんの土地だよな……これ面倒だから放置してただけなんじゃ――」
「羽海ちゃん、駄目だって……そんな事言っちゃ駄目だって」
「自分だって、一言や二言は面倒なこととか、嫌な事だって本人の前で言うよ……」
夏前なのにこの炎天下、タオルは二枚持ってきたけど全部ビショビショになって使い物にならなそうだ。一番体力が無いのは自分だと思われがちだが――残念、上泉以外は全員体力持っていない。
由里様は日傘を刺して冷えた麦茶をおばさんから貰ってた。――いやいや、何で優遇されてるの? ねぇ、こっちに来て手伝ってよ? 汗だくで皆草をむしってるのにおかしいでしょ。皆も由里様を叱って――って、アレ? そういえば誰も叱りに行っていない。 アレアレアレ? また自分がおかしいのか? よく分からなくなってきた。誰も行動しなければこのリーダーが行動しなければならない、座っている由里様の所へと近づく。
「えっとー、由里様? こっち来てやってくれません?」
「ごめんなさい、日に当たるのはちょっと――今日は林間一番に日差しが強いですし」
何か差し出してきた――自分はそれを受け取って快く承諾
「わかりました、由里様。ここでゆっくりして下さい」
「もう、皆様も承諾済みですのよ? 頑張ってください」
――え? もしかして皆貰ってるのかな? 「貰った?」と全員に聞いてみる。「うんうん」と首を振る。そうだよね、「アレ」は貰っちゃうね。自分だって「アレ」欲しいもの。「アレ」っていうのは勿論「アレ」だよね――ご想像にお任せします。……「アレ」な物ほど屈する物は無い。
細かい草も刈り取って、まとめて捨てに行く。大変な作業であった。自分は農業を舐めている訳ではないが、これを全部一人でやるんだから自分達は農家に感謝しなくてはいけない。――桧川はやっぱりこういう事に慣れてるのかな、仕事の効率の良さが半端ない。思わずおじさんも駆け寄ってジーッと見ている程だ。
「終わったかい? 今度は耕してくれますか? 後女性の皆さんはこっちに来て」
「はい。――じゃあ、鷹見と宮川と上泉。ああ後、桧川頼んだよ」
自分はおじさんの後ろに付いて行く。
※ ※ ※ ※
家の中に入った訳なのだが何をするのかは聞いていない。とうとうキッチンの方まで来てしまった。
「それじゃ、このおばちゃんから話を聞いて頑張ってね」
おじさんは行ってしまった、女性と言えばキッチンなのだろう。由里様はキッチンに立ってどうなるのかは分からないが、自分は麻衣をキッチンに立たせてはならないと思う。いや絶対に立たせちゃいけない。自分はコイツの料理を信頼してないぞ、もう過去の事がトラウマすぎて――
「今から笹団子作ってもらうからね。ここに準備してあるから――」
笹団子? ――なんだ、お菓子か。良かった、これだったら既に完成してるようなもんだし、どんな素人でも準備されていたら出来る。
「まずは、この団子を草で包んで紐でこんな感じに絞って完成ね。これを何個も作ってね」
うわー、面倒な結び方するな。でもこれに麻衣は順応して既に一個完成してる。自分はその面倒な結び方が分からないで何度も結び直してる。上手く結べなくて閉じられない。
「お嬢さんな、ここを二回な回して。両端を絞るんよ」
おばさんが一個作ってくれたが、分からない。どうしてこうなったらそうなるんだよ。えーっと、真ん中を二回――回して両端を結ぶ。これでいいのか? 上手な麻衣のと比べると左右の絞り方が全然違う。真ん中を絞りすぎて両端を結ぶ前に中身が出てきたり、逆に緩くて外れそうになったり。――ごめんなさい、素人でも出来るといった自分が悪かったです。麻衣は料理となると案外ハイセンスなのかも知れないです。由里様と麻衣が出来るのに自分が出来ない、どうしてかって? 多分、手先が器用じゃないんです。
黙々と作業をする。特に話も何も無かったが、麻衣が黙っていられなくて話をする。
「羽海ちゃんって――彼氏いたっけ?」
「は? 自分はいないけど……急にどうしたの?」
「いや、昨日はね。羽海ちゃん直ぐに寝ちゃってるし、話をするときが無くって」
「――まぁな」
「それで、皆と話したくって。鷹見くんとかいないし」
――ジョシトーークか、そういえば林間学園での代表的なイベントだな。
「それで、麻衣に彼氏は居るのか?」
「――うん」
自分は持っていた笹団子を落とした、由里様も作業していた手を止めた。彼氏? コイツが?
「嘘だろ? ――うーんと、もう一回言って?」
「――うん」
「いやそこじゃなくてさ、彼氏いんの!?」
「そうだよ、いるんだよ」
照れた様子も無くアッサリ答える。
「はーっ!? 何でお前に彼氏出来んの!? こんな――バイクバカで変態なお前に」
「ちょっと羽海さん、それは失礼では?」
由里様がちょっとムッとして怒ってる。でもあり得ない話なんだ、自分にとっては――麻衣に彼氏がいる? 昨日はクラス全員の胸を触っては揉んでを繰り返してたコイツが?
「いつできたんだ? 彼氏?」
「うーんと、一ヶ月前?」
「最近じゃねぇか、いつも何かあると喋ってくるのによく黙ってられたな? ええ?」
「だから、最大のネタとして今日の日まで黙っていたの」
その辛抱強さをもっと別の事に使えよ。
「それで、名前は?」
「龍太郎」
「龍太郎? ――ふーん、そう」
自分は全くまったく関係無いことでもういいやと思ってしまった。彼氏か、自分には多分縁があるかどうかも分からない事だな。
「由里様はいるの?」
「私は――いませんよ」
「だよね~」
麻衣は失礼という言葉を知らないのだろうな。どこまでもガンガン突っ込んでいく人はトークで必要だけど、コイツは別にそんな事いらないしな、どんな事でも突っ込んで行くし。人のプライベートとか何も関係ない。やっぱり麻衣のクオリティは高い。
「そういやっさ、自分たちの班の男性陣で一番評価高いのは誰よ?」
麻衣と由里様の二人は悩む――麻衣は
「私は、桧川くんかなぁ。あの肉とか欲しいし」
「お前は一体何処を評価してるんだ? 肉か? 桧川か?」
「――肉かな」
「肉の方かよ、どうりで麻衣のお腹がぷっくりと――それで由里様は?」
「えっと――鷹見さんか、宮川さんのどちらかで」
「鷹見と宮川かぁ、自分はどっちもどっちだけどさ、由里様はアイツら二人の何処がいいの?」
「鷹見さんは――ああ見えて何でもやる方ですし、宮川さんは知識が豊富でよく勉強を教えて頂きますし」
「なるほどねぇ」
こうみえて一見ふざけた班に見えるがやっぱり天秤にかけるとピッタリとバランスのいい班なんだろうな。
「羽海ちゃんは?」
「自分? 自分は全員を評価することは出来ないよ。前にも言ったけど皆平等に扱いたいし」
「ええー羽海ちゃんはそれでいいの?」
「だって適当に答えて評価したってそれで喜ぶか? それぐらいだったら皆に向かって「凄いじゃん」って言って評価したほうがそれでいいじゃないか。それこそ平等――そりゃまぁ一人が悪い事したら怒るけど?」
そう言った結果、また黙々と作業を進めるようになった。自分はちょっと良い事言ったような気がするんだけどなぁ。でもそれが伝わったって事で自分は良しとしよう。別に自分が常識って訳じゃないんだからそういう適当な言い方もアリか。