沢木リフォーム会社
台風のような沢木の訪問を受けて、ぽかんとしたまま浜田は事務所に座っていた。人を傷つけて、刑務所に入っていた数年間に印刷を覚え、色んな人に助けられて、どうにか今がある。沢木の言葉を思い出した。確かに・・自分と真正面から向かって来て喧嘩をした男は、沢木一人だった。 言い寄る連中は沢山居た。しかし、人の顔色を覗うような表面だけの付き合い・・それは、又沢木も救って来たと言う事なのだが、互いの存在は、人生に大きなものでは無かったのか・・
「あんた・・沢木さんは、絶対人を裏切るような人と違う。私も、夜の世界でちょっとは生きて来たきんな、よう分かる・・」
妻、美咲が言うと、
「分かっとる。じゅんは絶対嘘言わん男じゃ。それだけは、わしも知っとる。そやきん、わしは今まで自分の感情を、全部あの男にぶつけて来れたんじゃ・」
「私、実はデザインとか家が貧乏やったし、勉強も好かんかったきん言うのもあるきんど、上の学校で習う事も出来んかったんじゃけど、あんたと一緒になって印刷の仕事しよん楽しいわ、なあ・・ちょびっとばかりの貯えはあるきん、利光が(現在小学6年生)、中学、高校に進んだら金も必要じゃきん、頑張って見ん?」
「おう・・・考えて見るわ・・」
浜田は頷いた。




