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今日の一歩

 沢木は、歴史から消え去ろうとする廃墟、鉱山施設、管理する者が居なくなり、荒地と化した畑、大地。交通事故現場。廃寺、松食い虫によって枯れ死した老松、又老木。偶然に眼前に現われた、外来生物。ゴミ、廃棄された古タイヤ、寒風にたたずむ老婆の姿。荒れ狂う海を眺める老人・・その一つ一つには、むしろ解説等不用であった。膨大なそ写真集こそ、沢木が眺め生きて来た証・・知らずの内に由香里の心は激しく揺さぶられ、涙が止めど無く溢れて来た。

 沢木の憂慮する、大きな自然観、人生観、世界観・・その物がこのアルバムに詰まっているのだと感じた。

 又、由香里には、時折自分より少し年下であろう少年が語る言葉を感じて居た。そして、その少年が今、自分に大きな力を与えてくれている事も感じていた。由香里の持つ感性・・彼女の持つ不思議な感性こそ、重大なこの後の局面に左右してくるのである。そして、俵 清二・・面識こそ無いが、彼も由香里に何かを感じ取っていたのである。環が何故由香里にこの時それを渡したのか・・。もう少し後に、その理由が明らかになっ て行くのだった。

 由香里の現況は、確実に、着実に前に向いている・・・。

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