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師匠と共に
「ほなな事、新川社長も同じや。はは、好きなようにやってくれよ。わしは、木工所の足場も出来た事やし、心配りに感謝する。ほれに、犬の世話もさせて貰えるよってにな」
善さんが犬好きとは初耳だったが、都会で犬を飼うと言うのは大変なもの。沢木は、いっそ四国に定住したらと笑った。しかし、沢木には未だ伝わって無いが、善さんは、1年後にHZK木工館長に着任するのだ。こう言う隠し事は、むしろあって良い。しかし、鋭い沢木の事、何かは感ずいているかも知れない。
そんな沢木は、まだまだ動いて行く。
ふいに、訪れたのは放鳩訓練から戻って来たヤマチューの所だった。ヤマチューが出向くなら分かるが、沢木が自分の鳩舎に訪問した事に、非常に彼も驚いていた。
「うわ・・わしんとこへ来てくれるやか思いもよらなんだです」
沢木はにこにこしながら、
「はは、鳩の事と違うんじゃ。ほんでも、順調に育っとる見たいじゃのう。川滝系は丈夫で長持ち。これが原点じゃと言う見本のような血統じゃきん、ヤマチュー君、ちょっと時間ええか?わしとドライブせんかいのう」
「えっ!は、はい」




