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由香里と勇次
「それからあれよあれよと言う間に、沢木は数々の優入賞を果たして、その中からすずらん号言う傑物の鳩を作出したんじゃ。何で勢山系か・・それはその遺伝子の確かさを、後の香月博士が鎌足さんに勧めると言う時代の流れを、既に、沢木は見とったんじゃ・・それに、鎌足さんも、実は沢木の異血導入提案の前に自分も考えとった。その本心を見破られた、若造に指摘されたちゅう自分のプライドがそれを認めたく無かったんじゃな・・」
「そやきんど・・聞けば聞くほど凄い人じゃな・・その沢木さん言う人・・」
妻鳥が言うと、松本も大きく頷いた。
「人はな、学問なんかは2の次でもええ・・物事の本分・・真理を見抜く眼が一番じゃ・・それが確かなちゅう所に、老若では測れんもんがある。一目で鎌足さん、夜風系を見破った香月博士見たいに、その時の鎌足さんには、その真理が見えとったんじゃ。それだけ鎌足さんには20数年の時間が必要だったんじゃが、分かったその時には、既に沢木は競翔界には居らなんだ・・最も夜風系を知り、継がせたかった男がのう・・」




