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今日の一歩

「由香里、京西博士が来月、来院するらしいで。予想外の状態で、ひょっとしたら・・」

「沢木さん!そう言う不確定な事は、佐々木さんに言うべきじゃありません」


 津島に注意され、環は済みませんと謝っては居るが、その顔は明るい。由香里も喜びを隠せなかった。今は、1日1日が自分の成果が出て、楽しくなっていた。

 これだけの人が動き、又世界的な博士が執刀した。由香里の7年間は不自由だったかも知れない。しかし、決して由香里は不幸では無かった筈だ。世の中には、もっともっと不自由を強いられている人が居る。今日の糧すら無くて、飢えて死ぬ子供達が居る。高熱を発し、我が子を抱えながら、医者に診て貰える環境に無く、途方に暮れ深夜に歩き回るしか出来ない母親も居る。自分の手の中で、その幼い命が消えるのを見守るしか出来ない状況もある。ただ利権の為に、主義主張の違いから戦争、内紛となり、その犠牲となる人達が居る。自分はこれだけの人に見守られ、そして治療を受ける事が出来たのだ。由香里は、その感謝で胸が一杯になっていた。

 その夜、由香里の側に居る環。こんな話をしていた。

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