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由香里と勇次
「ほう・・・」
「ほんで・・沢木は3ヵ月後、鎌足さんにこう言うた。鎌足さん、3ヶ月の間によう夜風系を見せて貰うた。この夜風系はよう出来た血統じゃと思うきんど、足らんもんがあるような気がする。在来系の勢山系でも交配させて見たらどななんかいな・・と」
「うわ・・」
妻鳥も鎌足の性分を知る一人だった。老齢になっても未だ厳しい人で、20年前と言えば、未だ壮健の年。烈火のような激しい気性だったと聞いている。
「お前が今、うわ・言うたように、烈火の如く怒った鎌足さんは、それから2度と沢木には自分の鳩舎には立ち入りさせなんだ。沢木がそれからすぐ、自分の鳩舎に勢山系を薄給の身でありながら給料の3ヶ月分も出して関西から導入したんよ。当時、誰も勢山系は、この地で導入しとらなんだし、注目もして無かったんじゃ」
松本の言葉を付け加えて、川滝が、




