沢木リフォーム会社
「その新川社長と善さんに、わしは骨の髄まで叩き込まれたんじゃきんな、はははぁ」
沢木も笑った。しかし、この日の沢木は、少しそわそわとしているようだった。それは誰かを待っているようで、善さんは、圭さんと少し離れた場所で、この日は談笑をしている。ヤマチューは、既に取り掛かっている牛舎で、藍川夫妻とその作業を手伝っていた。
午後をちょっと過ぎて、藍川夫妻が用意してくれた完全無農薬有機栽培のサラダと、試作的に作ったバターと食べながら、談笑している所に、恰幅の良い沢木と同年代と思しき夫婦が訪れた。
「おう、甲斐田さん、よう来てくれました」
沢木が立ち上がると、藍川夫妻も直立に近い形で立ち上がり、最敬礼する。
この甲斐田こそは、のちに年商3000億円の食品会社を経営する、急上昇中の今治の会社社長夫妻であった。この時代は、未だ愛媛県内でCMを流す程度のローカルな会社。しかし、その経営手腕と理念は、沢木がこの人ぞと推する人物であった。甲斐田も又、沢木のそのとてつも無い大きなスケールと、才能を認めていた。 沢木を実際営業部長としてヘッドハンティングしようとした位だったのであるが・・
「順調に進んでますなあ・・藍川君」




