林間学校! その1
ついにこの時期が来たか――二年生の楽しみ、それは林間学校だ!昨日の夜から林間学園の日数、三日分用意してドキドキしていた。そして朝七時の学校前に集合、そしてバスに乗って福島県の会津若松という所に行くらしい。普段千葉県から出ること無いからこれは嬉しいことだ。
さーて、寝ましょうかな。
――午前六時半
自分はスッと起きると外が明るかった。右を見ると3日分の着替えと生活用品が入ったバッグが置いてあった。
現在の羽海の部屋と高校時代の羽海の部屋の家具の位置は違う。高校時代のベッドの位置は扉を開いて右を見るとベッドがあって、扉を足に向けて寝ていたが、今のそこの位置はPCデスクが置いてあり、その横にベッドを設置しており、本棚などは高校時代では辞書や何故か六法全書が置いてあった。しかし、現在では漫画が全巻フルセットで置いてあったりそのような面影が残っていない。
どうやら林間学校では制服は着ないでこの紺のジャージを来て学校に行くらしい。待てよ、この服装で電車に乗れと? ――ハッ! バッグを見ると着替えは ジャージジャージジャージ だった……。一応シャツと換えのパンツとか。
紺のジャージを着て吊革を掴んでる。目立つなぁと思ったら一人居たわ。もう一人。聖山麻衣が居ましたわ。自分は麻衣に近づく。
「どうも、紺のジャージを着たHONDAラブさん」
「あー羽海ちゃん」
「流石に麻衣も今日はバイクで登校はしないよな」
「紺のジャージでバイクなんて乗れないよ……」
紺のジャージに赤白ツートンのCB400SB……確かに合わない。
「そういえば、同じ班だったな。三日間宜しく」
「うん、宜しく」
今回の林間学校では男子4人女子4人での行動らしい
メンバーは
女子
・名柄川羽海 ・聖山麻衣
・岡田由里 ・阿賀町富子
男子
・鷹見亨 ・宮川大記
・桧川寿一 ・上泉康三郎
いつものメンバーから普段名前に上げられていないメンバーまで沢山だ。まぁ学校に着いてから説明しよう――急に増えたけど付いて来てくれ。
――午前七時
学校前に集められた数十人のメンバー。2年AからDまで約百二十名。
自分は2-A組の1ブロックのリーダー……
「そういや、なんで自分がリーダーなんだっけ?」
「一番しっかりしてそうだから」
「いや、その仕事だったら鷹見が一番だろ」
「あー……」
そういや、コイツ屋上で寝てて不参加状態だった…。なんで大事な時に居ないんだ。
※ ※ ※ ※
――前夜の正午
「各班のリーダー決めて下さい、この一時間授業上げますんでーはーい」
授業をほったらかしで先生は出て行ってしまった。
ざわざわしてる中麻衣は
「わたしまとめるの駄目だからパース」
他のメンバーも
「羽海ちゃんが適正かと」
「俺は多分キレるからダメ」
「……」
とかでどうにもならない。自分は適正な奴がこの班に居ることに気付いたのだが……だが……
「なぁなぁ、鷹見は何処に?」
「そういえば居ないね」
教室全体も見るが姿が見えない、あれぇ……。
「じゃあ羽海ちゃんで決定ね」
「ええぇー」
――午後四時
鷹見は午前まで出席してたのに午後からは欠席扱いになっていた。一応、電話もしてみたが出ない。ということで学校全体を探すことにした、勿論班全員で。放送でも流してみたが放送室にも来ない。一体何処に行ったんだ……。とりあえず、屋上に行ってみるがそれらしき人影も無い……自分の後ろから何か飛んできて足に引っかかった。
「ラベル付きのラップ……焼きそばパン?」
まさかと思い後ろを見たら発見した。鷹見亨の遺体…‥では無いが横になって寝ている鷹見の姿が見えた。自分はその横に付きおもいっきりビンタをした。
パァンッ!
「アイタタタ! 何!? 何なの?」
「おはよう、鷹見……今何時でしょうか?」
「え……あっ……」
鷹見は夕方になっているのに気付き慌て出した。
「授業は!?」
「全部終了、午後はオール欠席だ」
「うわぁ……最悪」
「お前さ、よくこの屋上に入れたよな、普段鍵閉まってるのに」
「いや、たまたま開いてて入って焼きそばパン食べて……なんで寝たんだっけ?」
「まぁ別に自分の事じゃないから構わないけどさ、今度から寝るなよ。こんな所で」
鷹見は立ち上がり顔が下を向いたまま扉を開けて階段を降りていった。よっぽどショックだったのかうなだれていた。自分も下に降りて皆に伝えた
「変な所でずっと寝てたみたいでしたーおしまい」
※ ※ ※ ※
――という事があった訳だ、こういう訳で自分がリーダーに決まってしまった。
「はい、点呼取るよー。聖山麻衣」
「ハイッ!」
麻衣はビシっと手を上げる。紹介するまでもない。バイク好きな馬鹿……って言えば伝わる。
「岡田由里」
「はい」
しれっと手を上げる。何処かのお嬢様らしい。らしい……けど、こんな学校に通ってるのかが不思議だ。この学校、ちょっと偏差値が高いだけで、他と比べるとやっぱり低い方に入る学校なのだが。こちらの由里様は、成績上位層に入るし、もっと上の学校に行けるはずなのだが…まぁ色んな理由があってこの学校に居るのだろう。
「トミー」
「あいあいー」
雑に手を上げる。阿賀町富子、愛称はトミー。トミーは雑さは麻衣以上、面倒見の良い人なんだけど、どうも自分とは相性が合わない時があって、時折喧嘩になる。因みに掃除とかを任せると雑巾は強く絞ってなくて床はビショビショになったり、ちりとりで塵をとってもその跡まで取らなかったり……いや、本当に雑。この林間で何か起こらなければいけないが。
「次男子、鷹見亨」
「はい」
普通に手を上げる、隠れた問題児……。最近は、一般人化してきたけど、活躍してもらわないと困る。そろそろ本当に活躍してもらわないと……でも、タイミングが合わないのがまた……。こんな事が後何回続くのか……。
「宮川大記」
「うい」
手も上げずに声だけ出す。あまり、男子の方が知らないが、宮川は結構物静かな奴で有名…みたいだ。こう見えても成績上位で頭のキレるやつだ。何か策が出来れば、喋るみたいだ。
「桧川寿一」
「はい」
大きく異彩を放つのがこの人だ。手先が器用なようで、折り紙とかを昼休み中に遊んでいる。そういう面で女子からは可愛いと言われてるが、パソコンとか携帯電話の話になると頭の上に「?」が出る。寿一自身、携帯も持っていないみたいだし、ちょっと炭火の匂いもする。ひょっとして……過去から来たのか?
「上泉康三郎」
「はーい! はいはいはいはーい!」
「うるせぇな!」
上泉康三郎、鷹見とは違ってバッチリ決まった問題児だ。もううるさいったらありゃしない。スポーツは万能で何でも出来るらしい、でも勉強は出来ないから成績としては下の方だ。……よくこの学校入れたな。
「先生、点呼完了です」
「はい、お疲れ様」
果たして三日間、大丈夫なのだろうか。――不安だ。