沢木の競翔
「待つしか無いんが、競翔家。天候には勝てん。皆同じ条件なんじゃきん、昨日見たいな選択性与えたら、絶対一つのレースに偏る。どっちかが消滅するんやきん」
確かにそうである、つまりどちらが正しいかでは無くて、その証明前に消える事もある訳だ。これこそ、現実的な当に正論。洋司は皿を洗いながら笑った。
1レースの度に一喜一憂するのが競翔家である。だが、愚痴を幾ら零した所で、現況が改善される訳でも無い。要するにどれだけ自分は普段やって来たかに集約される。特に競翔とはそう言う意味合いも大きいのだから。
翌日、薄曇、小雨の中で放鳩・・漁を1日休むと言うのは。流石に服部にはきつい。しかし、引き受けた以上責任が重大と、AM8時ぎりぎりに放鳩したのであった。放鳩された鳩群は、何十回も周回を繰り返し、やっと眼前から消えたが、一群は又放鳩地に戻って来たと言う。難しい放鳩地と言うのは、誰でも知っている。しかし、秋に関しては変更が考慮されて良いのでは?と言うのが沢木の考え。経験鳩は、帰還率が悪く無い場所である。秋に通用すれば春は万全。しかし、秋に将来性ある若鳩を、そこで淘汰するのはいかがなものか。もっともっと経験を積めさせれば、帰還率は上がる。しかし、その前に切実なる人間側の事情があるのであるのだが・・。
とりから、洋司に電話が入った。




