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沢木の競翔

「トヨタのデザイナーじゃった。工業デザインの学校出て、大学へ進んで・・トヨタに入った。来る日も来る日も、ただ自動車を見て、ミーティングして、デッサンして・・やっと任せて貰うたんは、小さい部品のデザインじゃ。・・自分の非才と、周囲の熱意のギャップを感じたわ。ああ・・わし、こなん事やる為にデザイン方面に進んだん違うちゅうて・・ほななきんの、山下。お前が車好きじゃあと言うたら、がっかりはせなんだんじゃ」

「あ・・そりゃ好きですわ・・勿論」


 ヤマチューが言うが、


「あかん、あかん。ほんまに自分が好きな事、のめり込んどるもんがあるんなら、一番に車が出るわ。口から出たんは鳩じゃった。次が音楽じゃった。今の仕事やか出てもこん」

「あ・・あの・・」


 ヤマチューは言い掛けたが、


「凄いで・・社長は。わしのデッサン見て、綺麗な絵描けるのう、ほやきんど、こなな車出ても、わしゃあ買わん・・言われた」

「事務所に飾っとる絵ですか?ひょっとして」

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