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由香里と勇次
由香里が帰った後、川滝と松本の2人が、集合場所からすぐ近くの倉庫内に残って話し合っていた。この場所は、川滝が持つ紙加工会社の倉庫で、家業は親戚の者に継がせているので、自由に自分用として使用している。
川滝が言う。
「まさかのう・・わしの長万部号と番になっとるメスが今抱卵しとって、ほんでそれで落ち着かない鳩の様子を由香里ちゃんが当てるとは、思いも寄らん事じゃ・・びっくりしたぞ、わしゃあ・・」
「あの場を川滝さんが、取り繕うてくれたんで、そう大騒ぎにはならなんだけど、鳩の心が分かるんじゃわねえ・・あの娘は・・」
「ほんに・・松本君の言う通り、只者では無いわ・・・由香里ちゃんは。と、なると・・鳩を飼うべくしてここに入会したっちゅう事じゃわのう・・わしもお前と同じ不思議な感覚に、今、居るわい」
「そう言やねえ・・先日20年振りにじゅんたろべえ・・沢木がわしのとこに訪ねて来たんですわ。何の奇遇か、由香里ちゃんの親父と付き合いやったちゅうて、あの娘をよろしゅう頼みます言う事やったんですわ」




