師匠と共に
沢木は、手を振りながら言う。
「何もおかしい事やかあるかい。わしは、びっくりしたぞ。まさか今言うた位置にテーブル持って来るちゅう発想は、素人で無い、プロの眼じゃわ。ヤマチュー君よ、自作の鳩舎も廃材使うて色んな工夫しとる。ほんで、フェアレディZ乗っとるきんど、なかなか奇抜なセンスの持ち主じゃとわしは前から思うとった。あのな、デザインのセンスちゅうんは、努力して出来るもんと違うんじゃ、感性じゃ。君には、何か分からんそう言うもんを感じる。悪いようにはせん、わしのとこへ来いや」
それで無くでも、川滝の居ない今、心から尊敬し、沢木を慕うヤマチューだった。そんな言葉を掛けて貰える等思っても見なかったから、顔をくしゃくしゃにして喜びを表現した。
「うわ!わし、正直言うてめちゃ嬉しいです。ほんま!ほんまですか!沢木さん!」
何で・・この急激な又展開とは・・それこそ、ヤマチューが自然と身につけていた、インテリアコーディネーターとして必要な感性であった。そして、醤油屋として各家庭に足を運ぶ彼が、職業として色んな家を見て来た、実践的な後発的才能でもある。沢木は、予想以上のその才能に少し驚いていた。




