燧灘競翔連合会
「まあ・・人の大事にしとるもん、わしもずうっと気にはなっとった。ほんで、じゅんも、わしが盗んだちゅうんと、兄貴と話が出来とった言うんも分かっとったきん、 追求はせなんだ。結局その金で買うた単車で、じゅんの兄は数年後命を落とし、わしんとこもそれからすぐ親父が不渡り掴まされて倒産したんじゃ。巡り巡って、結局今は又東予市に戻んて、呉服屋の大将やんじょるきんどの。数年前に朝日新聞見て、わしゃあ、たまげたんよ。その古銭が時価1千万円下らんちゅう事を知った。もし・・この古銭をあの時金に変えとったら、わしんとこは倒産せんでも良かったじゃろうし、又盗まんかったら、じゅんの兄も死なんで済んだ筈じゃ思うたら、もうわしゃあ、いたたまれんようになって、じゅんにこの古銭を返そとした。そやきんど、じゅんは、受け取らん・・それを受け取って、兄が帰って来るもんでも無いし、所詮自分も人から貰うたもんじゃ。この年まで土居さんが大事に持っとられとんなら、それは、物の価値が分かる人間に納まっとるちゅう事やきん、大事にしとってつか。自分には、この古銭が災いを連れて来たとしか思えん。そやきんど、土居さんには幸福を連れて来たと思う。それこそ、運命で無いな?・・とのう・わしゃあ・・40年間の重みがどっと取れて泣いたわ。じゅんが、どれだけ辛かったか、たった一人の兄弟を亡くして、その思いを噛み締めて来たんか、思うたらの・・こら、浜田。その頃のお前も反省せえや」




