978/3046
沢木の競翔
「了解貰うた。時間があるきん、内装業者の邪魔にならんように、ちょっとわしの車でドライブせんか」
呆気に取られるまま、ヤマチューはその車に乗り込んだ。
そこは、塩塚高原と言う山の上だった。牛が放牧されている。
山根は、
「ここで寝転んで、話しょ。寝たらあかんぞ」
「ははは」
冗談もこの人言うんじゃ、ヤマチューは少し気持ちが楽になり、笑った。
「わしな、天体観測が好きで、天体望遠鏡を持って、毎週この高原に来とったんじゃ。ほんで、月やら火星やら描いとった。社長な、次に飲み屋で会うた時、この宇宙の絵見て、えらい誉めてくれたんじゃ。山根君、これがあんたぞ。これが、あんたのデザインの真髄じゃあ。給料は今のトヨタ見たいには出せん。けど、あんたが生かせる道は、才能を理解出来るわしんとこしか無い・・そう言うて、もう3年目になる。わし・・ほんまに転職して良かったわと思いよる」




