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燧灘競翔連合会
沢木は合点の行かぬままに、三島焼きの作品を説明を加えながら香月に、その後を三川も頷きながら後ろから付いて行く。
香月が驚嘆した。
「いや、凄いですね。焼物と言う一般的概念から言いますと、異端的要素がありますが、彫刻の世界とも又違います。焼き温度の融点は加減が必要でしょうが、実に写実的で、生きています。特にカニが・・」
沢木は大きく頷き、
「そうです。特にカニに代表されるんでは無いですかいね、赤手ガニ・・わし等は天神カニちゅうて呼ぶんです。このカニは天神さんの使いじゃ、そやきん殺めてはならん言うて子供の頃から教えられて来たんですわ。これぞ、身近に接する物を、より自然と融合させた芸術品。わしは、陶芸の中でも高い位置にあると思うとります」
香月も頷き、
「もし、花瓶に活けたなら、ススキや、葦等素朴な植物似合いそうですね。素焼きの壺を自然として表現しているのかな・・家内に一個買って帰ります」
香月が大層気に入った様子に、沢木も満足そうに頷いた。実は沢木もこの三島焼きを家に飾ってある。




