師匠と共に
沢木の取り巻く環境は、やはり何かに向ってその動きを加速させているように思える。
「え!ヤマチューを社員に?」
洋司が、洗っていた食器の手を止めて沢木に言う。
「おう、前から器用な奴やし、行動力も、実行力もある、何しろ人怖じせん度胸があるわ。その上で、あなに粗末な材料で、鳩舎の作り方、奇抜な風体ではあるきんど一種独特のセンスを感じたんでの、こないだ思い切って誘うて見た。丁度善さんも2週間後には四国に来る。ええタイミングじゃ思うての、ほれにヤマチューの勤める醤油屋は、先が長う無い。時代に完全に取り残されとる。わしじゃったら、今から近代化して、今治の食品調味料や、添加物を作る会社に日参するきんどの・・あの社長は絶対世に出る、えらい先見性を持っとる(モデル=日本食研、物語に出て来ます、KS食研㈱)きんのう」
「じゅんさんの行動は全く読めんですわ、わしには。そやきんど、じゅんさんは、もしそうじゃとしても、そう言う近代化は目指さんでしょ?前から志度の醤油屋の話もされて、うちんとこでも使わせて貰いよるきんど、醤油は、昔ながらの手造り製法ちゅうんにこだわっとるん違うんかいね?ははは」




