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秘めた才能

「済みません!何も分からんので。こなな格好してますんで、力仕事なら任して下さい」


 恵比寿は、次から次へ休む間も無くヤマチューに指示をする。普通の者なら根を上げそうな作業も、この男は苦も無く生き生きとこなす様に、少し恵比寿は呆気に取られたのだった。

 ヤマチューは、体を動かす方が性に合っている。そして、つぶさに恵比寿がトータルコーディネートした店内のデザインを観察しながら、今更ながら社長沢木の人を見る眼の確かさを感じた。恵比寿は、女性らしい実に細やかな気配りと、繊細なデザインで、この若い店主が全面頼り切るだけの事があると思った。客の流れや、一般に見て来たヤマチューなりのデザインは、何とありきたりであろうか、素直な眼でそれを感じ取ったのだった。この素直さこそ彼の真骨頂なのである。夕方になり、ヤマチューは1日で見て来た事を、素直に恵比寿に詫びた。先日ヤマチューが示したアイデアは、恵比寿の眼にも入っている。だから、彼女の憤慨は分かる。自分のコーディネートを、入ったばかりの何も分からぬ新米にケチをつけられた格好だ。気分を害せぬ者等居ないだろう・・

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