師匠と共に
突然の沢木の言葉に驚きながらも、尊敬して止まない彼の誘いを喜び、車に乗り込むヤマチューだった。
沢木は、当時としては珍しいワンボックスカーを改造した移動工具店をやっていて、それはインテリアコーディネーターを生業とする彼にとっては、現地でどんなリクエストが待ち受けているかも知れない。 その為にあらゆる道具を積み込んであるのだった。それが見事な形で整然と並び、自動車電話もついてある。車好きのヤマチューは、楽しそうにきょろきょろした。
「はは、わしの仕事は何でも屋よ。インテリアコーディネーターちゅう、名前こそ横文字で職業的には格好ええきんどの、世の中、どなな無理・無茶・無謀な要求が待ち受けているかも知れん。ほやきんど、ほななん出来ないちゅうて言うたら、商売は成り立たん。商売するんは、引き出しを自分の中でどんだけ持っとるかで決まるんじゃわ、の?ヤマチュー君」
「うーん、深いですわあ、沢木さんの言葉」
沢木は、ははっと笑いながら、この若者をこれからどこへ連れて行こうと言うのか。沢木がヤマチューを気に入ってる事は、洋司も知っている。彼には、真っ直ぐな芯がある・・そう言う話を以前からしていたのであったが・・。
「着いたど」
車が止った所は、香川県の大野原町田の野と言う山間の盆地だった。




