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沢木の競翔
「ほうか・・仕事ならしょう無い。そやきんど、散々人に本気で掛かって来いちゅうて、あいつが姿見せんし、打刻もせんちゅうんも、機先が殺がれた気がするわい。名だたる初霜号系を使翔しとんじゃきんの」
それは、そうだ・・と、やはりどんな活躍を見せるのか、期待していた周囲の大半の者が同感した。
ただ、ヤマチューは、びっくりするような事を、この場で言ったのだった。
「社長んとこの鳩、そこそこの時間には戻んて来た筈ですわ。今日の優勝タイムちゅうか、打刻時間は、AM7時20分じゃわね。社長が戻って来た鳩に餌やって、そのまま岡山県までバスケットに5羽入れて出かけたんが、8時丁度じゃ言うてましたきんね」
「何じゃとお?レースから戻って来た鳩連れて、岡山まで行ったじゃと?」
眼を剥く周囲。秋山が、隣の工藤に耳打ちしている。
「な?言うた通りじゃろ?沢木さんは、常識的な競翔なんぞしやせんのじゃ」
呆気に取られる言葉に、松本も言葉を失った。
「来週はどなん言よったぞ?」
かろうじて松本が聞くが、ヤマチューは、




