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今日の一歩
「正直・・きついわ。でも、これが、近未来の最先端治療なのだとしたら、本当にやりがいがある。お互いそう思うわな」
「はい、実際一般病院でこんな治療がスタート出来るとしたら、どんなに待ち侘びとる人達が多いか・・やりがいがあります」
津島と環には、既に堅い信頼関係が結ばれているようだった。
寝つかれない由香里には、環が一冊の本を渡した。本と言うよりアルバムに近いものだった。沢木が自著し、編集した自伝的なものだった。すぐ彼女の眼が奪われた。
「おっちゃん・・あなん忙しいにしとって、こなな本まで」
それは、アルバムのようだった。一切の解説を加えず、淡々と記述されるそれは、歴史教科書のようであり、史実にも感じた。見たそのままの風景。しかし、その写真1枚、1枚には心を揺さぶるような光景が描写され、強く由香里の胸を叩いた。




